Fukushima toukoukai Home page
No4938
蔵王・屏風岳
1825m標高点
山行種別 山スキー
ざおう・びょうぶだけ 地形図

トップ山スキー>蔵王・屏風岳

山行期間 2014年4月9日(水)
コースタイム 東北大学蔵王観測所(6:45)→林道から斜面へ(7:19)→1166m標高点上(8:14)→標高1580m(9:25,9:40)→稜線(10:11)→屏風岳(10:50,11:10)→秋山沢右俣(11:23)→1166m標高点付近(11:37)→林道合流(11:58)→東北大学蔵王観測所(12:05)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
快晴で屏風岳もクッキリと見える なんとか雪が残っている東北大学蔵王観測所前 アンテナの辺りでは雪が切れている
屏風岳が見えてきた 山頂部がダイレクトに見えてくる 屏風岳東壁の全体
山頂部直下のアップ 今日のストックはグリベルのコンドル この斜面を稜線へと登る
稜線より刈田岳や熊野岳を望む 稜線を南へ屏風岳山頂へ向かう 秋山沢右俣源頭部の素晴らしい斜面
雪庇が大きく発達している 秋山沢本流源頭部の斜面 露岩のある屏風岳山頂小尾根
屏風岳山頂 ドロップポイント 中ほどまで滑り見上げる
壁の基部より見上げる 山頂直下の拡大 屏風の壁が見送ってくれていた

