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No.4347
蔵王・丸山沢
熊野岳 1840.5m二等三角点峰
山行種別 山スキー
ざおう・まるやまさわ 地形図 蔵王山

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山行期間 2010年4月3日(土)
コースタイム 澄川スキー場(8:00,8:16)→後見ゲレンデトップ(8:56)→刈田岳直下(10:14,10:22)→熊野岳(11:14)→丸山沢源頭部(11:30,11:45)→噴気口(12:20)→小休止(12:39,12:54)→濁川渡渉(13:02)→索道跡(13:50)→澄川スキー場(14:50)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
後見ゲレンデを登る 除雪が急ピッチで進む 御釜を右に見てトラバース
地蔵山は見えるが遠くは見えない 熊野岳避難小屋までは雪がついていない 丸山沢源頭のアイスバーンを滑る
眼下に広がるバーン 手前が五色岳、向こうに刈田岳 喉から斜面を見上げる
Kさんがテレマークで沢に滑り込む Kさんのターンは決まっている Kさんに写真を撮ってもらった
噴気口からは蒸気が吹き上げる 濁川へ下る 緊張のひよどり越え

行動記録
天候 晴れのち雪
 Kさんと蔵王の丸山沢へ行くことになった。私としてはスキー技術的にちょっと不安もあったが、丸山沢はいつかは行きたいと思っていたので良い機会を得た。
 丸山沢は熊野岳の東側を源頭として濁川に流れる沢だ。刈田岳からお釜を見ると、お釜の北側の斜面の向こう側がその源頭部になる。アプローチそのものは山形蔵王からの方がずっと容易だが、問題は帰路である。夏道に沿って濁川のひよどり越えを登り返し賽ノ磧に出るか、濁川沿いに峩々温泉まで下るか、かもしか温泉跡から丸山沢の左岸尾根を登り返すか。今回、私たちはひよどり越えを登り返す、スキー場循環ルートにすることにした。
 8時にはスキー場(すみかわスノーパーク)に着いた。ゲレンデトップまでは3本のリフトを乗り継ぐが、リフトの運転開始は9時からなので、待つより歩いて登ることにした。スキー場に登山届けを出し8時16分、歩き始る。ちなみにすみかわスノーパークの営業は明日まで。
 Kさんはテレマーカーなのだが、長い手足も相まってストライドが大きくいいペースで登っていく。このところ続いている寝不足もあって、いまいちピッチの上がらない私は後を着いていくのがやっとだった。それでも快晴の蔵王は素晴らしい景観で、思わず「これだから山はやめられない」などと言ってしまう。
先行してスノーシューで登っていた男女2人パーティーもほどなく抜いてしまう。
 途中でエコーラインを横断するが、除雪が大黒天の上まで進んでいたことに驚く。積雪量が少ないので、除雪の進捗が早いのだろう。今日は刈田岳山頂に登る必要もないので、10時頃に東尾根の途中からトラバースして馬の背方向に抜ける。雪が少なく、ハイマツなどが露出し始めており歩きにくい。風が強くなってきたので、刈田岳直下でジャケットを着て行動食を口に入れる。
 登山道の雪は飛ばされて岩もあちこち出ており、スキーで歩くのは難しいようだ。風も避けたいので、馬の背の稜線より斜面をお釜側に少し下がった位置をトラバースしていく。ずっと同じ角度での長いトラバースは疲れる。先の方を単独行者が歩いているのが見えた。
 クラストした大斜面を一気に登り上げると熊野岳(1,840.5m)だ。地蔵山は見えるが遠くは雲の中で見えない。飯豊や朝日の眺望を期待した熊野岳だが、遠方は既に雲の中でどんよりとしていて見えない。天気予報では昼頃から曇るということだったが、山ということもあり天気の変化が少し早いようだ。
 避難小屋で昼食休憩のつもりだったが、Kさんがこのまま滑り出しの地点まで移動するという。天気の変化が早いので、早めに滑降に移ろうということらしい。
