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No.4544 |
笹木沢
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船形連峰 大倉川 |
山行種別 |
無雪期沢登り |
ささきさわ |
地形図 |
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山行期間 |
2011年9月6日(火) |
コースタイム |
柳沢小屋(3:45)=十里平(5:25,5:55)→大倉川(6:14)→堰堤(6:33)→4m滝(7:09)→笹木沢出合(8:53,9:11)→倉山沢出合(10:23)→鎧滝(11:23)→二俣(13:19)→登山道(14:12)→登山口(14:52)=十里平。車回収(16:35) |
写真 |
写真は拡大してみることが出来ます |
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大倉川の遡行を開始 |
戸立沢出合(左が戸立沢) |
4m滝 |
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お助けひもで振り子トラバースして乗り越える |
8m滝は左からへつり水流脇を直登 |
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8m滝の上部から見る |
笹木沢出合(左が笹木沢) |
笹木沢最初の4m滝 |
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4m滝上部から |
3m滝 |
幅広6m滝 |
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幅広6m滝上部から |
階段状4m滝 |
2段8mナメ滝 |
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ナメが始まる |
幅広4mナメ滝 |
2m滝 |
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グリーンタフ(緑色凝灰岩)のナメを歩く |
4m斜滝に右岸から落ちる枝沢 |
3m滝 |
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5m滝 |
ナメが続く |
7m滝 |
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7m滝は右岸を小さく巻く |
手前の3m滝の先に2段8m滝 |
3m滝は水流左を登る |
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2段8m滝 |
2段8m滝は水流左を直登 |
7m滝 |

7m滝は水流左を直登
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鎧滝の1段目を登り2段目3段目を見上げる
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鎧(よろい)滝 |
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Kさんが登ってくる |
2段8m滝 |
小滝が続く |
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小滝が続く |
4m斜滝 |
3m斜滝 |
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ブナ林の中を行く |
最後の詰め |
登山道に出た |
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登山道から見えた最上カゴ(手前左)と荒神山(後方右) |
観音寺登山口 |
柳沢小屋 |
行動記録 |
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5日はKさんと午後2時30分待ち合わせの予定だったが、仕事が終わらず結局午後4時を過ぎた。2台で白石ICから高速に乗り、山形北ICで降りR13〜R48〜黒伏高原スキー場を経て、柳沢小屋には午後6時過ぎ到着。小屋には明日黒伏山に行くという先客が2名。軽く入山祝いのつもりが、ホルモンや白菜鍋をつつきながら呑むとついつい長くなり、寝たのは午後9時になってしまった。トイレで外に出ると頭上は星空だった。明日の天気はどうだろうか。