行動記録
 先日の屏風岳が天候によるものとはいえ中退となったことに、強く心残りがあった。週間天気予報によると、今週の平日はまずまずの天気のようである。ただし、山では晴れか雨かだけでなく風の強さも重要だ。晴れるとえてして強風となり、稜線に立つことすら困難になる。そのため、高所における風の強さも考えておく必要がある。そうしたところ、どうも水曜日が晴れで風も穏やかなようである。そうなったら時間をこじ開けるしかない。とは言っても平日だ。すべてがスムーズに行ってギリギリの時間だけを作り、単独で屏風岳に向かうことにした。自分はこの日を逃したら、今シーズンはもう滑ることは出来ないだろう。山は逃げないがチャンスは逃げていく。
 東北大学観測所からのスタートも、この5日間で3度目となる。さらに雪は後退しているので、車から少し歩いてからスキーに乗る。観測アンテナの辺りでいったん雪が切れたが、林道からは問題なく繋がっている。6日より確実に気温が高く、いくらも歩かないうちに半袖Tシャツ1枚になり、額には汗止めの捻り鉢巻きをする。他には誰も来ようはずのない林の中を、今日はひとり黙々と登っていく。単独行で今日のような斜面に挑む時は、パーティーでの山行とはちょっと違う心境になる。不安と期待がない交ぜになった何とも言いようのない気持ちだ。あえて簡単に言えば、この歳になってもドキドキでありワクワクなのだ。
 やがて真っ白な屏風岳の東壁が見えてくる。その迫力ある堂々とした姿を見ていると、ちょっと息苦しささえ感じてくる。向こうはこちらのことなど意にも介していないが、こちらは意識しまくっているような関係と言えば分かり易いだろうか。目線を外してもその威圧感が薄れることはない。スタートしてから3時間弱で後烏帽子岳との鞍部に到着。単独でもありパーティーの時より少し早い。さて、ここから急斜面を稜線へと登らなければならない。この斜面を登るために、今日はスキーアイゼンとアイゼンを持ち、ストックはピック付きにしている。照りつける太陽と気温のせいで、雪面はかなり緩んできている。スキーアイゼンを着けてシール登高することにした。斜面は固いところと新雪の部分がまだらになっていて、ちょっと登りづらいが30分ほどで稜線に到達。おそらくアイゼンでツボ足の方が登高タイムは早かっただろう。
 稜線に出ても風はほとんど無い。なんたる好条件なのだろう。遠く月山、朝日、飯豊などを望める。稜線を南へ屏風岳の山頂を目指す。まだこの辺りの斜面は、山頂直下に比べれば斜度はいくぶん緩い。思わずドロップしたくなるオープンバーンが眼下に広がっている。しかもその斜面は、面ツルのグッドコンディションに見える。前方には稜線直下の切れ落ちた小尾根が見えている。上部の斜度は45度を超えるだろう。40分ほどの稜線漫歩で山頂に到着。さっそくドロップポイントを探る。屏風岳稜線の多くは吹き付ける西風で雪庇が発達しているが、幸い山頂部の雪庇の張り出しは小さい。ギリギリまで寄って斜面をのぞき込むと、最高点から今まさに落下を始めようとしているジェットコースターに乗っているようだ。下に広がるバーンを観察した結果、今日は真下に滑り降り、途中から左に小尾根を越して秋山沢源頭部の広大なバーンに滑り込むことにした。ただし、山頂直下の斜面最上部の斜度は50度を超えている上、表面の緩んだ雪がズレ落ちそうなのが心配なところ。すぐ右手の斜面では、スラフ(点発生雪崩)が斜面基部まで流れ落ちた跡が見える。不用意に飛び込むと斜面は自分の体を支えてはくれないだろう。
 雪に刺したピックを頼りに体を斜面にそろそろと落とした。滑り出して最初のジャンプターンをした瞬間、斜面の雪が流れて体が落ちる。踏みとどまり2度目のターンをしたが、自分が誘発したスラフが上から降り注ぎ、たまらずスラフと一緒にまた落とされる。斜面にクラックの段差があり、スキーを引っ掛けてやっと止めた。見ると右手ではスラフがスラフを呼び、徐々に大きくなって流れ下っていくのが見える。やれやれ案の定である。始めから一直線にトラバースして、スラフのラインから逃げるべきだった。気持ちを落ち着けて左にトラバースして小尾根を越す。秋山沢源頭部の広いバーンは、湿った新雪とシャーベットのミックスで滑りやすい雪ではなかった。しかし、今日は自分だけのマイゲレンデなのだ。見てくれはともかく好きなようにシュプールを刻む。壁の基部まで滑り降りると、陽が当たり眩しい斜面を振り返り見上げる。また今度滑ることが出来るとしたら、もう少しましなシュプールを描いてみたいものだ。時間も無いので下りを急ぐ。1度も休むことなく東北大学観測所に到着。壁の基部からは約40分だった。
 昨年に引き続き、今回もギリギリのタイミングでのトライとなってしまった。出来れば3月中旬までにと思うのだが、その頃はまだ天候が安定しないことが多い。ただし、その時期に山頂直下のラインが選べるかどうかは、その時の状況次第だ。今年は雪庇も大きく発達しており、雪崩にも注意しなければならない。諸条件を見極め総合的に判断することが必要になる。雪庇を避けてドロップできるラインが何本か取れるので、状況に応じて選ぶこととなるだろう。トライしてみようとする方は天候や雪の条件が良いことに加え、自分自身の体力気力が充実している時を選んで欲しい。安易なトライは禁物である。屏風岳へのアプローチが比較的容易なのは、えぼしスキー場の営業期間にリフトを利用することで、状況にもよるが約3時間で山頂に至る。白石スキー場(リフト利用無し)から南屏風岳経由か東北大学蔵王観測所からなら、どちらも山頂まで4時間程度となる。すみかわスキー場からという手もあり、4時間程度かと思うがいずれトライしてみたい。これらのうち、車のデポが必要無いのは、東北大学蔵王観測所ピストンと白石スキー場〜水引入道のコル〜白石スキー場である。なお、東北大学蔵王観測所へはハートランド牧場内の道路を通ることとなるので、配慮して通行したい。(K.Ku)

概念図

トラック 登り=赤 下り=青


今回の滑降ライン



より大きな地図で 2014.04.09_蔵王・屏風岳 を表示

 トップ



Copyright(C) 2014 福島登高会 All Rights Reserved.