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No.4682
保呂内沢西ノ股沢
虎毛山塊 江合川支流
山行種別 無雪期沢登り
ほろないさわにしのまたさわ 地形図

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山行期間 2012年9月17日(月)
コースタイム 鎌内林道駐車場所(7:09)→保呂内沢(7:24)→西ノ股沢出合(8:25)→二俣(11:21)→コル(12:19,12:37)→西ノ股沢出合(15:33)→入渓点(16:42)→鎌内林道駐車場所(17:01)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
鎌内林道の盗人滝への標識から歩く 保呂内沢に入渓 浅瀬のような沢を歩く
支沢のスラブ滝 水量はないが水が綺麗だ なかなか難しいへつり
西ノ股沢の出合い F1(15m)は右岸を高巻く 気持ちの良い森の中を歩く@
気持ちの良い森の中を歩くA V字の廊下を歩く F2(下段5m・上段4m)
F3(3m)は容易 F4(8m)が現れる 果敢に登る加○さん
F5(7m) F6(3段15m)の2段目は倒木で越える F7(6m)は左右どちらからでも直登可能
F8(10m) F8(10m)上部から 勾配が急になりどんどん高度を上げていく
空が近づいてくる あと一息 コルに到着
ヤブ斜面を下降する 滝の右岸を巻き下る 水は完全に潜ってしまった
2段滝を懸垂下降 右岸から下る