3時30分に起床しシュラフをしまうとすぐ出発。車で登山口へ向かい、Kさんの車を下山用にデポする。この登山口には10数台は車を置けそうだ。林道を下り宮城県へと車を走らせる。観光地でもある定義(じょうげ)如来を通り、十里平の奥に車を止めたのは時25分だった。舗装路の末端から小道をたどり右へ下ると鉄柵があるので、その脇を通り大倉川右岸沿いの道を歩く。この道は50年以上前に廃線となった森林軌道の跡で、その昔は木材を搬出していたらしい。今も大倉川に半分朽ちた木造橋が残っている。遺構好きには堪えられない場所なのだ。やがて道は堰堤に辿り着き、堰堤のステップを伝って大倉川に降りる。対岸に渡れば森林軌道跡を歩けるようだが、今日は大倉川を忠実に遡行して笹木沢出合まで行くことにした。天気は曇りで気温もこの時期にしては低い。
大倉川を遡行していくとまた堰堤がある。堰堤の手前、左岸の少し上に石垣が見えるところがあり、ここから登って巻く。大倉川の遡行も退屈になってきた頃、左から戸立沢を合わせる。戸立沢は自分が2年前に初めての沢泊りを経験した沢だ。しばらく行くと大きな釜を持つ滝が見えてきた。滝は4mほどだが両岸は立っていてへつるのは簡単ではない。泳ぎも考えたが、朝から冷たい水に漬かるのは避けたい。釜に落ちたとき引っ張ってもらうためにロープを付け、右からへつろうとするがすぐ行き詰まる。誰かが下げていたお助けひもで上へと崖を上がるが、岩がもろすぎて危険で巻けない。結局お助けひもを使ってえいやっと振り子トラバースを試み、なんとかへつることができた。この滝の通過に2人で30分もかかってしまった。すぐ上には8m滝があるが、左壁から水流左を登れる。他の記録を見ると、この2つの滝は一緒に右岸から(左岸の記録もある)高巻きできるようだ。見た感じでは15〜20分で巻けると思われた。
右岸が立ってきて川幅が狭くなってくると笹木沢出合だ。十里平をスタートしてから約3時間が経過していた。やっと着いたと思っていると、右手から青いヤッケの男性が現れてちょっと驚く。続いて若い男女が2名現れ、話すと仙台のクライミングジムの一行で、定義林道から下降してきたという。今日は笹木沢をピストンするというから元気なものだ(後から判明したが若者2名は初の沢登りだったらしいが鎧滝を登ってまた下降して帰ったらしい。いやはや凄いとしかいいようがない)。小休憩後いよいよ笹木沢へ突入だ。
最初の滝は立派な釜を持つ4m滝。左からへつり水流左を直登。次の3m滝も釜があり右から直登する。笹木沢は滝の大きさのわりには釜が大きい印象だ。トイ状になった先にある6m幅広滝は、傾斜も緩く水流左を直登。続く4m滝は階段状で容易。倒木の堆積した先に2段8mのナメ滝。滝は容易に直登できるが、雪の影響か地震のせいかわからないが、根こそぎ流されてきた倒木が多い。沢はナメになってくる。釜を持つ4m幅広ナメ滝は左から登るがちょっと滑りやすい。クライミングジムパーティーの若い2人は沢登りが初めてというが、おっかなびっくりながらもバランスを取って登っている。Kさんは右から登ってきた。
2m滝の左端を越え、美しいナメが続く沢を歩いていく。流れは平坦で穏やかだ。倉山沢を右から合わせると右岸のスラブが見えてくる。このスラブを伝って水が落ちる4m斜滝は左から越える。この先で沢は直角に近く右に曲がるとさらにナメが続いている。3m滝を越えると5m滝で水流右を登る。クライミングパーティーはロープ確保の準備をしていたので先行させてもらう。右から奥に滝の見える枝沢を合わせると、またしばらくナメ床が続く。やがて両岸が迫り沢がV字状になるが、平坦なので沢床には岩屑が堆積している。左から枝沢が小滝で合わせ、狭い廊下を本流は右へ曲がる。7m滝は直登できそうにないが、右岸は巻けそうだ。取り付いてみると踏み跡らしきものがあり、滝手前で崖を直上しブッシュにつかまりトラバースして落ち口へ降り、小さく巻くことができた。ただしブッシュは細いので注意が必要。場合によっては懸垂下降も考えたい。
3m滝の左を直登し、続く2段8m滝も水流左を直登する。右から枝沢を合わせV字谷区間を抜けると、沢は開けて7m滝が見えてくる。水流左を登るがスタンスホールドともに十分で不安はない。滝の上に出ると笹木沢のハイライトとなる鎧滝が見えた。高さ30m3段(4段・5段と数える場合もある)の滝は、幅広くすだれ状に水を落とし、山中深く堂々とした姿を見せている。手前の釜に左から枝沢が落ちる場所で、鎧滝を眺めながら休憩とする。気温が上がらない今日の天候のうえ、滝からの風で寒いくらいなのでカッパを着込む。
