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No.4528
餅井戸沢
浅草岳・叶津川流域
山行種別 無雪期沢登り
もちいどさわ 地形図

トップ沢登り>餅井戸沢

山行期間 2011年7月17日(日)〜18日(月)
コースタイム 7月17日 入叶津=駐車地点(7:52)→入渓点(8:24)→大滝(11:05)→巻き(11:07-13:02)→幕営地(14:53)
7月18日 幕営地(6:00)→15m滝(6:05)→巻き(6:25-7:56)→登山道(9:27)→浅草岳往復(9:33-9:55)→叶津登山口(12:52)→車デポ地(13:07)=車回収
写真 写真は拡大してみることが出来ます
餅井戸沢左岸にある道をたどる ゴーロが続く 4m滝の左岸が崩れている
ナメ床を歩く 3m滝を右から登る 5m斜瀑のシャワークライム
雪で磨かれた左岸のスラブ 雪渓が現れる 雪渓を歩くと前方に大滝が見えてきた
斜瀑の手前から高巻く 高巻き最後は懸垂下降 5m滝のシャワークライム
冷気が噴き出て霧になる 雪渓の綱渡りで滝に近づく 雪渓の下は空洞になっている
この先に幕営地を見つけた 焚き火は心も体も温まる 15m滝
高巻き途中の斜面はニッコウキスゲやコバイケイソウの花畑 やっと高巻き沢に下降 最後の雪渓の登り
登ってきた源頭部を天狗の庭から見る 天狗の庭から続く草原 ブナの森を歩く

行動記録
7月17日
 朝7時頃、只見川沿いの公園で前泊していた3人と合流する。前日は集合地に向かったものの、どうにも眠くなってだいぶ手前の柳津で車中泊しまった。車2台で入叶津(いりかのうづ)の集落へと向かう。入渓点の少し手前までは車で林道を入っていけるようなのだが、初めての沢ということもあり道を行き過ぎてしまった。結局集落の人に聞いて林道に入ることができたが、最初の堰堤に真っ直ぐ向かうと行き止まりになってしまい、よくよく見れば手前で林道は右に曲がっていてそちらに進むのが正しいようだった。ちょうど林道の草刈の日で、集落の人達の草刈作業が始まったばかりのなか、草ぼうぼうの道に車を進める。林道は少し荒れているので、奥まで入るには小型の4躯が望ましい。私の車は下にデポし、Yさんの車に乗り合わせる。
 車で行けるところまで進み、空きスペースに車を置いて歩き出す。道は人が歩ける程度に細くなると、ほどなくもかけ沢の出合になる。今回の計画では餅井戸沢を登った後の下山ルートとして、もかけ沢を下降する計画としている。もかけ沢を渡ると道は不明瞭になり見失う。周辺を探すと斜面を登った先に踏み跡が見つかり先へと進む。踏み跡はいったん沢から離れるように感じるが、やがて沢が近づいてきて、左手すぐ下に餅井戸沢が見えたところで入渓した。
 小休憩の後、いよいよ遡行を開始する。餅井戸沢は大きな沢ではないが、比較的明るく開けた沢で、しばらくはゴーロが続く。時折小滝が現れるが、いずれも今日の水量であればフリーで登れるものばかりだ。今日はとにかく暑いので、水を浴びクールダウンしながら遡行を続ける。沢はいつでも水を飲めるのがありがたい。やがて左岸の上の方から斜面が崩れ、沢に土石が流れ込んだ跡のあるところに来た。ここの4m滝は簡単に直登できる。
 さらに登っていくとナメになってくる。3mナメ滝は右から登る。ゴーロと小滝を越えて順調に高度を上げていく。5m斜瀑はシャワークライミングで中央突破が楽しい。左岸が広くスラブ状になったところを歩いていくと、目の前に突然雪渓が現れた。標高は800mほど。会津は豪雪地帯なので谷筋にはある程度の雪渓を予想していた。しかし目の前に現れたのは沢幅いっぱいに残る雪渓ではないか。雪渓の下の空洞からは冷気が霧となって湧き出ている。雪渓の末端は融けてカミソリのように薄くなり、しずくがしたたり落ちている。
 沢の雪渓は融けるにしたがい両端と中央部が先に薄くなりやがて崩壊する。Hさんのリードで、雪渓の厚い部分を歩くようにする。雪渓を登っていくと前方に大滝が見えてきて、思わずおおーと声が出る。ここまでは小滝ばかりだったのだ。大滝は釜のある20mほどの直瀑と、その手前の10mほどの斜瀑との2段になっている。ここから見る限りでは斜瀑は直登できそうだが、斜瀑の手前で雪渓が切れていて滝との間が口を開けているので、斜瀑に取り付くにはリスクがある。20m滝も両岸が立っていて直登は難しいように見える。結局斜瀑手前の左岸から巻くことにする。下の方は急斜面の泥壁なので、沢登り用のハンマーを泥壁に打ち込み、ブッシュに届けば枝をつかみ体を引き上げていく。体を確保するのは頼りないほど細い木や草なので緊張が続く。雪渓の上は涼しくて心地よかったが、高巻きを始めると風の通らないヤブの中は暑さが一層厳しくなる。ある程度登ってから滝の方へトラバースを始めるが、斜瀑の結構手前から取り付いたので大高巻きとなった。時間がかかり手持ちの水も無くなっていたが、巻いている途中に小沢があり、水を飲めた時は本当に生き返った心地がした。Hさんが頃合いを見て沢へ下降を始める。最後は40mロープいっぱいの懸垂下降で沢床に降り立つ。そこは大滝の落ち口から80mほど上流であった。時計を見れば、なんと2時間を要した大高巻きとなっていた。自分としても2時間の高巻きは初めての経験だ。斜瀑を登ることができれば、もっと小さく巻けるルートが見えるのかもしれない。
 下降点辺りは雪渓が消えていた。懸垂下降中の斜面にウドを見つけていた私は、Yさんとしばしウド採りをする。7月も下旬になろうというのに、雪渓が消えたばかりの斜面ではウドが出始めたばかりなのだ。この後もここから上流ではあちこちにウドを見つけることができた。そこからしばらくは雪渓も無く小滝が続く。5m滝では水流の中をシャワークライムで楽しむ。標高880m、右から支沢を合わせるところで再び沢幅に雪渓が現れる。雪渓によじ登るり歩いていくと、沢が右にカーブして8m滝があり雪渓が切れていた。右岸にへばりついて残っていた雪渓のブリッジを1人ずつ渡り、なんとか滝の中段に取り付くことができた。水流の中に手を伸ばすとホールドが見つかり一気に登ると、後続にお助けひもを出す。そこから上は雪渓の崩れたブロックが散乱する間を歩く。
 さて、今日はスタートが遅れた上、雪渓の処理と思わぬ大高巻きで時間がかかってしまった。計画では稜線に出て登山道を下り、もかけ沢に入って適当な場所でビバークの予定だったが、もはや稜線に上がれそうにないので、幕営地を探しながら登ることになった。しかしなかなか適地が見つからない。沢の状況から見てこれ以上登ってはもう無いだろうというところまで来たので、傾斜地だったが4人が横になれそうな右岸を幕営地に決めた。木の枝を切り石を取って地ならしをし、タープを張るとなんとか幕営地らしくなった。
 たき火は幕営地の対岸ですることにし、流木などを集めて準備完了。まだ明るい午後5時前から宴会に突入。雪渓で冷やしておいたビールで乾杯すると、キューッと喉にしみて何とも言えない。各自持ち寄ったつまみで酒が進む。特に現地調達したウドとウルイをめんつゆ漬けやサラダにしたが、これは美味かった。あとはイワナの塩焼きでもあれば最高だが贅沢というものだろう。しかも登ってくる途中の釜に魚影は薄かった。午後7時も過ぎるとさすがに暗くなり、夜のとばりが降りてくる。たき火を囲んで酔いに身を任せていると何とも心地よい。上を見上げれば星が瞬いていた。眠くなりタープの下で横になった。Hさんら2人は焚き火の側で横になったようだ。いつしか我々は山中深いこの場所で眠りについていた。

