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No.4568
鳴虫沢
名取川二口沢支流
山行種別 無雪期沢登り
なきむしさわ 地形図

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山行期間 2011年11月10日(木)
コースタイム 姉滝入口(8:47)→鳴虫沢出合(8:59)→シシ滝(10:18)→南石橋(11:44,12:21)→二俣(12:26)→奥の二俣(13:08)→尾根道・三神歩道(14:26)→家形山(14:43)→姉滝入口(15:48)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
姉滝の案内板前からスタート 手前が姉滝で向こうは妹滝 二口沢を上流へ遡る
鳴虫沢出合から覗くと滝が見える 右岸から見るとまさにすり鉢状 柱状節理の4m滝
3m滝の釜をへつる 2段滝は右岸を高巻く 可愛らしいナメコ
2段6m滝 湾曲した柱状節理の地層 シシ滝20m
シシ滝を斜めから見る ロープで確保し登る 沢に大岩が折り重なる
倒木の架かるCS4m滝  正面に見えた南石橋 近づくと見事なアーチ橋
真下から見上げる 二俣(手前が右岸枝沢で奥が本流) 本流7m滝の残置シュリンゲ
左岸から高巻く 奥の二俣 左が家形山(890m)で右が910mピーク
尾根の踏み跡 三神歩道のプレート 表示板を拾って撮影
三方倉山(971.1m) 下る途中で見えた大東岳 磐司岩

