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No4935
月山・肘折コースピストン
1990.0m一等三角点峰
山行種別 山スキー
がっさん・ひじおりこーすぴすとん 地形図

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山行期間 2014年4月19日(土)
コースタイム 肘折・朝日台(3:00)→大森山(4:48)→ネコマタ沢二俣(5:38)→ネコマタ沢源頭(6:07)→小岳(7:20,7:37)→立谷沢(8:37)→千本桜の下(10:02,10:15)→月山山頂(11:55,12:05)→千本桜(12:16)→立谷沢(12:34,12:45)→念仏ヶ原避難小屋付近(13:47)→小岳(14:50,14:55)→ネコマタ沢二俣(15:37)→大森山(16:37,16:47)→肘折・朝日台(17:30)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
大森山頂にて午前4時48分 北斜面のトラバース途中にある細長い池 大森山から朝日が昇る
ネコマタ沢 ネコマタ沢右岸尾根を登る 978mピーク
小岳の向こうに月山が見えてきた 葉山を眺めながら休憩 月山がクリアーに見えてきた
念仏ヶ原 立谷沢へ下降する 沢の橋は埋まっていた
急斜面を尾根へと登り返す 尾根から見る念仏ヶ原 千本桜の急斜面
月山の山頂にガスがかかってきた 会の2人とスライド 2人を見送る
山頂は賑わっていた 千本桜からの眺め 千本桜の急斜面を滑る
立谷沢へ標高差400mの滑降 沢床を下降 右の沢筋を登り返す
念仏ヶ原からの月山は神々しく光っていた 望遠で見えた千本桜のあらたなシュプール 念仏ヶ原避難小屋は見つからず
小岳へとトラバースする 小岳の先にあった国立公園表示板 赤沢川の沢筋を滑る
ネコマタ沢の源頭斜面 ネコマタ沢の二俣へと滑降 大森山南斜面を登り返す
大森山を滑り降りる 太陽を背中に林道を歩く 17時30分到着

