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Fukushimatoukoukai HomePage
No.4013
朝日連峰
山行種別 無雪期一般
あさひれんぽう 地形図 大井沢、大鳥池、相模山、朝日岳


■山行期間 2007年8月5日〜7日
■コースタイム 8月5日 福島(20:55)=山形上山IC=月山IC=バカ平(23:50)幕営
8月6日 バカ平(6:45)→竜ヶ池の水場(8:00)→観測小屋(9:05)→粟畑(9:30)→天狗小屋(9:40)→天狗角力取山(10:05)→出谷川(11:05,11:40)→明光山(12:50)→オツボ峰(14:35)→大鳥小屋(15:50)幕営
8月7日 大鳥小屋キャンプ場(5:40)→東沢(6:05)→以東岳(7:50)→中先鋒(9:05)→狐穴小屋(9:40,10:05)→二ツ石山(11:35)→天狗角力取山(12:55)→竜ヶ池の水場(14:15)→バカ平(15:20)=福島
■写真
主稜線から以東岳 オツボ峰から以東岳 大鳥池

■行動記録
8月6日 晴れのち曇り
 朝日連峰に1人で1泊2日の尾根歩きを計画した。八久和川上流部(出谷川)をぐるっと囲むようなルートで、二日間とも旅程が長い。テントをやめてツェルトにするなど、装備は日帰り用に毛が生えたくらいにしてある。
 遅めの梅雨明けから1週間弱、天気は朝から良い。暑い日になりそうだ。出発が予定より遅くなったこともあって、突っ込み気味に歩き出す。平坦地を過ぎると尾根上の登りが続く。竜ヶ峰が近づいてきて北斜面の巻き道になると、竜ヶ池の水場はすぐだ。2本目の水を汲める小沢を過ぎると道は再び尾根上に戻る。道はぬかるんだ場所が多い。観測小屋から石畳の道を登ると標高1397mの粟畑だ。休憩がてら天狗小屋に寄り道する。
 天狗角力山からは出谷川方面を見渡すことができる。沢の上流部にはまだまだ雪渓がたくさんあるようだ。西に伸びる尾根に付いた道へ。一気に出谷川へと落ちる。ちょうど岩屋沢との出合に出るが、釣り人が尺物を狙ってよく入るので、手前側と対岸にテン場がある。出谷川には橋などないので、靴を脱ぎ、膝まで水に浸かって渡渉する。水が冷たく気持ちいい。大きな石の上に寝転んで大休止する。青い空と入道雲、両岸の緑は深い。止むことなく流れる沢音とセミの鳴き声に浸って、夏を存分に感じる。
 出谷川からオツボ峰へ登り返す。登山道の取り付きがわかりにくい。テン場から奥に入ったがルートではなく、とはいっても目の前の尾根上に道はあるはずなので、強引に斜面を登ってみる。さらに尾根の先端方向に巻いて行くと、トレースに出られた。テン場よりももっと上流部に起点があるようだ。オツボ峰までのこの道は、もともと年に10パーティーほどしか通らなかったそうだが、予算不足で昨年(2006年)から刈払いなどの整備がされなくなっているという。出だしはブナの落ち葉が積もって腐葉土になっている。踏み固められていないうえに急斜面なので歩きにくい。途中では何本か獣道が入るし、熊の糞が3箇所もあるし、さらにはニョロも出た。1人で通るには薄気味悪い道だ。急斜面の登りで、ペースは上がらないのに心拍数がどんどん上がる。疲れる。明光山を過ぎると樹木が低くなる。踏み跡は先程までよりしっかり固まっているが、ここも未整備なため笹竹が両脇から覆いかぶさってきている。時には腰上の高さになり、半藪漕ぎ状態だ。さらに疲れる。尾根歩きでこんなに息が上がったのは久しぶりだ。自分に合ったペースで歩けるようにならなければいかんなと反省したしだい。
 標高1500m近くなると草原が続いて景色が良くなる。もう少し季節が早いとお花畑なのかもしれない。ようやくオツボ峰に到着すると、久しぶりに登山者とすれ違った。大鳥池や以東岳の眺めがいい。以東岳まで30分強なので山頂小屋に泊まるのが一番近いが、予定通り大鳥池に降りることにする。まだ時間はかかるがあとは下りだけで見通しが立ったので心も軽い。三角峰をトラバースしてからは急傾斜で高度を下げていく。4時前に大鳥小屋(タキタロウ山荘)に到着。一日に2回山登りをしたような大きなアップダウンのある行程だった。