行動記録
 10日は天気が良いとの予報。Kさんもちょうど休日なので、2人で沢登りに行くことにした。行き先は初めて沢登りする二口山塊の鳴虫沢。二口山塊とは宮城・山形県境の二口峠周辺の面白山・大東岳・南面白山・山形神室・仙台神室等の山々を指す。一番高い山が大東岳の1,356mだが、磐司岩(ばんじいわ)として知られる巨大な凝灰岩の岩壁が連なるなど、変化に富んだ山域となっている。沢は「天国のナメ」として知られる大行沢があり、日帰りできる沢も多いので、この辺りの沢をホームコースとしている山岳会もある。また鳴虫沢の枝沢には南石橋(みなみしゃっきょう)という天然の石橋があり、それを見たいという目的もあった。
 青空が広がり穏やかなので、この時期の沢登りとしては申し分ない天気だ。秋保温泉を通り過ぎ山形県境に向かって走ると、道は二口林道へつながり姉滝の表示板があるので、その手前の駐車スペースに車を止める。国指定天然記念物になっている姉滝を見るための道を下ると二口沢だ。二口沢を遡るとほどなく左から鳴虫沢が合わさる。出合から鳴虫沢を覗くと数十m先に4m滝が見える。他の記録を見ていたのでこの滝は登れないと知っていたが、一応近くまで見に行く。滝の高さは4mほどだが、滝と釜をすり鉢状の立った壁が囲んでいる。出合いまで戻り踏み跡のある右岸から巻く。
 沢に戻ってすぐ岩が柱状節理になっている倒木の架かる4m滝。柱状節理の岩がちょうどよいホールドスタンスになり容易に直登。沢の傾斜は緩く穏やかで幅も狭いが、ナメと釜が交互に出てくる。流倒木がやや目立つ印象。4m滝から10分ほどで小さな釜を持つ3m滝。夏なら直登だが、今日は釜に落ちないよう左からへつる。秋も深くなってくると沢の岩にもヌメリが出てくる。岩質にもよるがかなり滑りやすいので慎重さが必要。沢シューズといえど容易に滑ってしまう。続く3mナメ滝を越えると、手前3m奥が7mの2段滝が現れる。7m滝は直登が困難なようで、3m滝を登り左岸から巻いている記録もある。ヌメリのある岩で無理することはないので、右岸を登るとほんの数分で巻くことが出来た。
 歩いているとムキタケとナメコがあったので採取。この時期の沢にはこんな楽しみもある。スラブ状の右岸から伝い落ちる水を見ながら、沢はS字状にナメと小滝が続く。正面に草付きのスラブが見え、沢はここで直角に曲がる。段差程度の小滝が続くが、なるべく濡れないように側壁をへつりながら歩く。逆層のヌメリのある岩のわずかな摩擦を頼りに歩くのは難しい。次に現れた普段なら何ともない2段6m斜滝も、滑らないように慎重に足を運ぶ。この滝の先で沢は左に曲り左岸は柱状節理になっているが、地層が弧を描いて曲げられている様がなんとも見事。
 釜のある3m滝を左から越えるとすぐ、鳴虫沢で一番大きなシシ滝20mが現れる。高さがあるが滝の傾斜がある程度寝ているので、フリーで直登が可能という。実際近寄ってみると登れそうに見える。しかし今日はヌメっている岩に不安があるので、中段まで登ってからロープを出すことにした。登り始めるとやはり滑りそうでいやらしい。ハーケンと木でランニングビレイ2箇所を取って登り、立木に支点を取ると続くKさんを確保する。ロープを出したのでシシ滝の通過に30分ほど費やす。この滝も夏なら快適なシャワークライミングが出来るだろうが、高さもあるので安全のためロープで確保したほうがいいだろう。
 シシ滝の上はがらっと渓相が変わり、苔むした大岩が堆積している。岩の下に潜ったり岩の上を伝い歩いたりすると、自分が小人になったような気持ちになる。20分ほどで大岩帯を抜ける。さらに進むと右岸から枝沢が細い滝となって落ち、チョックストーンの4m滝がある。この滝は右岸に上手い具合に架かっていた10mほどの倒木を伝って登る。そろそろ南石橋も近いはずと右側に注意しながら歩くと、沢が左に曲がるところで進行方向正面にその姿を現した。葉が茂っているころは見落としてしまう場合もあるようだが、落葉したこの時期は見つけやすい。南石橋は造ったように整った形で、自然の造形の妙には驚くばかりだ。二口山塊にはこのような石橋が何箇所かあり、この南石橋の他にも、北石橋、ムジナ石橋などがある。南石橋の沢下まで行くと登れそうだったので沢を登ってみた。近くで見ても見事なアーチ橋だ。脆い岩質なので懸垂下降で降りる。登った自分が言うのもなんだが、南石橋は下から見るだけにしたほうがいいだろう。南石橋から沢に降りると、ちょうど日が当たり暖かいので昼食休憩とする。
 休憩後歩き始めてすぐ沢幅が1mほどに狭まり、その先の崖から2本の沢が細い水流で水を落としている。手前は右岸からの枝沢で奥が本流となる。そうは見えにくいが二俣ということになる。本流の滝に近寄ると手前に3m滝で奥にほぼ垂直の7m滝。ここの岩はもろいコンクリートのようで、掴んだホールドもいつはがれるかわからない。残置ハーケンに長いシュリンゲがあったが、体重を掛けるとボロっときそうで信用できない。フリーで左から登ってみるがかなり微妙で、中ほどでセミになってしまう。冷たい水で指先がかじかんできたので、直登を諦め巻くことにする。少し戻って左岸からの高巻きは15分ほど。沢に戻ってほどなく左から枝沢が合わさる。奥の二俣としておこう。本流を詰めれば上に見えている稜線に突き上げるだろうが、日の短い晩秋なので早めに下るため左の枝沢を詰めることにする。
 枝沢に入るとすぐ二俣だったので左に入る。登っていくと右斜面の倒木にビッシリとキノコが生えているのが目に入った。ナメコだ。既に傘が開いて大きくなっていたが、ナメコに変わりはない。20分ほどかけてていねいに採取する。尾根を目指して詰めていくと沢形がハッキリしなくなり、スラブ状になったので左に逃げる。ブナの黄葉も終わり、すっかり葉が落ちたこの時期は見通しが利くので、途中のルート修正も容易だ。尾根には明瞭な踏み跡があり、東に見える家形山へ向かう。この踏み跡は登山道ではなく営林署の作業用のようで、途中の立木に営林署のかなり古いプレートがあり、三神歩道と書かれているのが読み取れる。家形山には家形「峰」との表示板。山の呼び方はいろいろだ。その下には三神「林道」と書かれた表示板が落ちていた。東にはきれいな三角形に三方倉山が見える。そこまでの道は無いが、やぶ漕ぎして歩く人もいる
 家形峰からは姉滝までは約1時間の下り。途中の細尾根からは大東岳と磐司岩の眺めがいい。転げ落ちそうな急坂を下れば姉滝は近い。二口沢を渡って車に戻ると本日の沢登りも無事終了。磐司山荘で熱い湯(600円)にゆっくりと浸かってから帰路に着く。帰ってからのナメコ汁が楽しみだ。
 鳴虫沢は朝早めに出て適当なところで右岸尾根に上がれば、昼までに遡行終了することも可能だ。今回は南石橋やナメコ採りで遊んだが、最初からそのつもりで余裕を持って入るのも楽しいだろう。夏は随所にある釜で水遊びも面白い。念のため30mロープは装備に加えておく方がいいだろう。(K.K)

溯行図
図:熊

トラック


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