 避難小屋から東に少し下ると、丸山沢源頭の広々としたバーンの上端だ。しかし左手の自然園から名号峰へ延びる尾根は、だいぶ岩が露出している。準備をしている最中にも風が強くなり細かい雪が舞ってきた。ヘルメットを被り、11時45分に滑り出す。
 場所によっては青い氷状になっている部分もあり、これが続くのかと不安になる。幸い斜度が緩いので何とか滑ると徐々に先すぼまりになり、喉のようなところに自然に滑り落ちる。その先は斜度が増しているようで状況がわからない。
 先に着いて待っていたKさんのところに行くと、そこから先が丸山沢の核心部の始まりだった。スキーのエキスパートには何でもなくても、今シーズンから山スキーを始めたばかりの自分にはまともに滑られるとは考えられない急斜面だ。
 Kさんが優雅にテレマークターンで先行するので、覚悟を決めて斜滑降&横滑りを駆使する。クラストしてはいたものの幸いアイスバーンではないが、場所により雪質がまだらに変化し滑りにくい。それにしてもゾクゾクするような高度感がある素晴らしいバーンだ。
 上部の急斜面をなんとか下りとホッとする。明日ここを滑る人がいたら、苦労が偲ばれるなんとも不格好なトレースを目にすることだろう。右下方にロバの耳が見え、そこの稜線から刈田岳方向を見ようとトラバースする。こちら側から見るのは初めてで新鮮な眺めだ。
 また沢の中心に滑り込むと、沢はすり鉢状にすぼまる。これがボウルというものだろうか。先が見えないので喉の部分で止まり、ゆっくり先に進むと急斜面が待っている。さらにその先は次の喉へ続く斜面が見える。
 喉の部分は雪が無ければ滝なのだろうから急なのも当たり前だが、この時期は雪で埋まっているから滑ることが出来る。しかし雪解けが進めばいつ口をパックリと開けるかわからず、細心の注意が必要だ。急斜面をなんとか滑ると、その下の斜面は雪質が良いのか気持ちよくターンが決まる。
 何やら硫化水素臭がしてきたと思いながら喉を通過すると、パッと視界が開け、かもしか温泉跡の上にある噴気口の脇に出た。ここでドキドキした滑降の楽しみも終わりとなる。
 帰路は、噴気口より500mほど下ったところから右に90度転進して濁川へ向かう。雪が降ってきたが、途中で昼食休憩を取りながら濁川側に下りる。水量の少ない沢を難なく渡ると、いよいよ対岸の崖を登るひよどり越えだ。
 覚悟していたがひよどり越えは苦労した。今日は気温が低く雪が堅いので、キックステップが上手くいかない。アイゼンを持ってこなかったのは失敗だった。たった数センチの足がかりに体重を載せ、滑落に気をつけながら慎重に登るしかなかった。ずっとつま先立ちを続けているようなもので疲れる。トップのKさんは大変だ。もう少し後であれば夏道も現れるのであろうが、実際この場に来てみなければ状況はわからない。
 濁川から標高差160mほどを登り上げ、かもしか温泉の荷物搬送用のケーブル跡までは約40分だった。晴れていれば今滑ってきた丸山沢が一望できるはずだが、ガスの中で見えないのが残念だ。
 スキーを履いて賽ノ磧までのほぼ平坦な夏道を歩く。後は出発点に戻るだけだったが、灌木がうるさくて余計な時間を要した。それでも予定より早く、14時50分に駐車場へ到着した。充実感のあるスキー山行だった。帰路はいつものあづまや旅館で温泉に入り、さっぱりしてから帰った。
 丸山沢はバーンの変化に富んで、岩稜の景観が素晴らしい沢だ。残雪期であれば雪崩の心配も少なく、ひよどり越えも登ることが出来る。この頃はパウダー狙いで1月〜2月の厳冬期にも滑る人がいるようだが、リスクを的確に判断できるエキスパートの世界だろう。なぜなら降雪の状況や雪質によっては、雪崩の危険がかなり高い沢と思われるからだ。残雪期以外に安易に入ることは慎むべきだろうと思う。それにしても、また行きたくなる魅力のある沢であることは間違いない。(K.K)

概念図



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