 タキタロウ(巨大イワナ?)伝説のある大鳥池は標高約950mに静かな湖面を広げていた。遊泳したりできないのは残念だが、湖畔は落ち着いた雰囲気でよい。ハイシーズンでも平日なので小屋もテン場も人はまばらだ。500円払ってツェルトを張らせてもらうことにした。夕闇が迫るとブヨと蚊がまとわりつき、蚊にはツェルトの中でも攻撃されたのにはまいった。翌朝には顔の輪郭が変わるほどぼこぼこにされてしまった。けれど、それと引き換えではないけれど、キャンプ場脇の流れには蛍が飛び交っていて、星のない静かで暗い夜に彩を与えてくれた。
8月7日 曇り時々雨
 蚊との激しい格闘もあったが充分に睡眠を取り、早めに起床した。ノンアルコールだったのでさっぱりとした目覚め。今日は昨日ほどアップダウンはないが、距離は長く、コースタイムからするともっと時間がかかる。昨日のように息が上がってしまわない程度に、しかしスピードを意識して稜線歩きを楽しむことにする。テン場から山頂付近が見えていたが、はっきりしない空模様。昨晩はほんの一降りだけ雨があり、遠くで雷が鳴っているようでもあった。昨日ほどの陽射しがないぶん歩きやすそうだが、変に天候が崩れると怖いので進めるうちに進んどいた方が良さそうだ。
 以東岳へは直登コースを取る。しばらく大鳥池沿いに進み、東沢を渡ってから尾根に取り付く。間もなくに雨が降り出す。強くはない。低い森林限界を超えてからは、土砂の流出で登山道が深くえぐれている部分が多い。脇に新たに道が付けられているが、こうして少しずつハゲが広がっていくのだろうか。登山者は山に対して申し訳なさそうに歩くくらいがちょうどよいのかしら・・・。休憩を入れつつ2時間強で以東岳山頂へ。振り返ると鳥というよりはムササビが大きく翼を広げたような格好の大鳥池。前方には朝日連峰の主稜線が伸びる。残念ながら主峰の大朝日はガスで見えない。
 狐穴小屋に向けて歩き出す。風雨が断続的にあるが問題はない。ときに池塘があるなだらかな長い主稜線は、同じくなだらかでも飯豊とはまた違った雰囲気だ。朝日といえば縦走というイメージがあるが、このまっすぐに伸びる稜線を終いまでも歩きたくなるのもわかるような気がする。以東小屋に泊まった人たちはもうずっと先を歩いているのだろう、見通す限り人がいない。ゆっくり歩いているわけでもなかったが、ゆったりと山旅をしているようないい心地がした。
狐穴小屋で長めに休憩を取り、水を補給。出谷川中俣沢の源頭部は豊富に水が流れるきれいな草原だった。この日はここまで脚に昨日の疲れが濃く、調子がいまいちだったが、気合を入れ直して再び歩き出すと体の各部に油が回ったような感じで軽快になった。両手のストックをフルに使って推進力にしてスピードを上げる。道は、東側がすっぱり切れ落ちているのと地面が粒子の粗い砂で滑りやすいので、所々慎重にならなければならないっ場所が続く。ノンストップで二ッ石山まで歩く。
 ここで空が薄暗くなり雨だけでなく雷が鳴り出した。稲光はたまにしか見えず、雷鳴も遠いので行動を続ける。二ッ石山を過ぎてから徐々に道はブナの若木の林の中などを通るようになり、先ほどまでの剥き出しの稜線よりは雷に対しても安全そうだ。そんなことを考えながら歩いているうちにいつのまにか雷の音も聞こえなくなった。雷に恐れをなしたわけじゃないけど、いっそうせかせかと歩く。何をそんなに急ぐのか。きっとこれがランナーズハイというような状態なのだろう。天狗角力取山まで一気に歩く。余勢で竜ヶ池、バカ平と足早に下った。最後は節々と筋肉が痛み、集中力も落ちてしまったが、ゆっくりと大井沢温泉に浸かる時間は稼ぐことができた。(M.J.)


■概念図



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