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No.4654
熊野岳 1840.5m二等三角点峰
山行種別 無雪期一般
くまのだけ 地形図

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山行期間 2012年6月26日(火)
コースタイム 賽ノ磧駐車場(6:54)→濁川(7:32)→かもしか温泉跡(7:47)→ロバの耳岩(9:05)→熊野岳(9:41)→追分(10:24)→かもしか温泉跡(11:13)→濁川(11:35)→賽ノ磧駐車場(12:05)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
ひよどり越えを濁川へと下る 赤紫色のヤマオダマキ 濁川を渡渉する
分岐の標柱 中央右よりが噴気地帯でその右が丸山沢の雪渓 踏み跡は不明瞭になる
左手の尾根筋へトラバース 左手の尾根筋へトラバース ペンキマークが出てくる
倒れていた標柱 岩の尖塔の間から噴気地帯を見下ろす ロバの耳岩が近づく
コマクサの可憐な花 左手下は振子沢の源頭部 間もなくピークの岩場を登る
ピークより東を望む ロバの耳岩を振り返り見る 右に丸山沢を見る
丸山沢源頭部 五色岳とその東斜面 お釜
熊野岳避難小屋 雁戸山への北蔵王縦走路 追分の標柱
追分コース途中から見えたロバの耳岩 沢沿いにまだ咲いていたサンカヨウ 噴気地帯から岩壁への取り付きライン(下部は不明確)