行動記録
 月山のスキーコースの中でも肘折コースは最長のルートである。ワンデイでのコースとしてなら、国内でも最長クラスだろう。月山スキー場リフト上駅から肘折まで踏破した昨年の記録では21.2kmになっている。さて今回はこのルートをピストンしようという計画だ。肘折から月山山頂の往復なので、リフト上駅から月山の山頂までの分は無いのだが、それでも片道18kmとなり合計36kmにもなる。それを何人かやってる方がいてその体力に感嘆しつつ、できれば自分もと年齢も顧みず憧れにも似た気持ちを抱いていた。自分の昨年の記録には「ワンデイでの肘折〜月山ピストンのチャレンジも捨てきれない」と記している。また別な記録には「自分を追い込まないと見えてこない部分がある」と記している。胸に熱い想いを静かに抱きながらも、年齢のこともあり山行を積み重ねて慎重に自分の力量を計ってきたつもりだ。その結果、今シーズンにトライしてみようと思うに至った。年々体力が低下していく中高年にとって、はたして1年後は出来るかどうかわからない。やるのなら先送りはせずに今年だと思ったのだ。さて55歳のチャレンジやいかに…
 午前2時30分に目覚ましが鳴る頃には既に起きていた。車の中で支度をして外に出る。月は見えないが空はぼんやりと明るい。ソロでのトライの時はいつも独特な気持ちになる。高ぶる気持ちはない。静かに自分の中の期待と不安に対峙するだけだ。スタート地点は肘折温泉街より1キロほど離れた標高350mの朝日台。午前3時ちょうどにスタートする。前方にこれから向かう山の輪郭がわかる程度には見える。しかし、足下は暗いのでヘッデンを点けて歩きだす。肘折コースは昨年1回歩いただけだが、この辺りの地形は何となく覚えているので迷うこともない。平坦な朝日台を林道沿いであろう南東に進むと、山が近づき左手が急斜面になってくる。ここを林道は大きく曲がりながら登っていくのだが、そんな道形には関係なくジグを切って急斜面を登っていく。やがて小尾根に乗り上手くショートカットし、我ながら効率良く登れていると思っていた。しかし、ふと気づいてGPSを見ると登りすぎてしまっていた。今日は行動時間に余裕が無いというのに、初っぱなからのロスに少々がっくりする。仕方なく方向修正して林道沿いに戻る。4時頃になると周囲が見えるようになったのでヘッデンを消す。やがて林道が大きく左にカーブするがここが夏道の登山口で、林道を離れて東へと沢沿いに登っていく。やがて大森山の急斜面に取り付く。雪面は固いがエッジは効くので、ジグを切りながら登ることができる。スキーアイゼンがあればより楽に登れるだろう。大森山の山頂到着は4時48分。予定より少し遅れているが、最初のロスもありこんなものだろう。周囲も明るくなり山頂からは遠くも見えるようになってきた。休まずすぐ南斜面の下降に移る。せっかく稼いだ標高だが、大森山からはコルまでいったん120mほど下げなければならない。スキーで横滑りしながら下降したが、樹林が濃いので状況によってはツボ足もありだろう。ただし、斜面の雪が固い時は滑落に注意したい。土が見えているコルでスキーを外し、尾根の向こうに乗っ越すと直ぐまたスキーに乗る。エネルギー補充も忘れてはならない。エネルギー消費が激しい今日は1.5〜2時間置きに食べることにしている。ここからしばらくは北斜面のトラバースが続く。途中右下に細長い池があり、やがて尾根に乗ると朝日が背中から差してくる。振り返ると大森山の肩から朝日が上がってきた。尾根から南側のネコマタ沢にスキーのまま下降するが、クラックもある急斜面なので注意したい。降り立ったところはネコマタ沢の二俣の少し下だった。ネコマタ沢の左俣に入るが沢床は復路で滑るつもりなので、その右岸尾根を登ることにする。朝日が当たってきたとはいえまだ雪は緩んでいない。急勾配の登りにスキーアイゼンが欲しくなったが、シールで登れないほどでもない。ピークに達する手前で南側のコルに進路を変える。
 978mピークを踏んで赤沢川の支沢へ下りると再び尾根筋を辿る。ここは沢から登ってもかまわないのだが、あえて往路と復路は違うルートを歩いてみたい。登り上げて平坦な尾根になると小岳が見えてきた。小さなコルに下って再び登ると小岳の東斜面をトラバースする。山頂直下で休憩にして時計を見ると7時20分。予定より20分遅れているが、ここで今日スタートしてから初めてまとまった休憩を取る。眩しい朝日を浴びながら正面に葉山を眺めての朝食はすがすがしい…と言いたいが遅れているので何となく気ぜわしい。小岳の山頂に立てば月山が見えるはずだがそんな余裕もない。次の1,199mピークも東をトラバースし、その次の小ピークで西に進路を変えると念仏ヶ原が見えてくる。あえて念仏ヶ原には降りず、その南側の尾根筋を歩いていく。尾根を歩きながら念仏ヶ原避難小屋の屋根を探したが見つけられなかった。まだ雪の下なのだろうか。
 ずっと月山を前方に眺めながら、やっと念仏ヶ原の西端まで来ると立谷沢に下降する。せっかく稼いだ標高だが、またここで140mも下げてしまうのがもったいない。立谷沢には8時37分と計画より37分遅れで到着。挽回が難しいどころか、徐々に遅れが拡大しているので先行き懸念される。立谷沢の橋の辺りは、豊富な雪で十分埋まっていて渡渉に問題は無い。ここで水を補給しようと思っていると当てが外れる。上の方で沢が口を開けている箇所があるが、水を取ろうとすると落ちる可能性もあり要注意だ。対岸に移り今度は尾根まで200mの急登になる。立谷沢までは雪が緩んでなかったのだが、斜面に取り付くと雪が腐り始めている。エッジが効くので急斜面でも落ちる心配はあまり無いが、シールは水を吸って重いし雪も重いしで疲れる。高くなってきた太陽にあぶられ汗が滴り落ちる。ジグを切り何度か休みながらようやく尾根に登り上げた。緩やかな尾根を登っていくとますます疲労を感じる。既に16km以上歩いていることもあり、先ほどの急登がかなり足にこたえたようだ。しかし山頂まではまだ500m以上の標高差がある。千本桜の急斜面の下まで来たが、このまま登る力もなくなり1本取ることにした。パンを食べ水を飲む。残り少なくなったボトルには雪を掘ってザラメを詰めた。千本桜へは胸を突くような急登で、途中からシールでは限界になりツボ足で登った。
