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Fukushimatoukoukai HomePage
No.3694
吾妻山・県境尾根縦走
山行種別 山スキー
あづまやま・けんきょうおねじゅうそう 地形図 吾妻山、天元台、板谷、土湯温泉


■山行期間 2005年3月19日〜20日
■コースタイム 3月19日 福島駅(7:09)=米沢駅(7:57,8:05)=湯元ロープウェー駅(8:51:9:05)→天元台スキー場(9:15)→リフト終点から登高開始(10:55)→人形石(11:50)→中大巓と藤十郎とのコル(12:25)→東大巓(14:00)→兜山東斜面(14:50)雪洞泊
3月20日 兜山(6:21)→昭元山と烏帽子山との鞍部(7:00)→烏帽子山とニセ烏帽子山との鞍部(7:30)→兵子と家形山との間の尾根(8:35)→家形山(9:20)→五色沼(9:35)→慶応山荘分岐(10:50)→吾妻スキー場上部(11:30)→吾妻ロッジ(11:50)=福島
■写真
湯元駅からロープエィに乗車する 雪洞での快適な生活 兜山から日の出を見る
兜山から昭元、烏帽子を望む 雪洞の入り口のツェルト 雪洞を後にする
烏帽子を正面にし右側を捲く 烏帽子を振り返る ニセ烏帽子から兵子を望む
ようやく家形山山頂に到着する 家形山から五色沼、一切経を見
大根森の下りは日も高くなり雪
が重くなってくる
大根森を滑り終えると慶応山荘
の分岐も近い
あづまスキー場までくると山行も
まもなく終わりに近づく
あづまスキー場を振り返る

■行動記録
3月19日 天候 曇り・地吹雪
 1月の宮城蔵王に続き今シーズン2度目の会山行による合宿訓練。前回はテント泊でシール登高、雪質観察、生活術等々冬山の基本知識の習得が目的だったが、今回は雪洞泊での縦走となる。雪の洞穴は快適だと耳にするので、まだ体験したことのない新人たちはとても楽しみにしている。予報によると天気は上向きで、少なくとも20日は好天に恵まれることが確実そうだ。そのため、当初は2泊3日の予定だったが、初日にある程度突っ込んで1泊で下山する計画に変更された。
 福島から奥羽線の始発で米沢に向かう。福島駅から乗る者と、車を置いておける笹木野駅から乗り込む者と電車内で合流する。危うく遅れそうになったメンバーもいたが、予定通りに9名が揃った。米沢駅からはバスに乗り継いでロープウェーの湯元駅へ。
 山間部に入ると道路脇の雪が2m近くで、やはり今年は例年より多いとのことだ。天元台スキー場までは順調に着いたが、前日に30cm以上の積雪があり、除雪のために上部のリフトがなかなか動き出さず足止めを食う。そのせいもあって3本目のリフト乗り場では合計30名くらいの山スキーヤーが並んだ。さすがに昔からのツアーコースとあって、天元台からの入山者は多いようだ。
 山の上はガスがかかっている。気温は氷点下10℃を下回り、風が吹くと冷気に刺されるようだ。リフト始動待ちは凍えたが、余裕を持たせた計画にしてあったので時間的には問題なく登高開始。
 まずは人形石を目指す。中大巓の北斜面を少しだけ高度を上げながらトラバースする。傾斜がありぼこぼこと筋が入っているため進みづらい。徐々にガスで視界が利かなくなる。白濁した稜線上、おぼろに大岩が浮かび上がった。
 人形石から東大巓へはワンデリングしやすい地形なので、停滞や撤退を判断するポイントになる。いよいよホワイトアウトがひどくなったが、リーダーらが素早く判断し、天気は間違いなく回復傾向なので多少時間がかかることになっても突っ込むことにする。下る斜面の起伏が見えず、船酔いのような気分をもよおす。どこを向いても真っ白で北極か南極か、はたまた幽界のほとりにでも迷い込んだような心地がしてくる。はっきり目印となるものがないのっぺりとした斜面のため、コンパスで慎重に進むが現在地と進路に確信がもてない。傾斜が緩くなったところで落ち着いてよくよく眼を凝らすと、白いカーテンの間隙を縫って微かに藤十郎の姿が見えた。
 藤十郎を通過するとガスが少し薄くなってきた。大雪原といった感じの平坦な尾根を、方向を決め高いほう目指して進んでいくといつの間にか東大巓の頂上に辿り着いた。そこから昭元山との間にある兜山に進み、その南斜面の樹林帯を突っ切ると、東側の雪庇が発達した斜面に出る。ここで今日の行動は終了し、場所を選んで雪洞掘りに取りかかる。
 当然ながら1m、2mと掘り進むと雪は締まって硬くなり、9人が寝られる雪洞をつくるとなるとかなりの重労働だ。「ラッセルより疲れる」などとぼやきながら雪と格闘することたっぷり2時間で8畳くらいの雪洞が完成した。2ヶ所の入り口にツェルトを張り、床に銀マットを敷き、壁に蝋燭をともすと一晩しか泊まらないのはもったいないような快適空間になった。
 明日の鋭気を養うため乾杯し、夕飯を腹いっぱい食べる。雪洞を掘り始めて間もなくガスが消えて空は晴れ上がっていたが、夕食後に外へ出てみると満天の星空と福島市の夜景が美しい。冷気の中でしばし眺め入ると、人里から隔絶した冬山で一夜を過ごしている感動と街の灯りが思いのほか近い驚きとを同時に感じ、不思議な気持ちになる。2日目はそれなりに移動距離がある。初心者3名を含む大所帯で行動は速くないので、夜更かしせず眠りに就く。

