矢大臣山の山頂は広々とした芝生の広場で、展望台からの眺めは最高である。阿武隈高原中部県立自然公園に指定され、春には群生するミヤマアヅマギクが見事である。
登路としては小白井からの電波施設管理道路と、仲上から入る湯沢登山口があるが、お薦めは変化のある湯沢口のコースである。入口は小野町湯沢仲上、案内板もあるので良くわかる。案内板から東に向かって車を進めると、矢大臣山登山口臨時駐車場の案内板が出てくる。車はこの先まで入れないことはないが、地元の方の農作業にも支障するので、ここに車を置きたい。
歩き始めて少し行くと左にため池が現れる。さらに行くと左に使われていない民家があり、その先の左に鳥居がある。ここから道はつづら折れに登っていく。コルまでくる頃にはちょうどひと汗かく。コルから先も作業道は続いているが、矢大臣山に登るには、ここから左に折れる。周りは雑木林で、緩やかに登っていく。山腹をトラバースするようになり、右に土塁を見ながら鬱蒼とした林の中を登って行き、木でつくられた階段を過ぎると長持石に着く。以前は長持石の由来が書かれている案内板があったのだが今は朽ちてしまっていた。忘れ去られないうちに記録しておこう「むかし、夜明け前に長持を山頂にあげると陸奥の富士山になると告げられた夫婦が、大きな長持をかつぎあげ、ここまで来たとき一番鶏が鳴き突然長持が割れて石になったと伝えられます。」と記されていた。
長持石を過ぎると水場の分岐に着く。登山道から少しの所なので水を補給しておこう。ここから山頂への登りになる。春の時期だとツツジが綺麗に咲いているのだが、今は花は無い。替わりにアケビの実が熟していた。パラボラが見えてくると山頂は近い。草地に出る。毎年5月中旬にはアヅマギクが広場一面に花をつけて登山者を楽しませてくれる。少し北側には展望台もあり、阿武隈山系の山々がよく見渡せる。三角点のある矢大臣山の山頂は、もう少し北の一段高いところだ。小さな祠と、その裏には二等三角点がある。
帰路は登ってきた湯沢口の登山道を戻る。小白井口の電波施設管理道路は、一般車両の乗り入れは禁止されている。全面コンクリート舗装され、途中のゲート前に5〜6台の駐車スペースがある。麓の県道から40分ほどで登ってこれるが、最近はルールを破って山頂まで車を乗り入れるものも多く、矢大臣山の静かな雰囲気が台無しになってしまう。山頂までの車の乗り入れは厳に慎みたい。また、湯沢温泉から歩く場合は湯沢口の案内板まで50分ほどの道のりである。ちなみに湯沢温泉の沸かし湯であるが、アルカリ性ラジウム温泉で胃腸病や痔病、婦人病に効くと言われている。(I.I)
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