今年はGW後半の山スキーは5月4日だけとなった。鳥海山の湯ノ台に向かうことにしたが、普通に宮様コースというのではちょっと面白くない。時期的に少し遅い感じはしたが、以前から気になっていた鶴間池を経由してビア沢を登るルートとした。相棒は12月の後生掛温泉以来のT尾さんだが、スキーも山もなんと4か月ぶりとのこと。自宅のリフォームでどうのこのうと言っていたが、彼女なら4か月のブランクがあっても大丈夫だろう。
鳥海高原ラインを登っていくと、雲ひとつない青空をバックにした鳥海山がくっきりと見えてくる。GWとあって第1カーブの手前には既に20台近い車が停めてあった。今日は会の若手メンバーのパーティーも来ていて車列の前方にいる。こちらも準備をしてスタート。車列の前まで歩いていくと、スキーに乗ってちょっと強引に斜面に取り付く。雪を拾って道路を適当にショートカットしながら登っていく。小屋が見えてきたので何だろうと思ったが、この小屋が山雪荘というのは後で知った。空身のオジサンがいて話したが、朝酒を飲んでいて陽気になっている。小屋の所有者みたいなことを言うが本当はどうなのか。オジサンの勧めもあり目の前の尾根に取り付いたが、結果的にはこれが失敗。当初予定どおりにしていれば良かったと歩きながら思った次第。
沢を2つも越えて道路を横断すると、その先で地形はすとんと落ち込み眼下には鶴間池が見えた。左手には見上げるように鳥海山南面のダイナミックな眺め。向こう側に見える南物見尾根を登るには、いったん鶴間池まで下降して登り返すことになる。しかし、崖状でとてもじゃないが降りることができないので、降下点を探しながら崖の肩を南へ下ると、何とか下れそうな斜面になった。先に下降すると後ろでは「こんなとこ降りるの?無理」とか騒いでいる。普通の人ならそうですかとも思うが、T尾さんは心配ないので放っておくとやがて降りてきた。鶴間池は静かな佇まいでひっそりしている。ゆっくりしたいところだが先は長いので歩みを進める。
鹿俣沢の左俣(マタフリ沢)も右俣(太右エ門沢)も下部はかなり口を開けていて、スノーブリッジを探して渡渉した。もう少し遅ければ渡るのはかなり困難になっただろう。南物見の尾根の肩で5mほど雪が切れスキーを担ぐ。それ以外はスキーで歩くことができたので上出来なのかもしれない。尾根に乗ってひと息ついた後は長い登りが待っていた。バテないようにゆっくりエコモードでひたすら登り続ける。抜けるような青空には優雅にトンビが舞っていてちょっと羨ましい。GWは鳥海山のスキーハイシーズンであり、メジャールートはどこも賑わっているはず。なのに見える範囲の斜面には2人だけ。何て贅沢なんだろうと思う。やがてヤブを挟んだ左手の斜面には、点々と大勢登っているのが見えてきた。湯ノ台から宮様ルートなどで登ってきた人たちだ。さらに高度を稼いでビヤ沢上流の大股雪渓に入る。上を見ると稜線から単独のスキーヤーが滑り降りてきた。おそらく湯ノ台ルートで登り、稜線を大股雪渓上部まで移動して滑ったのだろう。何とも気持ちよさそうだが、こちらはまだ急登にあえいでいる最中だ。途中で眺めを楽しみながら昼食にする。行者岳を目指すと斜度が増して片斜面気味ということもあり、シール登高が苦しくなってきた。右手に大きく舵を切り登っていくと、七高山にだいぶ近づいたところで稜線に到達した。標高は西に見える行者岳より50mほど高い。
稜線は風があるので長居はせずに滑降することにした。復路は鶴間池周辺が登り返しもあり厄介なので、標高1700m辺りからトラバースして1本西側の雪渓に移ることにした。大斜面の滑降は縦溝もなくフラットなザラメ雪で快適のひとこと。表現力がないので上手く伝えることができないのが残念。標高差1300mを一気に滑ることも斜面的には可能と思えるが、そこまで足が持たない。気持ちよく滑りすぎてトラバース地点より下ってしまい、ツボ足で登り返したがT尾さんにはブーブー言われてしまった。湯ノ台ルートに合わせるとメインルートだけにスキーヤーや登山者が多い。滝ノ小屋を右下に見ると宮様コースには向かわずに荒木川沿いに下降する。こちらの方が面白いのだが滝や急斜面には注意したい。山雪荘前で道路に出るとショートカットしながら駐車地点まで戻った。
今回のルートは鶴間池周辺の状況を考えると、もう少し早い時期の方が良いだろう。しかし、その分鳥海高原ラインはもっと下からの歩きになるのは仕方がない。年にもよるが4月中旬から下旬が適期だろう。大股雪渓を登っての稜線タッチに滑降と、鶴間池周辺の探訪は切り離して考えた方が計画の自由度は増す。あるいは、鶴間池の畔にある小屋泊りで計画するのも楽しそうである。(K.Ku)