行動記録
 宮城県と秋田県に跨る虎毛山塊には魅力的な沢があるようだが、3年前に初めてテノ沢に登って以来、これまで行く機会がなかった。今回白峰会のパーティーに加えてもらい、ようやく行けることとなった。
 古川インターを降り、国道47号を西へ40分ほど車を走らせると鬼首地区に入る。周囲の山並みは上の方がガスに隠れていて、いつもは目立つ禿(かむろ)岳の山頂も見えない。鬼首スキー場を左に見て進み、右に折れ県道248号に入る。しばらく進むと鎌内沢の橋を渡ってすぐ左に入る舗装路が鎌内林道だ。鎌内林道は途中で幅が狭くなり未舗装路となるが、一般車の通行に支障が無い程度には管理されている。
 やがて右カーブのところで、盗人滝への標識があるところが保呂内沢への道だ。鎌内沢の手前まで(本格4駆なら保呂内沢までも)車で行けるようだが、たいした距離でもないし道路状況もわからないので、カーブ手前の道路脇に車を置いて歩くことにする。
 歩き始めるとすぐ鎌内沢で、盗人滝はここから1キロ弱上流にある。鎌内沢を横切り歩いていくと、やがて保呂内沢が現れ入渓する。既に気づいていたが、やはり水量が少ない。9月に入ってからも平地では30度以上の日が続き、まともな雨も降っていないので、山はカラカラなのだ。さすがに本流は流れがあるが、林道を歩いている途中に見た枝沢は涸れ上がっていた。
 保呂内沢は平坦で幅があり、広がった水流はゆっくり穏やかに流れている。両岸と沢はあまり高低差が無いところを見ると、増水時でも水深はそれほど上がらないのだろう。樹林地の中を流れる沢を気持ちよく歩いていく。左からスラブ滝8mで支沢が落ちるが、水は岩の表面を濡らす程度しか流れていない。
 ナメっぽくなると、岩に付いた苔の緑が美しい。水流による浸食を受けた凝灰岩は、落差もないのに深い釜があったりして遡行するには面白い。釜と小落差が連続する箇所では、砂岩なのでフリクションはあるが、砂岩ゆえに凸凹が少ないのでへつりが微妙だ。落ちれば深い釜へドボンだが、なんとかクリヤし後続にはお助けヒモを出す。Nさんは釜に落ちてしまったが、ロープで強引に引き上げた。小さいとはいえ深くて渦巻いている釜なので、ここは注意したいところだ。
 やがて二俣が現れる。左から合わせるのが西ノ股沢だ。白っぽい岩屑に覆われた保呂内沢と対照的に、西ノ股沢は褐色のナメで合わさる。他の記録を見るとここは小さな段差で保呂内沢に合わさるようだが、ほぼ平坦になっている。どうも岩屑で保呂内沢が高くなったようだ。
 沢の両岸がV字状に狭まってくるとF1が現れる。高さは15mほどだが、全体的にツルッとしていて直登は無理だ。少し戻って右岸からブッシュ頼みに高巻く。F1の上は両岸が広がり、開放的な森の中は気持ちの良い空間だ。再びV字状に狭まり、幅4〜5mほどの廊下状になる。廊下の突き当たりにF2が現れる。5mと4mほどの2段滝だ。ここも直登はできないので、右壁のブッシュ伝いに2段一緒に高巻く。F1もF2も小さく巻けるので時間はかからない。F2の上はさらに沢幅が狭まり、まるで樋を歩いているようだ。へつりで滑りやすいところもあり、Sさんが転倒し捻挫してしまうが、歩行は続けられそうでホッとする。
 F3(3m)は右から容易に越える。V字のゴルジュが続くと、手前に段差のあるF4(8m)が現れる。この滝も滑らかで取り付きがちょっと難しい。登るラインを見ていたKさんが右から登り始めたが、自分は左のラインを登り始める。登るラインはひとつではないのが面白いところだ。岩の凹凸は細かいので慎重に登る。後続の2人はロープで確保した。F5(7m)では3人が倒木も利用して左を登り、Kさんだけが右から登り中段でバンドを左へトラバースして登った。標高700mまでくると、前方に稜線が見えてきたがまだまだ遠い。それにしてもなかなか標高が上がらない。勾配が緩やかな地形なので、歩いても歩いても上がらないのだ。
  沢に詰まった倒木に登ると、それがF6(3段15m)の1段目だった。2段目も倒木を利用して登り、3段目は右から小さく巻く。倒木がなければ2段目は難しかっただろう。F7(6m)も滑らかな滝だが、少し寝ていてフリクションも良いので、左右から登ることができる。F8(10m)はSさんが右から、自分は左から登り上部で右にトラバースして登る。落ち口近くがちょっといやらしいがクリア。後続2人はロープで確保する。
 沢は勾配のあるナメが続くようになり、稜線に向かって高度を上げていく。源頭部が近づいてきたのだ。岩がヌメって滑るので注意が必要だ。標高770mほどで現れた二俣は右に入る。今日は山猫森のすぐ東のコルに出るつもりだ。その後も分岐は現れ、2度右へと進む。コルも近くなり最後と思われた分岐は左に入ったが、もはや右でも大差はないだろう。沢形が無くなりヤブに突入する。5分ほどで開けたところに出たので休憩とする。周囲はブナなどの手つかずの森が広がっている。展望はないが深い森の中は気持ちの良い空間だ。計画では13時に稜線としていたので、まずまずの順調に進めたことになる。
 さて、下りは保呂内沢を下降する計画だ。周囲は登山道も何もない山なので、沢を下降するしかないのだ。ほぼ真北に斜面を下っていく。下りのヤブこぎは重力が味方してくれるので楽だ。しかし笹は大変滑りやすく、何度も滑ってしまう。20数分ヤブを下ると左に沢筋が見えてきて、標高820m辺りで保呂内沢に降りることができた。ふと辺りを見るとミズが群生していて、ミズコブが一杯付いているではないか。しかもかなり大きい。しばしミズコブ採りをさせてもらったのは言うまでもない。岩を湿らせる程度しか水の無い沢を下る。5mほどの滝があったが右岸から巻き下る。ウスヒラタケを見つけたので採取。
 岩屑だらけになると水は完全に潜ってしまい、ガレ場歩きが続く。歩きながらミズコブ採りも続ける。標高680m辺りでまた水流が現れる。支沢を合わせては少しずつ水量が増えていく。釜のある2段滝(4m・6m)が現れ、上段は懸垂下降。下段を自分はクライムダウンし、後続は念のため懸垂下降。さらに下降を続けると右から西ノ股沢が出合う。今朝微妙なへつりでクリアした釜は、同じラインと右岸を懸垂での巻き下りの二手に分かれ下降。あとはもう入渓点までひたすら歩くのみ。入渓点でひと息ついてから、林道を車まで戻った。9月も中旬の沢登りというのに蒸し暑かった。下界は今日も30度を超えていたようだ。まだ夏は終わっていないのではと錯覚するような暑さだが、思ったより早く薄暗くなる山中が、季節は既に秋であることを教えてくれる。車に乗ると虎毛山塊を後にした。
  保呂内沢西ノ股沢は、1日で歩くにはボリューム十分の沢だ。全行程14.9km中、道を歩いたのは2kmほどで、他は沢かヤブを歩いたのだ。始めから沢泊まりの計画なら別だが、日帰りで遡行する場合は、なるべく早くスタートすることが必要だ。今回の我々の行動時間は、計画では9時間半としていたが、実際はほぼ10時間になった(平均年齢60歳のパーティーとしては立派なものだと思うが)。この行動時間の場合、何かひとつアクシデントがあれば山中で暗くなる可能性が高い。できれば前泊で早朝スタートが良いだろう。それができないから日帰りではあるのだが。沢泊まりの場合は、結構テン場適地があるので楽しめる。魚影もそこそこ見えた。できれば泊まりながら遡行してみたいものだ。なお、ロープは30mを使用し、50mは使わなかった。(K.K)

溯行図

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