 千本桜の上に出ると前方には月山の広大な東斜面が広がる。人工物も無ければ誰ひとり見あたらないうえ、あまりにも白一色のなだらかな斜面なので距離感がまったく掴めない。残っている体力と相談しながらゆっくり登ることにする。前方から2人のスキーヤーが滑り降りてきたので手を振る。同じ会のIさんSさんの2人で、今日は肘折コースを滑りに来ていたのだ。山頂にタッチしたら追いかけることを話して10時42分に見送る。さらに20分ほど歩くと男女の4人パーティーとスライド。彼らも肘折コースなのだという。それにしても山頂がなかなか近づかず遠く感じる。体力を消耗してスピードダウンしたことと、見える景色が変わらないことが余計にそう感じさせるのだろう。それでも足を動かしていればいつしか近づいてゆく。山頂部にかかるガスに突入してしばらくすると人のシルエットが見えてきた。11時55分ようやく山頂に到着。ガスで眺めはないが風もなく穏やかで、多くの登山者で賑わっている。山頂ではシールを外し直ぐに滑り降りるつもりでいたが、なぜか2パーティーのシャッターなど押してあげることになる。
 山頂はガスっているので南から回り込むように高度を下げる。ガスが薄れ視界が出てくると、こっちのものとばかりに飛ばす。これだけの大斜面に自分ひとりだけとはあまりに贅沢すぎる。少し固い雪が疲れた足にこたえるが、千本桜の近くまで来るとザラメになり急に滑りやすくなってくる。千本桜からは立谷沢にダイレクトに滑り込む斜面に飛び込む。登ってくる時に狙いを定めていた斜面だ。ノントレースのまっさらな斜面に大きくシュプールを描く。こんな斜面は小さくターンするよりもスピードに乗せた大きなターンが楽しい。立谷沢まで標高差400m以上の滑降もあっという間だ。まったくもって爽快であり素晴らしい。立谷沢の沢床を流して渡渉点まで来ると、また念仏ヶ原への登り返しとなる。シールを貼ると先行する6人のトレースを追いかける。この登りが辛かった。疲れ切った足では何度も休みながら登るしかない。やっと登った念仏ヶ原を、トレースを追ってほぼ夏道沿いに歩く。念仏ヶ原の雪面は平坦で長く、その先は小岳までアップダウンがあるのでシールは貼ったままにした。念仏ヶ原避難小屋は結局見つけられなかった。やはりまだ雪の下なのだろう。
 疲れてはいるが足はとりあえず動く。ちょっとした登りでも辛いが、動く限り少しでも進めば残距離は減っていくのが励みだ。念仏ヶ原から何度かのアップダウンを経て小岳に到着すると、シールを剥がして赤沢川の沢筋へと滑り込む。先行する6人のトレースにシュプールを絡ませ飛ばす。登りでかかった時間は何だったのだろうと思うほど速い。スキーの機動力が最大限に生かせる場面だ。978mピークはツボ足で登り返し、トラバース気味に左から巻きコルに出た。すると前方のネコマタ沢右岸尾根に人が見えた。やっと4人パーティーに追いついたようだ。沢を観察しているようなので声をかけながら近づいたが、彼らは気付かず右岸尾根を滑っていった。ネコマタ沢の上部は雪が崩れクラックが入っている。だからといって滑らないのはもったいない。よく見ればラインはあるものだ。沢にドロップすると上部のクラックを1本飛ぶ。それから下はそれほど難しくない。たちまち二俣まで滑り降りた。ここからは左岸尾根に登り返す。スキーを肩に担ぎツボ足で登っていると、下から4人パーティーが声をかけてきた。彼らが尾根を降りているうちに追い越してしまったようだ。尾根に乗るとほぼ往路のとおり北斜面をトラバースする。
 やがて大森山の基部に着くと、急斜面を登っている2人が見えた。我が会の合計130歳コンビだ。休まずに自分もスキーをザックに付けツボ足で追いかける。急登のキックステップはキツイが、これが最後の登りと自分を励まし頑張る。大森山の山頂でひと息ついている2人にやっと追いついた。ここまで来ればひと安心であるが、肘折温泉で風呂に入りたいこともあり長居はしない。大森山の急斜面滑降を楽しむと勢い余って尾根を外しそうになり、あわててトラバースで戻る。夏道のある沢筋を登山口まで滑り降りて林道に合わせる。しばらく林道を辿ってから急斜面をショートカットで下降する。朝日台の平坦地をひと滑りすると午後5時30分ゴール。帰りは肘折いでゆ館でゆっくりと汗を流し疲れを癒した。
 さて、肘折−月山のピストンは無事成功したが、さすがに36kmという距離は長かった。登り返しの多いコースということを反映し、累積標高差は図上計測で2,800m以上と予想してはいたが、実際はGPSの記録間隔を10m(細かいアップダウンをカットして記録するため)にしていたにもかかわらず3,390mにもなった。疲れるわけである。距離及び累積標高差とも、自分のワンデイの山行としては過去最高となった。今回使ったスキーは160cmの短めの板だが、ビンディングは現代としては重い部類のディアミールで、特に軽量化やスピードアップの工夫をしていない。山スキーは足に重しを付けて歩いているようなものなので、軽量化すればもう少し楽にはなりそうだ。今回は復路の計画に余裕があったことと休憩をあまり取らなかったことで、往路で遅れたにもかかわらず予定より30分早く到着することができた。こんな山行では急がず休まずコンスタントに、いかに長時間歩けるかがキーポイントになる。晴れで風もなく条件が良かったことも味方してくれた。しかし、最大の成功要因は自分の「やり切るという意志」だったように思う。計画中も実行中も常に懸念や不安はあったが、出来ないとは思わなかった。そのことが幸いしたように思える。誰と競うのでもなく自分自身の可能性にチャレンジする…そんなことをこれからもトライし続けたいと思う。(K.Ku)

概念図

国土地理院地図(電子国土web)で見る
トラック 登り=赤 下り=青

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