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No.5018
神室連峰・大横川 最上川流域小国川支流
山行種別 無雪期沢登り
かむろれんぽう・おおよこがわ 地形図

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山行期間 2014年9月23日(火)
コースタイム
親倉見登山口(6:36)→林道終点(7:26)→入渓(7:38)→二俣・440m(9:10)→二俣・620m(11:09)→15m滝・650m(11:15〜12:00)→二俣・670m(12:04)→二俣・690m(12:21)→三俣・850m(13:09,13:28)→4m滝・1110m(14:14,14:30)→登山道・1185m(14:50)→火打岳(15:00,15:15)→槍ヶ先(16:02)→親倉見登山口(16:50)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
親倉見登山口 大横川左岸沿いを上流へ 橋を渡り大横川林道へ
1時間ほどかかってようやく入渓 しばらく平瀬が続く ゴルジュ入口の淵(8:30)
廊下のようなゴルジュ 水が冷たいので右岸をへつる 4m滝を右岸から越える
6m滝は直登せず右岸から巻いた 二俣(440m)を左俣へ 小滝が続く
5m滝 支沢が25m滝で落ちる(9:30) 5m滝を左岸から巻く
7m滝も左岸から巻く 流倒木で埋まっている 今度は岩で埋まっている(10:18)

 
6m滝

 
15m滝(11:00)
左岸の支沢30m滝
二俣(620m)を右俣へ 15m滝(650m) Tさんがトライ
続いて自分がトライ 二俣(670m)は左俣が正解 標高680mでまだ雪渓がある
二俣(690m)は右俣へ 5m滝(12:33) 10m滝は一緒に高巻く
9m滝は直登 10m滝も直登 壁のような4m滝(13:00)
三俣(850m) 中俣を選択 ヌメるので意外に小難しい滝がある
どんどん高度を上げていく 沢は草付きの溝になる 稜線までヤブ漕ぎなしの草原
火打岳(1237.9m) 雪蝕地形特有の急峻な火打岳東面 稜線の登山道を駆け下る

