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No.4692 |
湯ノ又沢右俣(ガニ沢)・赤湯又沢左俣・虎毛沢右俣 |
虎毛山塊 |
山行種別 |
無雪期沢登り |
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地形図 |
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山行期間 |
2012年10月7日(日)→8日(月) |
コースタイム |
10月7日 林道駐車地点(8:39)→湯ノ又沢右俣入渓(8:40)→二俣・840m(9:24)→登山道(10:34)→赤湯又沢左俣下降点(11:23)→二俣・750m(12:53)→野営地・680m(13:19)
10月8日 野営地(7:19)→虎毛沢出合(8:30)→亀甲模様・663m(11:00)→二俣・735m(12:15)→登山道・1,220m(14:43)→林道デポ地点(16:33) |
写真(7日) |
写真は拡大してみることが出来ます |
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駐車地点から湯ノ又沢右俣(ガニ沢)へ下りる |
3m滝 |
ナメが始まる |
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ナメが続く |
右から枝沢を合わせる |
2段4m滝 |
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850mの二俣 |
源頭部を詰める |
稜線を下降点へと移動する |
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途中で見つけたブナハリタケ |
下降点 |
ウォータースライダーのようなナメを下降する |
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作り物のように平滑なナメ |
出合手前の3m滝を下る |
2条滝6m |
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あちこちから湯気が上がる野営地 |
河原の湯船(土木工事途中) |
焚き火は見ているだけで和む |
行動記録 |
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10月7日
虎毛山塊の奥深くに野湯があるという。Mさんのブログで知ってからというものずっと気になっていたが、なかなか行く機会を作れないでいた。今度白峰会の面々がそこへ行くというので、一も二もなくパーティーに入れていただいた。白石を午前5時に出発。いつものとおり前夜バタバタと準備したので、ほとんど寝ていないものだから眠い。初日の沢に厳しいところはないようなので、まあ大丈夫だろう。下山時のデポ車を置く予定の虎毛山登山口に向かうと、赤倉橋手前の分岐に看板があり、林道が崩れているので進めないとのこと。橋の手前に既に5〜6台の車が駐車していた。しかし、登山口から下ってきた車があり、聞くとしばらくは進めるとの情報。ありがたいとばかりに車を進め、赤倉橋分岐から800mほど行ったところにT車をデポし、Y車で湯ノ又沢へと向かう。今日はMさんの3人パーティーも野湯を目指しており、野営地で合流する予定としている。
R108から右に折れ、湯ノ又沢沿いの道を登っていくと、湯ノ又大滝の看板はあったが湯ノ又温泉が見当たらない(帰宅後調べたら、昨年廃業し建物も解体されたとのこと)。あれ?いつの間にか過ぎてしまったのかと思いながら進むと、駐車スペースがあり登山道の標柱がある。少し手前のスペースにも車があり、沢登りらしい男女2人パーティーが準備していた。もしかすると目的地は同じかもしれない。ところで湯ノ又沢はこの駐車スペースの少し手前で二俣になっていて、今日遡行するのは右俣になる。登山大系にもこの湯ノ又沢右俣が紹介されている。しかし、現地の標柱には「ガニ沢」とある。いろいろ調べてみると、やはり湯ノ又沢右俣をガニ沢と呼ぶようだ。また、別な標柱には「湯ノ又ガンジャ口」とあるが、これは登山口の名称が「ゆのまたがんじゃぐち」ということらしい。ガニサワ→ガニジャ→ガンジャと変化し、湯ノ又沢ガニ沢の登山口、つまり湯ノ又ガンジャ口となったのではないだろうか(あくまでもワタクシの推定ですが)。標柱から林道の右手に入るとすぐガニ沢だ。登山道は沢を渡り先へと進むが、我々は沢を忠実に詰める予定。少し沢を登るとナメになり、その後はずっとこれでもかというほどナメが続く。岩のことは詳しくないが、おそらく凝灰岩であろう岩はフリクションが最高で、まるで傾斜の緩い舗装道路を歩いているようで、効率よく距離を稼ぐことができる。
ガニ沢の滝は少なく、あっても小滝ばかりで最高は2段4m程度。もちろん滝を越えるのは容易い。地図を見ると湯ノ又ガンジャコースが沢を2度横切っており、気を付けて見ていたが1箇所しか見つけられなかった。804mで右の一段高いところから枝沢を合わせるが、真っ直ぐ水流のある方を進む。850mの二俣も水量の多い左沢へ進んだが、後でトラックログを見ると右沢の方が下降点に近かったようだ。岩は黄土色だが、模様のように黒い色が付いている。沢幅が狭まり源頭の様相を呈してくると、高松岳の山頂が見えてくる。沢の傾斜が増し枝が被ってくるが、順調に高度を稼いでいく。そのままでは高松岳山頂へ詰め上がりそうになったので、右手のヤブに突入し稜線の登山道を目指す。ネマガリダケの激ヤブを漕ぐこと15分ほどで登山道に出た。
