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No.5002
角楢沢下ノ沢 朝日連峰 荒川支流
山行種別 無雪期沢登り
かくならさわしものさわ 地形図

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山行期間 2014年8月24日(日)
コースタイム 林道終点(6:58)→角楢小屋(7:41)→入渓(7:46)→二俣(8:39)→奥の二俣(10:41)→登山道(12:05)→祝瓶山(12:31,12:53)→林道終点(14:25)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
最初の吊り橋で荒川を渡る 3つ目の吊り橋 角楢小屋
角楢沢に入渓 緑のゴルジュ 左岸の崩壊地
狭い廊下 手を広げれば付きそう 廊下出口の3m滝
下ノ沢と上ノ沢が出合う二俣 下ノ沢の2条3m滝 2段20m滝は右岸より巻く
井戸の底ゴルジュ 小滝が続き飽きない 2段15m滝の直登は各々のラインで
直登できる滝が続く ナメが現れる 沢が開けてくる
こんな岩はラバーソールに軍配 稜線が近づいてくる 右の枝沢へ進む
どんどん高度を上げる やがて水が涸れる やがて水が涸れる
なかなかの高度感 ヤブこぎ無しで登山道に出る 祝瓶山山頂

行動記録
 祝瓶山は朝日連峰の南端に位置する。三角形を為した鋭鋒で、登高意欲をそそられる端正な容姿である。その祝瓶山にはその急峻な斜面を源頭とする、短いながらも魅力的な沢が存在する。祝瓶山の沢を初めて遡行したのは一昨年で、長井側から東斜面のコカクナラ沢であった。今回は小国側から西斜面の角楢沢に登ってみることにした。この沢はあえて1泊で抜けるパーティーもあるが、短い沢なので日帰り遡行が可能だ。ましてこの週末も大気が不安定のようで雨や雷の心配もあるので、スピーディーに抜けたいところだ。コカクナラ沢もそうだったが、角楢沢も源頭部はスラブ状になり、各パーティーの記録を読んでも詰めのラインは様々に分かれるようだ。ルートファインディングの懸念はあったが、それは沢登りの楽しさでもある。
 自宅を午前4時に出発、途中でTさんと合流し五味沢から針生平の林道終点に着いたのは6時40分過ぎ。7〜8台置けるスペースに4台ほど既に止めてある。登山か釣りかはたまたキノコ採りか。準備をしていてもメジロが寄ってこない。夏の沢で心配なのはなんといってもメジロだ。大群にまとわりつかれようものなら、走って逃げるか水に浸かるしかない。メジロはお盆を過ぎると減るのだが、もう今日は心配ないようだ。7時前にスタート。朝霧はまだ残っているが、やがて晴れるだろうと思わせる天気だ。すぐに吊り橋で対岸へ渡り、荒川沿いに歩いていく。途中キノコ採り帰りの2組とすれ違うが、いずれも「ダメだ」とのこと。綱渡りのような吊り橋を渡ると40分ほどで角楢沢出合に到着。少し登って角楢小屋を見に行く。この小屋は登山もあるが、この時期は釣り人によく利用されているようで、入口の伝言板には最近の釣り情報が書き込んであった。戻って途中の踏み跡から降り角楢沢に入渓。
 穏やかな流れのゴーロを歩き始めると、数分で早くもゴルジュ状になってくる。両岸の岩には低い位置まで緑の苔が付いている。岩が花崗岩で白っぽいこともあり、ゴルジュにしては明るい印象がする。5分ほどで最初のゴルジュ帯を通過し、右岸の崩落地を過ぎると滝が出てくる。最初の3m滝を越えると沢幅が狭まり短い廊下となる。その出口にある3m滝は、両岸が磨かれた滑らかな岩で登りにくく、左岸からへつり登ったTさんにお助けを出してもらう。小さな釜や淵もあるがそれほど深くはないので、泳いで取り付くほどではない。やがて二俣に到着。遡行開始から1時間弱である。左俣が上ノ沢で右俣がこれから遡行する下ノ沢である。
