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No.4658
石筵川
安達太良山・阿武隈川五百川支流
山行種別 無雪期沢登り
いしむしろがわ 地形図

トップ沢登り>石筵川

山行期間 2012年7月9日(月)
コースタイム 石筵登山口駐車場(6:35)→銚子ヶ滝入口(6:50)→銚子ヶ滝降口・滝往復(7:11,7:25)→入渓点(7:29,7:39)→15m2段滝(8:46)→7m滝(9:23)→12m3段滝(9:41)→8m滝(10:04)→二俣(11:22,11:38)→奥の二俣(11:41)→ヤブ(12:08)→登山道(12:35,12:51)→和尚山分岐・三角点往復(13:59,14:12)→渡渉(15:18)→銚子ヶ滝入口(16:00)→石筵登山口駐車場(16:13)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
銚子ヶ滝入口と東屋 銚子ヶ滝(48m) しばらくはゴーロ歩きが続く
あるものは何でも利用する 大岩の間を歩く Tさんは安心して見ていられる
2段15m滝 右壁をフリーで登る 倒木の掛かる2段目も右から登る
緑が眩しいナメが続く ナメ ナメが続く
7m滝  4mとトイ状の複合滝 10m斜瀑
やや流れが細くなった 二俣 沢にヤブが被ってくる
和尚山 左から船明神山、鉄山、安達太良山 和尚山の分岐
ハクサンシャクナゲ ゴゼンタチバナ 登山道の石筵川渡渉点