3月20日 天候 晴れ
 東の空にオレンジ色が差し始めた朝4時半に気持ちよく目覚める。雪洞内は前回合宿のテントよりも広く暖かかったが、T先生のようにシュラフが薄くて少し寒かった人もいたようだ。朝食を摂り、身支度を整える。雪洞は東を向いていたので、雲ひとつない空に鮮やかな朝日が昇るのを拝むことができた。
 ほぼ予定通りに宿営地を発つ。昨日のホワイトアウトが嘘のように空は晴れわたり、風は弱い。放射冷却で冷え込んでいるため雪はまだパウダー状でキラキラと輝いている。北斜面を巻いて昭元山と烏帽子山との鞍部まで歩幅の広いTさんがすいすいと軽快にラッセルを踏む。樹木がまばらになると四方八方に大パノラマが広がる。とりわけ北に眼を向けると、朝日連峰、月山、蔵王山、そして月山の右には鳥海山の端正な山容までが一望できた。それら白い峰々の秀麗な姿を見せつけられると、いやおうなく胸が躍り、山への意欲が湧いてくるのを感じる。
 ほとんどピークは踏まずに巻きながら、烏帽子山、ニセ烏帽子山、兵子、家形山と県境尾根を辿る。視界良好で大きく進路を間違える恐れもないので、初心者にも先頭を歩く練習をさせながら歩を進めた。無駄に高度を上下させずに最短のルートを探すよう言われても、実際に先頭に立ってみると簡単にはいかないものだと痛感するMだった。
 景色を存分に味わいながら順調に行動し、計画よりもだいぶ早く家形山を登りきった。五色沼が足下にあり、一切経山に手が届きそうに感じるところまで来ると福島側まで吾妻山を縦走してきたことを実感する。五色沼へガリガリの斜面を慎重に下り、スキーを担いで大根森へ伸びる尾根まで歩く。シールを外して滑降に入る。この頃になると気温もだいぶ上昇したため鈍重な雪質になっていて、スキーを回しづらい。
 滑り出して早々にMがビンディングをおかしくしてしまい、涙のわかん歩行になるかと思ったが、IさんとMさんが冷静に修復してくれたので事なきを得た。重たい雪に足をとられるうえ、泊まり装備を担いで歩いてきたので太腿の踏ん張りがきかずに転倒し、雪まみれになった者も多かったが、それぞれ楽しく滑り降りる。
 連休で快晴のためすれ違うスキーヤーも多く、トレースがしっかり踏み固められていたので、傾斜がほとんどなくなってからも比較的スムーズに進むことができた。「終わっちゃうのか、もう少し山にいたいな」と新人のKさんがしみじみ言っていたように名残惜しさを感じつつも、スキー場を滑り降り、18日夜にデポしておいた車に乗り込んで雪山をあとにした。(J.M)

■概念図


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