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No4927
吾妻山・家形山
1877m主三角点峰
山行種別 山スキー
あづまやま・いえがたやま 地形図

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山行期間 2014年3月9日(日)
コースタイム 五色温泉(6:13)→コル(6:56)→四郎右ェ門沢(7:57)→東海大緑樹山荘(9:07)→家形山避難小屋(10:24)→家形山(11:12,11:21)→家形山避難小屋(11:26)→東海大緑樹山荘(11:43)→休憩(12:07,12:24)→四郎右ェ門沢(12:43)→コル(13:25)→五色温泉(13:35)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
五色温泉宗川旅館を見ながらゲレンデ跡を登る 切り開きになっているのは夏道沿い ツアー標識(現在青木小屋は無い)
コルより左手に1077mピークを見る 遠く家形山が見えてきた 雪面が眩しい
四郎右ェ門沢を渡る 四郎右ェ門沢を渡る ルートの目印だろうか
かなり古いツアー看板 東海大緑樹山荘(旧青木小屋を基に昭和37年に再建) 今年のTWV(東海大学ワンダーフォーゲル部)の赤布
雪に埋もれた家形山避難小屋 ガンチャン落としのシュプール 少しモナカ状の斜面
家形山の山頂より見下ろす 一気に滑り降りた ニッポンビールの標識
30年ほど前のルート表示板 すっぽり埋もれた緑樹山荘 蟹ヶ沢右俣を渡ったところにある「沼尻−五色温泉」の案内板
林間のトラバース コルへと軽い登り 五色温泉に到着