行動記録
 石筵川(いしむしろがわ)は安達太良山とその西にある船明神山を源とする沢で、渓相が美しいことから沢登りの対象とされている。「日本の渓谷'96」にも紹介されており、山岳雑誌に取り上げられることもあることからか、それなりに遡行者がいて記録も豊富な沢だ。
 今日のパートナーはTさん。彼女の沢登り経験はそれほど多くはないが、身体能力が高く何でもこなす彼女のことだ、初級の沢とされている石筵川はなんの問題もないだろう。とはいえ自分も石筵川は初めてであり、昨日の沢登り教室は水量が多くて中途退却しているくらいなので、1日経過したとはいえ少々心配ではある。いずれにしても実際に行って見なければわからないと、車中泊の道の駅つちゆを後にして石筵川へと車を走らせた。
 石筵川に入るには、まず銚子ヶ滝を目指すことになる。R115から母成グリーンラインに向かう道に入り、約10kmほど走ると、銚子ヶ滝入り口の案内板がある。しかし、道路脇の林の中に少し入って設置してあるので、この時期はなんとも見つけにくい。自分も通り過ぎてしまい戻りながら見つけた。案内板の道路向かいになるカーブの内側には、10数台は駐められそうな駐車場がある。
 支度をして案内板から斜面を登り始めると、すぐ舗装道路に出る。この道は車で走れるのだが、まだ朝早いので石筵ふれあい牧場のゲートが開いておらず、車では入ってくることが出来ない。また遅くなるとゲートは閉まってしまうので乗り入れはしない方が無難だ。
 しばし舗装路を歩くと右側に、また銚子ヶ滝入り口の案内板と東屋があり、数台分の駐車スペースもある。歩き始めてここまで15分だからたいした距離ではない。案内板に従い銚子ヶ滝への道に入る。林の中を歩き安達太良山への登山道分岐を過ぎると、銚子ヶ滝の降り口がある。石筵川に入渓するのは銚子ヶ滝の上流からなのだが、せっかくなので見に降りることにする。
 酒を入れる銚子に形が似ていることから、その名前が付いたという滝を見てなるほどと納得。48mの高さがあるという。登り返して登山道に戻り、沢へと下りていく。和尚山への登山道は石筵川を渡渉し対岸へと向かうが、その少し手前から入渓することにした。ハーネスを付けヘルメットを被ると、気持ちは沢登りモードに切り替わる。
 遡行を開始してしばらくは緩やかな流れでゴーロの沢歩きが続く。水はきれいであまり大雨の影響は感じられないが、沢の規模からするとやはり水量は少し多めのように感じる。自分は少し水が冷たいと思ったが、Tさんは感じないという。こちらは素足に沢足袋で、あちらはネオプレンソックスに沢シューズだから当たり前ともいえる。そのうち大岩が増えてきて数mの小滝も現れる。つるんとした大岩が多く、2m程度の小滝といえど簡単に登れないものもある。わざと難しそうなラインを登ったりして、楽しみながら遡行を続ける。
 Tさんは沢登りの経験は少ないようだが、バランスが良いし手足も長いのでひょいひょい登ってくる。遡行開始して1時間以上になり、滝はまだかと思い始めた頃やっと大滝が現れる。ここは2段滝で20mとの記録が多い。しかし自分には15m程度に思える。あんみつさんはクライミングもやっているのでトップを譲ると、右壁からフリーで登るという。気を付けてと声をかけるやいなや、スルスルと登ってしまった。自分も登り始めるが、中段の小テラスに体を乗せてから右上に乗り上げるところが、左の岩がハングしていて体を右に乗り出さなければならず、ちょっといやらしいと感じた。他の記録でも「フリーで難なく」や「ザイルを出して」と色々なのだが、どうしようかと思うのなら素直にロープを使った方がいいだろう。中段に残置ハーケンとシュリンゲがあるが、見たところかなり古いようなのでアテにしない方がいいだろう。上段も右から楽しく登ることが出来る。滝の上からは長いナメが続く。滑りやすい岩もあり、水流の強い日は気を付けたい。苔の緑が水流の白に映えて美しい。
 小滝以外の滝はすべてTさんにトップをやってもらう。滝登りは自分でラインを考えて登った方が楽しいからだ。とはいえもう難しい滝は現れない。7m滝は水流右を軽快に直登。4mとトイ状の複合滝は好きなところを歩く。10m斜瀑はシャワーも楽しそうだが、水量の多い今日は右から登る。この後は小滝がいくつか現れるだけだ。流れは徐々に細くなり、源頭に近づいたことをうかがわせる。C1,380mで二俣になり、左が船明神へと突き上げる本流で、右が安達太良山の南側に出る支流だが、水量は1:1のように見える。今日はいくらかでも下山所用時間を短縮するため、右へ入ることにしている。時間もほどよいので、二俣で昼食休憩とする。周囲にはネマガリダケが多いが、さすがにもうタケノコは伸びていた。先月下旬ならまだ採れただろう。
 右俣へ進むと少しヤブっぽくなってくる。すぐ奥の二俣になりまた右へ入る。やがて水流は涸れ、屈んでヤブを潜るようにして進む。ついには土壁に突き当たり、その先は不確かな窪程度になった。稜線の登山道に出るため右手のヤブに突入する。ネマガリタケが密生したヤブはなかなか手強い。大汗をかきながらヤブこぎしていると、和尚山が背中に見えてきて方向がずれていることに気づく。いつの間にか安達太良山頂方向に向き、登山道と平行に登っているようだ。右に方向を修正してやっと登山道に飛び出た。ヤブこぎした時間は30分弱だったが、上手くルートを取ればもっと短い時間ですむだろう。
 登山道に出てやれやれと沢靴を脱ぐ。小休憩の後、和尚山を目指して稜線歩きを始める。こちら側から見る安達太良山や船明神山の景観は、いつもと違って新鮮な感じがする。安達太良山は百名山ということもあり登山者が多いのだが、この和尚山からのルートは道も細く登山者が少ないことをうかがわせる。シャクナゲやゴゼンタチバナなど、花を見つけては撮りながら歩く。快晴だが気温は思ったほど上がってないので助かる。枝が被っていて頭や腕を何度も擦ったので、歩くときは下ばかりでなく上にも注意が必要だ。
 稜線を歩いて目指した和尚山は、ピークがはっきりしない山で山名板等も見あたらなかった。地図を見ると登山道の分岐の近くが山頂のようだ。分岐に下げてあった案内シートに、真っ直ぐ行くと三角点とあったので、自分だけ三角点を見に急いで往復した。分岐からは下り一方。しばらくは岩が多い道なき道だがルートは明瞭。勾配が緩くなると森の中を気持ちよく歩けるが、これがまた長く感じる。沢音が聞こえてくると、石筵川の渡渉も近いとわかる。
 石筵川でひと息ついて沢水を飲む。後は今朝歩いた道を戻るだけだ。Tさんは途中でフキとミズにタラの葉を採り、重いザックを担ぎご満悦。安達太良山域の放射能は低く、今年はタケノコ採りもOKだったくらいなので問題なし。駐車場に戻り今日の沢登りを終えた。Tさんは今日誰にも会わなかったことに驚いていたが、東北の山の特に平日はこんなもんだよと答える。帰りは温泉に入って汗を流してから、東京へ帰るTさんと別れた。
 石筵川はなかなか美しい沢だった。15m滝が核心といえるが、ロープ確保するなど配慮すれば初級者も楽しい沢登りができるだろう。ただし、今回より水量が多い状況になれば、格段に難しくなりグレードが上がるのはもちろんである。石筵川は全体の行程が長いので、早出を心がけ時間に余裕を持つことと、遡行者にある程度の体力が必要となる。なかには沢泊まりを楽しみながら、2日間で遡行するパーティもあるようだ。二俣を右か左かは下山ルートの取り方にもよるが、車が2台あれば沼尻登山口に1台をデポすれば楽が出来る。今回は源頭まで詰めたが、そこまで登らずに枝沢を利用し、早めに和尚山への稜線に上がる選択肢もある。過去の記録を見ると、源頭のヤブこぎは15分から1時間半とかなり幅がある。ヤブこぎは体力勝負であり、何よりルート取りが重要ということだろう。なお、6月上旬あたりに二俣から左俣を登ると、雪渓の上を歩いてヤブこぎなしに稜線に出られたとの記録もある。(K.K)

溯行図

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