やれやれとひと息ついていると、登山道を下からMさんパーティーが登ってきた。聞くと我々の後からガニ沢を遡行し始めたものの、途中から湯ノ又ガンジャコースに移って登ってきたという。今朝の2人パーティーも相前後して同じルートをたどり、既に赤湯又沢の下降をすべく移動したようだ。高松岳をピストンするMさん達と別れ、我々も赤湯又沢の下降のため登山道を東へ向かうこととした。沢は山腹を登るに従い、扇状に何本もの枝沢に分かれることが多い。そのどれを下降に使うかは、地形図を読み、記録のあるものは参考にして決めることとなる。赤湯又沢もそうなのだが、リーダーのYさんにはあたりをつけた枝沢があり、そこへ向かってどんどん歩いていく。GPSなどなくても、地形図と高度計と実際に見える地形でピタリとその場所を特定できるのは、野性のカンと経験の賜物だろうか。ここだという地点から下降を開始すると、すぐ沢形が現れてきた。やがてナメになり、スリップに注意しながら下降を続けるが、たいした滝もないので順調に進むことができる。790mあたりで、左岸から温泉が湧いているのを見つける。左岸が崖で迫る3m滝で右俣と出合う二俣。ロープを1度も出さずにここまで下降することができた。右俣は沢の石が赤く、水温も暖かく感じる。場所によってはあたりの空気もモワッとした感じがするのは、温泉水が流入しているからではないだろうか。2条の6m滝を降りて少しすると、左岸から湯気が上がっている。
ここが本日の目的地だ。あちこちから蒸気を吹き上げ、ボコボコと沸騰しているところもある。平地にタープとツェルトを張っていると、Mさんのパーティも到着した。さて湯船はというと河原にその名残があったが、とても熱くて入れるものではない。沢から水を引く水路を作り、石を積んで砂を掻き出すなど土木工事をすると、何とか入れる状態にはなった。さらにMさんが幕営地の東側に、適温の流れを見つけて小さいながらも入浴できる程度に掘った。こちらの方が熱からずぬるからず、そのままで何ともちょうど良い湯温。いつまでも入っていたくなるほどで、ついつい長湯してしまう。野湯には結局この日の夜に3回、翌日朝に2回の計5回も入ってしまった。他の記録を見ると、もう少し下流にも入れるところがあるようで、さらにはもっと上流の右俣には崩壊した小屋跡があり、そこでも野湯を楽しめるようだ。是非また機会を作って訪れて見たいものだと思う。 |
トラック |
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写真(8日) |
写真は拡大してみることが出来ます |
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朝日を浴びてのゴーロ歩き |
もうもうと湯気を立てる右岸の温泉 |
斜面の上でも温泉が出ている |
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昨日とはうって変わった底抜けの青空 |
虎毛沢出合の滝を降りる |
白い砂に清流が美しい |
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左岸のスラブ |
今度は右岸のスラブ |
8m斜滝(593m) |
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4m滝 |
ナメの穏やかな流れ |
夏なら泳いで取り付くのもいい |
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ところどころへつりがある |
3m滝(633m) |
淵では落ちないよう慎重に |
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ナメの中の深みが美しい |
4m斜滝(658m) |
660m辺りから出てくる亀甲模様 |
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模様を楽しみながら遡行する |
虎毛山が見えてきた |
二俣(735m) |
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7m幅広滝 |
右から登る |
すぐ上にある6m滝 |
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左に支沢の10m滝を見て右の本流へ |
8m2段斜滝 |
8m滝にKさんが取り付く |
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940m辺りから斜度が増してくる |
6m滝は上部がヌメって嫌らしい |
2段6m滝 |
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2段10m滝 |
水が涸れてくる |
稜線登山道1220m地点に出る |
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紅葉の虎毛山 |
長い歩きももうすぐ終わる |
トラの滴を飲んでほどなくゴール |