行動記録
 蔵王といえばスキー場に樹氷、そしてなんといっても「お釜」がイメージになっている。観光開発により地元が潤ってきた経緯もありそれはそれでいいのだが、そのイメージが強いため蔵王というものが一面的にとらえられ、その深い魅力を知ろうとされていないような気がする。
 今日はロバの耳ルートを歩く。昨年は熊野岳からロバの耳岩を往復し、ロバの耳ルートの上半分を歩いたが、今回は下から通して歩くのが目的だ。このルートの起点はかもしか温泉跡で、熊野岳東尾根を登りロバの耳岩を越え北蔵王縦走路に交わるまでだ。しかし、しばらく前に登山道としては通行禁止にされていて、注意看板には「落石のため危険につき」とある。現状はというと、かもしか温泉跡から丸山沢を越えてからの踏み跡が不明瞭になっていて、どこが登山道なのか今ひとつはっきりしないようだ。しかし、それも尾根に取り付くまでの200mほどのことなのだ。以前はよく登られていたということもあり、現在も知る人ぞ知るコースとしてそこそこ歩く人がいる。以前の地形図にはロバの耳コースが表示されていたが、ついに最新の地形図からは削除されてしまった。そんなロバの耳コースに踏み込むとすれば、これはやはり「自己責任」ということになるのだ。
 エコーラインの賽ノ磧の駐車場から歩き始める。今日も足下は長靴だ。道の脇の花が気になり、ちょくちょくカメラを向けているので結構時間がかかる。ひよどり越えを下っていくと、濁川の手前ではミヤマオダマキが咲いている。不忘山のミヤマオダマキは青紫色だったがこちらは赤紫色だ。結局濁川までの間に30枚近くの画像を撮ってしまう。登山道は濁川を対岸に渡るのだが、架けられていた簡易な木橋は壊れている。毎年壊れては直されているのだが、今年はまだそのままだ。こんなとき沢の渡渉に長靴が役に立つ。左岸を登りまた下ると丸山沢を渡る。ここにはしっかりとした橋が架けられている。
 ほどなく登山道は右から峩々温泉からの道を合わせ、その先で標柱があり分岐になる。このまま進めば追分コースで名号峰、熊野岳へ至り、左へ折れるとロバの耳コースとなる。左に入るとすぐ石積みがあるが、これはかもしか温泉の建物があった名残だ。再び丸山沢を渡り踏み跡を追って登ると、右手は地形図で新噴気口と表示されている噴気地帯になる。ここまで来ると、もはや踏み跡は不明瞭になりわからなくなる。
 ところで蔵王は活火山である。17世紀から19世紀にかけてはかなり活発に噴火を繰り返していた記録があり、その後も活動を続け、近年では昭和15年に小噴火が発生している。大きな噴気も度々発生しており、仙台管区気象台が火山活動を常時監視している。過去マグニチュード9クラスの地震があった後は、例外なく火山の噴火があったという。それがどの火山でいつになるのかはわからないのだという。噴火は必ず予兆があるというので、常時監視体制があることは心強いと思う。
 さて、丸山沢の右俣と左俣の合流点付近の右岸斜面となるこの噴気地帯は、蔵王の中でもっとも噴気活動が活発な地域であり、あちこちから噴気音とともに蒸気とガスが噴出し、黄白色の硫黄昇華物が付着している。ここでは野湯を楽しむことも出来るが、ガスと落石には気を付けなければならない。
 上部は急峻な岩壁になるので左にトラバースしながら、左手の尾根に寄っていくと踏み跡らしきものがある。急登で滑りやすいが誰かが張ったトラロープがあり、登る人がそれなりにいるような感じだ。ただしロープはあくまでも補助とすべきであり、体重を預けるような使い方は避けた方が無難だ。岩には○や→のペンキマークもあり、それらを追えばルートを誤ることは無いだろう。ちょっとしたクライミング気分で登り上げると、肩にはロバの耳コースの倒れた標柱がありひと息つく。
 前方にはロバの耳岩のピラミダルな姿が見え、新鮮な景観が広がる。また新たな蔵王の魅力にふれた気分だ。ここは噴気地帯の西側崖の上部になり、近寄って腹這いになり下を覗き込むと眼下に野湯が見えた。ただしあまり安易には近づかない方がいいだろう。この後は丸山沢の右岸となる尾根をたどっていくが、ロープやペンキマークに赤テープもあり、ルートを間違うことはないだろう。
 ハイマツのあるところではツマトリソウが最盛期でイワカガミも多い。砂礫のところではコマクサの花が咲き始めていた。ロバの耳岩は火成岩のピークで、今もって植生が見られない岩塔である。ピークへは岩登りそのものになるが、岩の表面はしっかりしていて凹凸が多いので、不安無く登ることが出来るだろう。
 ロバの耳岩のピークで360度のパノラマを楽しむ。ここから見る蔵王の景観は新鮮で、登ってきた者でしか味わえない眺めである。ここからいったん小コルに下るが、この辺りにもコマクサは多い。見頃は7月上中旬だろうか。右に丸山沢の雪渓、左に五色岳を見ながら熊野岳へと登る。山スキーで五色岳東面を滑るとすればラインは?などど考えながらの急登も楽しい。浮き石が多いので落石を起こさないよう、落石にあわないように注意しよう。
 やがてお釜の湖面が見えてくると、登山道の十字交差も近い。熊野岳避難小屋では休憩したりカメラを構える人たち、そして道には登山者が何人も行き交っていてにわかに賑やかになってくる。今日はここまで誰にも会わなかったのだ。朝日や飯豊を眺めに熊野岳山頂まで行くが、薄雲で霞みよく見えない。
 分岐に戻って左に折れ、北蔵王縦走路を自然園の方へ歩く。庭園のような自然園を過ぎるとほどなく、追分の十字交差になる。細い山道を右に折れると、追分コースをかもしか温泉跡までひたすら下るのみ。このコースも登山者は多くないようだが、途中で登ってくる単独男性とスライドする。かもしか温泉跡まで下れば、後は今朝来た道を逆にたどって戻るだけだ。午後から仕事ということもあり、休みらしい休みも取らず歩いたが、普通に今日のコ−スを歩くならば、7時間はかけて楽しみたいところだ。また、熊野岳から馬の背、刈田岳を経て大黒天に下る方が時間は短くてすむだろう。裏技として刈田岳に自転車をデポしておけば、さらにスピーディーに下山が可能だ。
 冒頭にも書いたが、ロバの耳コースは通行禁止とされている。しかし現実に歩いている人もいる。もちろんロバの耳コースをことさら推奨するわけではない。整備された登山道と違い、誰しもが歩けるコースというわけでもない。しかし、危険なコースというほどでもない。そもそも登山道で絶対安全な道などないのだ。要は歩こうと思った人が自分で判断し、自己責任で歩くということだ。ただ思うのは、この素晴らしいコースを埋もれさすのは、あまりにももったいないということだ。(K.Ku)

概念図

トラック 登り=赤  下り=青


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