さて体が冷えないうちに登ろう。一段目を右から登って左に移り、自分がリードで登る。直下で見上げると威圧感を感じるが、意を決して壁に取り付き登り始める。水流の左端を登っていくが、ホールドが十分あり岩もしっかりしているので、それほど難しい登攀ではない。水流を避けて左手の草付きやブッシュに逃げたくなるが、そちらは岩が少しぬめっているようなので、水流沿いか場合によっては水流に入って登るのが基本だろう。一気に登っていくと最上部数mが少し滑りやすいように見えたので、岩の細かい突起を慎重に拾って登った。ビレイを取りKさんを確保して登ってもらう。上から見下ろすとさすがに高度感がある。鎧滝は期待半分不安半分だったが、順調に登攀できたのでホッとする。
鎧滝の上から遡行を続けると、2m滝の先に左から枝沢を合わせて2段8mのナメ滝。その上はまたナメ床が続く。その後は1m・2m・4m・4mと小滝が続く。やがてブナの森の中を流れるようになると、左右から小さな枝沢を合わせながら流れは徐々に細くなってくる。途中で新しい焚き火跡を見つけたが、先週末にでも遡行したパーティーのものだろう。この辺りまで来ても魚影を見るので、釣れれば楽しいビバークになるだろう。私もいつかこんなブナの森で泊まりながら遡行してみたいものだ。標高960mほどで二俣が現れるが本流の右へ進む。3mナメ滝を越えるともう滝はなくなった。
それにしても笹木沢の流れは急なところがほとんど無い。いつもなら源頭に近づくにつれ急峻になるものだが、笹木沢は平坦な流れの中に滝が点在しながら源頭へと高度を上げていく感じだ。標高1050m付近の二俣は左へ進む。ブナ林の中を穏やかな流れの笹木沢を遡っていく。本流をそのまま詰めてもよかったが、下山を少しでも短くしようと、1080m付近で左から合わさる枝沢を登ることにした。ここまで来ればどこを登ろうと登山道にはたどり着く。細くなる流れを追って、ちょっと急になった沢の詰めらしい斜面をひと登りすると、ヤブこぎらしいヤブもなく登山道に出た。後で地図で確認すると、仙台カゴの南側を通る登山道の少し粟畑寄りの位置。笹木沢出合から約5時間の遡行だった。
登山道は樹林に囲まれ眺めもないので、休憩もせずすぐ下山する。後白髪(うしろしらひげ)山と最上カゴへのX字状の交差で観音寺林道方向へ折れ、明るいブナの2次林を抜けると登山口だ。今朝止めておいたKさんの車で十里平へ向かう。途中でショートカットしようと熊沢林道に入ったがこれは失敗で、時間短縮にはならなかった。帰りは定義で久しぶりに三角油揚げを食べたがやはり美味い。笹木沢の充実した沢旅の余韻に浸りながら帰路についた。
笹木沢は滝が多い沢だと思うが、直登できる滝がほとんどで、巻いたのは1箇所だけだった。滝を直登したい人にはうってつけの沢といえるだろう。技術的にもあまり難しいところはないが、8m程度の滝も多く直登できるからこそ滑落には注意したい。思いのほかナメが多く、豊かな舟形連峰の美しいブナの森を流れる笹木沢は、穏やかで優しい美渓、秀渓といえるだろう。笹木沢出合から登山道までの標高差は600m弱なので、体力的にもそうきつくはない。しかしアプローチと下山を考えるとしっかりとした計画が必要だろう。アプローチは十里平からと定義林道を使う2つの方法がある。定義林道は直接笹木沢出合に下降することもできるので楽だが、その分定義林道を入山時も下山時も走ることとなる。十里平からは大倉川を遡行するにしても、途中まで森林軌道跡を辿るにしても、自分の足で歩く時間は長くなる。どちらが良いかは考え方次第だ。下山は我々の方法が一番楽だが、日程に余裕がある場合は、船形山の山頂小屋に泊まり、翌日下山することもできる。また、登山道から大倉川本流を下降し、定義林道に出ることも出来るが、下降ポイントの見極めが必要になるだろう。笹木沢に入るパーティーはそれほど多くはないだろうが、白山書房の「日本の渓谷96’」に載っていることから遠方からのパーティーも時折いるようだ。(K.K) |
溯行図 |
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作図:熊 |
トラック |
登り=赤 下り=青 |
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