行動記録
 好天の3月9日、五色温泉からのクラシックルートを辿ることにした。吾妻山はたおやかな稜線が続いていることもあり、古くから多くのスキーツアールートが開かれていた。そのルートの発着点のひとつとなるのが五色温泉である。2012年の時は高湯温泉から五色温泉に繋げたのだが、何とか踏破したもののルートミスなどで内容的には散々であった。原因はもちろん自分の未熟さだが、ルートが不明確で効率的なラインで歩けなかったということにも大きな要因があった。そのためリトライの機会をうかがっていたのだが、Iさんがこの土日に高湯温泉から五色温泉を慶応吾妻小屋泊で辿るので、それに合わせて歩いてみることにした。ただし、自分は日曜日だけなので、五色温泉から家形山をピストンする計画とした。往復することにより、ルート確認がより確実なものになると考えたからだ。
 五色温泉の手前にある駐車スペースは除雪中だった。除雪車に合図して車を止めさせてもらう。今日は夏道沿いではなく、平成10年に閉鎖された五色温泉スキー場のゲレンデ跡から登る。ちなみにこのスキー場は、明治44年に日本初の民間スキー場としてオープンしたという歴史がある。日本列島には寒気が入っているので3月にしては気温が低く、乾いた雪を軽くラッセルで登っていく。ゲレンデ跡上部から右手の尾根に上がり、1077mピークのコルに向かってほぼ水平にトラバースする。コルを越えて高倉山の支尾根南側をトラバースするが、あまり高度を下げないように注意する。復路で往路のトレースを利用する場合の登りを極力減らすために、往路の時からラインを考えて歩く必要があるからだ。それでも地形によりある程度のアップダウンは避けられないが、より効率的なラインというものは存在する。それを考え探しながら歩くのもまた面白い。
 やたらに天気が良く雪面の照り返しが眩しいほどで、林間の木陰に入るとホッとするほどだ。地形図ではそれほど複雑という印象はないが、実際は地形図に表れない細かい起伏や雪のうねりがある。そのため、これから進む先を見通しながら歩かないと無用なアップダウンをしてしまうことにもなる。それでも沢の横断があったりするので、なかなか思い描いたように歩くことはできない。高倉山が右手に大きくなってくると、左手の四郎右ェ門沢を渡り右岸斜面を登り返す。尾根に乗ると、家形山が近く見えるようになってきた。復路を意識してほぼ水平に近いラインで歩いていくと、ダケカンバの幹に黄色のテープが巻いてあり、ルートを示しているように思える。この後も所々で黄色いテープ巻きを見かけた。Iさんによると、福島登高会で30年ほど前にルートの目印にと付けたのは、黄色い板であるという。とすればこのテープは誰が巻いたのだろうか。このテープの他にも、所々に古いツアー標識を見つけることができる。これらは「ニッポンビール」の社名からも50年以上前のものと思われ、自分とほぼ同じ年齢ということになる。その昔は標識を目印にスキーツアーをしていたのであろう。今は残っている標識も少なくなり、とてもあてにして歩くわけにはいかないが、ホーロー引きの標識はノスタルジックな雰囲気満点である。目にする者がいようといなかろうと、この山中でこれからも何十年とルートを示し続けるのだろう。
 左に沢筋(蟹ヶ沢右俣の支沢)が見えてきたので沢に降りないで回り込もうとしたが、どんどんルートから外れていくようだ。結局沢に降りて登り返すことにした。ここは変に回り込まないで突っ切るのが正解らしい。その後も沢を渡りトラバースし、明るい林間を歩いていく。スタートからずっと1人でラッセルを続けているが、深くても15センチくらいで雪もまだそれほど重くなっていないので助かる。東海大緑樹山荘には予定より30分ほど遅れて到着。すっかり雪に埋まっていて屋根が一部見えているだけだ。ここは東海大の山小屋なので、一般登山者の利用はできない。東海大緑樹山荘からはしばらく急登が続く。ルートには東海大学のワンダーフォーゲル部の赤布がべた打ちされていた。急登を登り切って樹林を抜け、もう一頑張りと思っていたところ上の方から声が聞こえた。標高1460m辺りで笛を吹くと笛で返ってくる。間もなくIさんパーティー3人が滑り降りてきた。今朝は少し早めに出発し、家形山に登ってから降りてきたという。自分の目論見では、家形山避難小屋の辺りでスライドできればと考えていたのだが、これでは追いつくのは無理だろう。
 しばらくは緩やかな登りが続く。Iパーティーのトレースがあるので、ひとりラッセルも少し楽になった。家形山避難小屋には予定より1時間近く遅い10時24分に到着。ここも屋根と入口の一部が見えているだけだ。休まず家形山に向かう。ガンチャン落としの斜面にはIパーティーのシュプールが刻まれている。Iパーティーは山頂の少し下から滑ったようだ。それにしてもIパーティーのUさんは今シーズンから山スキーを始めたばかりなのに、もうこんな急斜面を降りてくるのだから驚く。見上げると家形山の山頂直下までオープンバーンが続いている。なんともそそられる斜面ではないか。しかも今日は、斜面の雪もしっかり安定している。以前この斜面を見た時に滑ってみたいとは思ったが、自分が現実に滑ることが出来るとは思わなかった。また、見るからに雪崩れそうな斜面だと思った。しかし、それから数年後の今、絶好のチャンスだと思っている自分がいる。単独だが是非とも滑ってみたい。山は逃げないがチャンスは逃げる。しかし焦ることはない、冷静に判断しよう。ジグを切って山頂に登ると、ドロップポイントから東斜面を見下ろした。滑り出しこそ急だが、全体の斜度は40度未満だろう。雪もチェックしたが大丈夫と判断。意を決してドロップ。ウインドパックの雪が軽くクラストした斜面に、大きなターンを描いていく。雪面と空気を切る音だけが聞こえる。余りの気持ちよさに途中で止まろうという気にもならず、あっという間に五色沼のコルより下まで降りてしまった。斜面を見上げてひとり余韻に浸る。
※家形山の東斜面は過去に雪崩事故が発生しています。滑ろうとする方はくれぐれも注意してください。
 さて、休まずに下山開始だ。ガンチャン落としを滑り家形山避難小屋を通過。トレースを追って飛ばす。この辺りの赤布は慶応吾妻山荘管理人の大柿さんが付けたものらしく、トレースがなくても目印になる。その他にも福島登高会で付けた黄色プレートが、ある程度見つけられる。2年前はこれらの目印を見落とし、ルートミスをしてしまった。緑樹山荘を過ぎると滑る場面はほとんど無くなり、歩きメインとなる。雪は少し重くなってきたが、スキーが回しにくくなるほどではない。Iパーティーは自分の往路のトレースを辿っているところもあり、そうでないところもある。下り目線で見ると、往路より効率的なラインが見えてくる場合があるのだ。そんなときは迷わずラインを変更する。途中で昼食休憩としたが、今日スタートしてから初めてのまともな休憩だ。陽の当たる林間で、ひとり静かに休むのもおつなものである。暖かい日だまりでは春を感じずにはいられない。その後もIパーティーのトレースと重なったり離れたり、蟹ヶ沢右俣の支沢以外は概ね自分のトレースを辿る。標高1000m近くまで下がると滑りが重くなってきたのでワックスを塗る。1077mピークのコルへは微妙に登りなのだが、シールを貼らずに何とかなるレベルだ。コルからUさんに電話をすると五色温泉に着いたばかりという。10分で行くと伝えてスキーを走らせる。往路と同じく五色スキー場跡を滑ると、Iパーティーの待つ五色温泉に到着。今日のルートを振り返ると、滑りはせいぜい2割で、ほとんどは歩きという感じであった。しかし、変化のある自然の山中を歩き通す充実感はたっぷりだ。由緒ある五色温泉で汗を流し、さっぱりすると帰路についた。
 今回は2年前のリトライという位置づけだが、五色温泉からのピストンとしてルート確認の確実性をアップさせた。天候にも助けられ、その目的はほぼ達成できたといえる。このまま人知れず時間の中に埋もれさせてしまうのは、あまりにもったいないルートに感じた。ルートの目印がもう少しあって、歩く人がもう少しいれば次世代にも繋がっていくような気がするのだが…(K.Ku)
※Iパーティーの記録はこちら

概念図

トラック 登り=赤 下り=青

より大きな地図で 2014.03.09_五色温泉→家形山ピストン を表示


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