行動記録 |
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10月8日
寝不足だったことも手伝い朝までぐっすり。自分はスリーシーズンのシュラフで寝たが、野営地は温泉のせいで地温が高く、シュラフカバーだけで寝た人も寒くなかったようだ。すっきり気持ちよく目覚めると、さっそく朝風呂に入る。昨日から通算5回は入ったが、それほど野湯は気持ちが良い。10月上旬というのも、山のいで湯にはベストの気温だったのかもしれない。今日は赤湯又沢を下降し、出合から虎毛沢を登るという計画だ。昨日のルートを戻るという、Mさん・Aさん両パーティーに別れを告げ出発する。
出発してすぐ、右岸で盛大に湯気が上がっているのが目に入る。ここでも野湯ができるかと思ったが、温度調節が難しそうだ。もう少し下ると、また右岸の今度は上の方で盛んに湯気を上げている。ここは一段上がったところが良いテン場になりそうだ。時折ナメがあるが、もっぱらゴーロ歩きが続く。ゴーロにも飽きてきたなと思う頃、両岸がぐっと狭まり右岸をへつるようにして進むと虎毛沢の出合だ。
赤湯又沢は4m滝で虎毛沢に落ちているので、右からクライムダウンして虎毛沢に下りる。この出合のところだけ喉のように狭くなっていたが、すぐ明るく開けた河原になる。地形図からもわかるとおり、虎毛沢はゆったりと穏やかな流れが続く。沢床に白っぽい砂が敷き詰められたところもあり、気分はのんびりモード。透明度の高い流れに癒やされる。しかし先は長いのでゆっくりはできない。左岸にスラブを見てしばらくすると、今度は右岸にスラブが現れる。
出合から1時間ほど河原歩きが続き、少し飽きてきた頃にようやく滝が現れる。8m斜滝だが容易に越すと、すぐ2m滝、4m滝と重なり、いずれにも釜がある。やがてナメが現れ、以降大きな滝こそ無いものの、小滝や淵を挟みながら変化を繰り返していく。
淵があらわれ、寒くはないがドボンは嫌なので慎重にへつる。流れは穏やかなので落ちても心配はないだろう。淵のへつりは何度もあったが、幸い1度も落ちることなく越えることができた。この辺りの岩は白い。浸食されやすいのか、ナメの中が深くえぐれているところが多い。白いナメ床の中に緑の深みが蛇行して美しい。その深みにイワナが悠々と泳いでいる。このイワナを釣ることができたら愉快だろうと思う。
標高660m辺りで沢床に、虎毛沢の特徴である亀甲模様が現れてきた。どうしてこんな模様ができるのだろうか不思議だ。亀甲模様は数百m続いた。やがて沢が左へ曲がり前方が大きく開けると、虎毛山の山頂が見えてきた。小滝をいくつか越えしばらく歩くと二俣(735m)になる。虎毛沢はここで右と左に分かれる。水量は同程度だが、稜線の登山道へは右俣から詰める。
二俣からしばらく歩き小滝をいくつか越え、標高800mを過ぎた辺りから斜度が増してくる。沢が左に90°曲がると幅広7m滝。ちょっと嫌らしいのでロープを出し、Tさんトップで右壁から登る。この滝で今回初めてロープを使う。そのすぐ上の6m滝はフリーで登る。正面に支沢の10m滝を見て、右へ曲がり斜滝を登る。以前Yさんが来たときは、間違ってこの支沢の滝を登ってしまったという。なるほど、いかにも直登してみたくなるような滝だ。地形図871mのところで右に支沢を見ると、8m滝が現れる。ここの岩も滑りやすそうなので、Kさんが右からロープを引いて登る。その間に左から小さく巻いてみたら登れてしまったが、やはり滑りやすく嫌らしいのでロープが正解だろう。右から小さく巻いた記録もあるようだ。
源頭に近づいてくると沢は、滝に滝を重ねてどんどん標高を上げていく。まるで滑り台のようにナメが続いているところでは、両側の草付きもブッシュが乏しい。フリクションに頼って登ったらスリップしてしまい、かろうじて僅かなホールドに爪をかけて止めたがかなりヒヤッとした。水流もかなり細くなり、伏流となったりまた現れたりするが、やがて見えなくなってしまう。途中でTさんがウスヒラタケを見つけ採取する。やがて沢形がハッキリしなくなるとヤブこぎが始まる。稜線の登山道にいる登山者の話し声が聞こえてくる。ヤブ漕ぎ15分ほどで登山道に飛び出た。標高は約1220mほど。このヤブ漕ぎでも、Yさんがブナハリタケをゲットする。
登山道から見る虎毛山は紅葉が始まっていた。山頂まで行きたかったが、さすがにそれは無理ということで、登山道を下ることにする。高松岳も見え、昨日乗っ越した稜線が見える。右手下を見れば、先ほど詰め上げてきた虎毛沢源頭部の沢筋がよくわかる。これらの山と沢を越えてきたことに、満足感と充実感を感じる。後はひたすら下る。沢靴は滑りやすく何度かスリップしたが、無事赤倉沢まで下りる。沢沿いをしばらく歩くと、デポしておいたTさんの車が見えた。しかし、なぜか湯ノ又沢に置いてきたはずのYさんの車もある。Mさんが回送してくれていたのだ。これでかなり時間と手間が省けた。感謝感謝。
今回のルートは、素晴らしい野湯を楽しめた沢旅だった。温泉と酒と焚き火があればもう何も言うことはない。こんな極楽な沢旅はなかなか無い。天候さえ安定していれば、10月末までは大丈夫ではなかろうか。しっかりしたリーダーがいることが前提だが、沢自体はそれほど難しいところがないので、初級者でも遡行可能だろう。是非ともまた機会を作って、再び訪れてみたいものだ。(K.K) |
溯行図 |
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