7月18日
 午前1時20分頃雨が降ってきた。パラパラとタープを叩く音で目が覚める。幸い短時間で止んだので、外の2人もそのまま寝ていたようだ。傾斜地のため下へずり下がってしまっていたので、上に移動して寝直す。4時頃明るくなり目が覚める。おじやの朝食を済ませると、撤収作業をして6時に出発する。
登り始めて間もなく滝が現れる。15mほどあるだろうか。Hさんが直登を考えるが、下の方には適当なブッシュもなくビレイが取れず難しい。巻きが左右どちらからもやれそうだが、結局右岸から巻くことになった。沢を少し戻って右岸の肩に上がるとブッシュの中を登っていく。上に見える岩場の裾を落ち口に向かってトラバースするのは、あまり良くないように見えたので、岩場を直登してからトラバースすることになった。しかしこの巻きがまたしょっぱかった。
 斜面が立ってくると木の枝をつかんで登るが、泊まり装備の重いザックを背負っての腕力勝負となる。途中でビレイを取り、ロープを出して後続に登ってきてもらうが、かなり時間がかかった。その後はロープを引いてHさんがトップになり落ち口を目指す。首尾良く落ち口のすぐ上に降りることができたのだが、この巻きに1.5時間ほど費やしてしまった。
 休憩の後さらに登っていくと、沢は傾斜を増して徐々に源頭の雰囲気になってくる。いつしか周囲は草原となってきた。沢に灌木が被りうるさいので、左にある小沢に移って登る。その小沢が左に離れるところで本流へと戻ろうとするが、草が下向きになびいていて滑りやすく、おっかなびっくり歩くハメになる。源頭部の雪渓は稜線近くまで大きな逆三角形になっているが、ここの登りは急傾斜で緊張した。滑ればどこまで落ちるのだろうと思うと、ハンマーを握る手がじわっと汗ばむ。無事雪渓の上に出ると稜線はすぐ目の前だった。右手ので笹をかき分け登ると、草原の中に木道の登山道があった。
 んなが休憩中、浅草岳が初めての自分は1人で山頂まで往復することにした。早足で登った山頂には登山者が数人いた。下界はガスがかかっていてあまり遠望は効かなかった。戻るとあとは登山道で下山するのみ。もかけ沢は餅井戸沢の状況からも雪渓があるだろうと思われ、下降に使うには危険と判断したことと、時間の問題もあり変更したのだ。
 天狗の庭と呼ばれる草原を進み、解体された避難小屋の手前で右に折れると、十数名の登山者とすれ違った。その後は1人とすれ違っただけで、我々だけの静かな山歩きとなった。途中で登山道から見たもかけ沢右岸の壁は、雪で磨かれた岩肌になっていて、やはり雪渓もあるのだろうと思われた。ここの登山道は距離の割りにやけに長く感じたが、素晴らしいブナの森があり癒やされながら歩いた。まだかまだかと想いながらやっと登山口に到着。そこから国道289号をしばらく歩いて私の車に到着し、Yさんの車を回収に向かった。その後、只見町営只見温泉保養センター「川の駅」で入浴と食事をしてから帰路についた。(K.K)

溯行図


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