虎捕山は飯舘町村霊山町の境に位置し、阿武隈山系の中でも福島県の北部に属する。登山口の山津見神社には、盗賊を捕らえた武士の故事が伝わる。表参道を辿ると岩場にしがみつくように奥ノ院本殿が建ち、本殿裏の岩場は阿武隈山系が一望できる絶好の展望台になっている。
登路としては、山津見神社からの表参道、行合道からの裏参道とがある。裏参道は5年ほど前に訪れたときは藪がかぶさり廃道同然になっていたが、その後調査はしていない。ふくしま百名山になったこともあり表参道は訪れるハイカーも多く、良く整備されている。
今回は表参道をひとりで歩いてみた。神社の右手に虎捕山の参道はある。入口には「虎捕山津見神社御本殿登拝入口」の大きな標柱が建っている。ここから尾根に沿って登っていく。いくらか勾配が増してくると、やがて手水舎に着く。とぎれることなく湧水が出ており、このコース唯一の水場である。
ここから道は2つに分かれる。右に登る道は鳥居をくぐり虎捕洞を通り本殿に向い、左の道は尾根を横切り金華山を経由して本殿に向かう。まずは真っ直ぐ本殿を目指す。大きな岩を縫うように登っていく。ここが虎捕洞だと思われる。特に案内板などは無い。周りの木々は落葉し、普段見られない岩場が姿を現す。信仰の山でなければ、岩トレにはもってこいの山だが厳に慎みたい。やがて岩場が立ちふさがり左に回り込むように進むと、鉄ハシゴとクサリが現れる。これらを手がかりに岩場を慎重に登っていく。すると頭上に奥ノ院本殿が姿を現す。本殿は岩場にへばりつくように建っている。
本殿の左側の岩場を足元に注意しながら回り込むと一段高い岩の上に立つことができる。転落防止のための手すりももうけられ、周りの阿武隈山系の山々を一望できる絶好の展望台になっている。
次は三角点のあるピークを目指す。一旦岩場を降りて尾根伝いに北へ向かう。ハッキリした踏跡を登っていき右の微かな踏跡に足を踏み入れるとすぐに三角点に着く。周りは木々に覆われ展望は無い。参拝者にとっては本殿が目的で、ヤブ山のピークである三角点峰には興味は無いのだろう。
帰路は奥ノ院まで戻り、登ってきた道とは別な金華山へと延びる南の尾根を下る。こちらも岩場の急坂でクサリとロープを掴みながら慎重に下りていく。しばらく行くと見晴らしの良い岩場に出て、眼下には山麓の田畑を見下ろすことができる。ここが金華山のピークだ。さらに下って行くと道は斜面を東にトラバースする。しばらくして小さな尾根を越すと、さっき登ってきた手水舎に着く。後は登ってきた道を下りると山津見神社に戻ることができる。(I.I)
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