 下ノ沢に進むと2条3m滝で、左岸のU字溝から登る。2m滝を越え、水流で彫り込まれた2m滝を越えると、10mほどの登れそうもない滝が現れた。そのすぐ上にも滝が見えている。2m滝の落ち口の上から右岸のブッシュ頼りに登ろうと思ったが悪い。結局10m滝手前の右岸岩を登り、ブッシュ頼りに直上してから右へトラバースして上段滝の落ち口へと降りる。15分ほどの巻きだったこの滝は、2段20mというところか。すぐ上のトイ状小滝を突っ張りで越えると、狭くうねった壁の「井戸の底ゴルジュ」だが、増水していなければ通過は容易である。その後は3mほどの滝がいくつも掛かる。沢の斜度が落ち着くと、流木などで少し荒れた印象になるが、やがて黒く輝く2段15m滝に突き当たる。黒い部分はヌメっていそうに思えたが、取り付いてみると意外に登れそうだ。Tさんは右壁から自分は水流左から登る。登り方にも個性が表れて面白い。沢は3〜5mほどの滝が続き快調に高度を上げていく。花崗岩なのでフリクションはあるのだが、水流に磨かれた部分はやはり滑りやすい。Tさんはといえば突っ張りや開脚も使いながら、ひょいひょいペタペタ登っていくが、自分は付いていけなくなり何度かお助けを出してもらう。今日の足下は自分がフェルトでTさんがラバーだが、この沢にはラバーソールの方が合っているようだ。
 小滝が多くて数えられないなと思った頃、スラブ状のナメが現れ登ると、沢が開け稜線が見えてきた。空を見上げるとちょっと雲行きが怪しい。何となく遠くの雷鳴も聞こえるような気がする。早めに下山したほうが良さそうなので先を急ぐ。ナメの連瀑を登っていくと850mで二俣になった。左の方が水量が多く本流のように見える。他の記録で「左に水量の多い支流を分ける」とあり、遡行図には右に3段15m滝があったので、見るとまさにそのように思える。ここだろうとばかりに右に進む。早く沢を抜けたいという急ぐ気持ちもあった。急な滝というかナメというか、息を切らせてちょっと滑る白茶けた岩を登っていくと、どうも上に見える稜線が思ったより右にずれているような気がする。2人で協議したが、予定の二俣より手前の枝沢に入ったのだろうということになった。戻る気もないのでそのまま登ることにする。
 源頭の様相になり斜度が増してくる。沢筋はどんどん小さくなり、草付きのスラブと岩壁が近づいてくる。そのままスラブを詰めると岩壁の厳しい斜面に突き当たるので、右手の沢筋を忠実に詰めることにする。岩のフリクションはあるが、斜度が立っているので気は抜けない。自分はこんな登りは苦手で恐さが先に立つが、Tさんは楽しい楽しいと登っていく。雨にも降られず岩は乾いていたこともあり、結局ロープは出さなかった。しかし、スリップは即滑落ともなるので、パーティーとその時の状況により慎重に判断したい。ちょっと休憩して眺めると、気持ちの良い高度感が味わえる。左手(東側)には岩壁が稜線より突き出ていて、その向こうに大玉山へ続く尾根が見える。我々が間違った二俣で本流を辿り、上部で左に振ってあの尾根に登り上げた記録もある。再び登り始めると、思ったよりあっけなく稜線の登山道に出た。場所は尾根の小さなアップダウンのコルのようなところだった。ヤブこぎ無しで稜線に出る沢登りは久しぶりだ。雨はまだ降らないようなので、祝瓶山の山頂まで行くことにする。稜線に出たところが予定より下だったので、山頂へは少し遠くなった。山頂で昼食としたが、ガスで朝日連峰の眺めは得られなかった。下山していくと、山形のGさんと偶然スライドし驚く。山スキーでは何度も遇っているが夏山では初めてだ。途中でとうとう雨が降り出し遠くで雷鳴も聞こえる。もうここまで来ればいくら濡れてもかまわない。2時間ほどで林道終点に到着。着替えているといまいましいメジロが何匹か寄ってきた。
※今回巻いた滝はひとつだけで、他はすべて直登できた。無理することはないが、やはり滝の直登は楽しい。ただし、滑りやすい所もあるので気は抜かないでおきたい。想定した遡行ルートからは上部で外れたが、結果としてはまずまずのルートだった。枝沢に逃げた形になったので、下ノ沢遡行としては一番短いルートとなったかもしれない。山頂までの往復で尾根から眺めたが、もう1本東のスラブはさらに急でロープ必須となるだろう。さらに東の登山道分岐に突き上げるルートは、少し斜度が穏やかで登りやすそうだが、上部は草付きのガレ場があるかもしれない。このルートを取ってもプラス1時間弱と思われるが、ロープを出せばその分さらに時間がかかることは念頭に置きたい。機会があればまた遡行してみたい沢だった。(K.Ku)


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