豪士山は福島県と山形県の境に位置する栗子山塊のひとつピークである。登山路は山形県東置賜郡高畠町上和田の砂川から4本のルートがあり、標高はさほど無いものの自然が残されたマイナーな山である。登山口には高畠町教育委員会の管理する元宮キャンプ場もある。
梅雨明け末期の集中豪雨が各地で大きな被害をもたらしている。夏合宿の下見も兼ねて豪士山に登ってみることにした。元宮キャンプ場には、豪士山の大きな案内板がある。2万5千分の1地形図には、中の沢、花の沢から登山道が記されている。花の沢の出合に2〜3台程度の駐車スペースがあるので車を駐めて出発準備にかかる。最初は花の沢を渡るのだが、増水がひどく、石は濡れていて、スリップして沢に足をつっこんでしまった。最初から靴の中は水浸しである。最初は雑木林の急坂を登っていく。標高600mあたりから回りはナラの林に変わり、道もいくぶん緩やかになってくる。700mあたりからブナも見られるようになる。山深いしっとりとした静かなところだ。752m地点を過ぎると登山道は尾根の右側をトラバースするようになる。やがて、砂川本沢左俣左沢の源頭に出合う。ここから豪士山まで途中水場はないので補給しておこう。沢から離れて左の斜面をジグザグに高度を上げていく。途中いっぱい花が咲いていた。豪士峠には13時12分到着。登山口から3時間で登ってきたが、途中、ゆっくり時間を過ごしたり写真を撮ったりと、だいぶロスしているので、実際には2時間ちょっとで登ってこれると思う。豪士峠は中の沢への登山道の分岐にもなっている。標柱が立っているが、熊のひっかき傷がすごい。たしかにこの山域に熊は多く、出合わないように充分注意したい。
豪士峠から一旦コルまで下りて豪士山を目指す。緩やかな登りは、いつの間にか私たちを山頂に導いてくれた。三等三角点を持つ豪士山からの眺めは素晴らしい。時折、雨の降るあいにくの天気だったが、それでも栗子山塊の摺上川側や近くの山々が山深さを教えてくれる。5分ほど休んで下山にかかる。
県境稜線を南に向かって進む。882mの「ひかば越え」まで下り、県境稜線から右に折れ、砂川本沢左支沢に入る。最初は踏み跡もしっかりした登山道である。沢まで出ると道形は怪しくなってくる。下降路は沢の中を歩くようになるのだが、先日の大雨で沢は荒れ、水量もあって靴の中は水浸し状態である。スリップしないように慎重に下りていく。心細くなってきたころ、ようやく右岸に登山道が出てきた。あとはハッキリした道を下りていくと本沢出合の「ひかば越え分岐」に着く。本流を渡渉し対岸にある踏み跡を下りていく。14時54分、林道に到着する。ここからは危ない箇所もなく、信濃沢にかかるコンクリート橋を渡り、車を置いてきた花の沢出合の登山口に戻る。(I.I)
|