行動記録
 大横川は滝の数が50とも90とも言われる。沢登りで滝の数を数える場合、小さな滝は人によってカウントするしないがあるが、いずれにしても50以上となればかなりの数である。大横川は山形県最上町と新庄市の境界稜線、火打岳の東面に源を発する。近年はあまり遡行されていないのか、ネット上の記録は少ない。登山大系及びネット検索の数本を読んだが、滝の数が多いだけに個々の滝についての記述は短い。また、遡行図は登山大系のものしか手に入らなかった。神室連峰では屈指の沢だという割りに情報は少ないが、かえって興味が増してくるといえる。今回は遡行時間が長くなる事が予想されるので、2名パーティーでスピーディに抜けることにした。相方のTさんは自分より体力もクライミング能力も上だ。こんな人とパーティーを組むと、自分の心配をすればいいだけなのでその点で気は楽である。
 下山のことを考えて火打岳への登山口に車を置く。登山口は親倉見という地区にあるが、ちょっと分かりにくい。国道13号から最上町を目指し、国道47号の「上鵜杉2km」の道路標識から北に入り、道なりに5キロ弱進むと登山口に行き着く。初めての我々は行き過ぎてしまい、ちょっと遠回りしてしまった。登山口の少し下には5〜6台分の駐車スペースがあり、ここが登山者用駐車場だろうと車を置く。駐車場から東へ大横川を渡り、左岸沿いの道を上流へと歩いていくと、やがて林道「大横川林道」に繋がる。そのまま林道を歩くと川に突き当たり広場になるが、道は川の向こうに続いている。川を渡りヤブっぽい道を歩いていくと、突然道が消えてしまったので大横川に降りる。地形図を確認すると、やはり道はここで終わっているようだ。支度をして7時38分遡行開始。
 平坦で穏やかな流れが続く。釣り師の痕跡があるが、不思議と魚影は見かけない。30分ほど遡行した辺りで、ゴルジュっぽくなるがすぐ通り抜けてしまう。8時21分、二俣かと思ったところは右からの支沢出合だった。出合のすぐ先で本流は淵になりS字に屈曲する。どうやらここがゴルジュの入口のようだ。右岸の岩を乗り越えて沢に降りると、ゴルジュの中に入っていく。いよいよショーの始まりである。幅の狭い廊下はジャブジャブと水線通しで突破したいところだが、水が冷たいので濡れたくない我々はへつって進む。4m滝を右岸から越えるとすぐ6m滝。Tさんが右岸から斜上を試みるが悪い。ならばと取り付いた左岸だが、上部がハングしているうえ岩がヌメって嫌らしい。それを見てこちらは右岸ルンゼから高巻こうと登り始めたが、泥壁が滑り早くもバイルを打ち込むハメになる。最後は懸垂下降で沢床に降り立った。なおこの滝は、右壁から上部シャワーで直登している記録もある。
 遡行を続けると二俣(440m)に突き当たり左俣へ進む。右俣は無名の1071mピークへと突き上げる。小滝がしばらく続き、流木のかかる5m滝を越えると正面に25m滝が見えた。あれを登るのかと思ったが、それは早とちりで支沢であった。本流は右へカーブすると5m滝で、シャワーを嫌い左岸手前より取り付いて越える。右に90度曲ると7m滝で、直登をうかがうもヌメる岩が嫌らしい。ブッシュ頼りに左岸から巻く。この沢は思いのほか岩がヌメり気を抜けない。事前情報では花崗岩でフリクションが良いとも聞いていたのだが。小休憩し再び遡行すると、沢幅一杯に流倒木で埋まっている。見ると左岸から崩れ落ちてきたもののようだ。そのすぐ先は切り立った壁のゴルジュで、崩れた大量の岩が埋めている。以前の記録にはなかったこの状況に、近年何かあったのだなと2人で顔を見合わせる。上流の状況が心配になってくるが、ここまで来ればもはや遡行を続けて抜けるしかない。
 左岸を伝い落ちる30m滝を見送ると、沢は左に曲がりやがて直瀑の6m滝が現れる。試しに取り付いてみるが、まともにシャワーとなりちょっと厳しい。少し戻って右岸から高巻いたが、沢への下降時に掴んだ枝が折れて2〜3m滑り落ち冷や汗をかく。15m滝は右壁の乾いた岩を登る。二俣(620m)は右俣へ進む。左俣は大尺山へと突き上げる。やがて15m滝が現れる。直登か巻きかと滝をしばし観察する。高巻きは結構な大高巻きになりそうでもあり、1本くらいシャワーで直登してみたいと思いトライすることにした。Tさんがトップで登り、ハーケンを2枚打ってさらに上をうかがったが、水の冷たさにいったん下降する。次は自分が空身でトライしたが、上に行くほど水流に叩かれ厳しい。思い切って水流に上半身を突っ込みホールドを探る。滑りやすい小さなスタンスに、かろうじて体を乗せている状態。いつまでも耐えられないので、ハーケンを打って支点を取る。さらに2枚打ち増して何とか登り切ることができた。結局ハーケン5枚のベタ打ちであった。この滝を登るのに45分費やした。
 次に現れた二俣(670m)は迷った。地形図で見ると三俣のようにも見え、いったんは右俣へ進んだが、どうも違うようなので戻って左俣に入った。雪渓がわずかに残っていて(標高680m)、積雪量の多さを物語っている。ほどなくまた二俣(690m)になるが、この二俣は崩れた岩が堆積していて、左俣右俣が向かい合わせに出合う。地形図からは読み取れない細かい地形だが、白い崩壊岩が堆積している左俣は大尺山へ突き上げる沢だろう。白茶けた岩の右俣へと進むことにしたが、こちらも下部は崩壊岩で埋まっている。沢はぐっと狭まり、水流はかなり細くなってきた。小滝が続き5m滝を越えると、6m滝・10m滝・5m滝をまとめて左岸から巻く。9m滝・10m滝・8m滝・5m滝を快適に直登し、壁のような4m滝を越えるとひと息つく。
 前方が開け、枝沢が2本ほぼ平行に近接して落ちている地点に来た。予定では火打岳の南肩に出るつもりなので、詰めるべき沢を休憩しながらじっくり考えることにする。地形図と登山大系の遡行図と照らし合わせると、ここは遡行図では三俣として表現されている箇所であろうと思われた。登山大系の記録では中俣を登って火打岳の南の稜線に出ているようだが、はたして我々が目指す南肩なのかは確信が持てない。他に情報もないので、中俣を登ることにした。ここからは斜度が増し、小滝を重ねて高度を上げていく。次々と現れる滝に、また滝かもうたくさんと声に出るほどだ。そのうち源頭に近づくと凝灰岩のような岩に変わってくる。
 沢形は浅くなり周囲は急傾斜の草原となる。もう後は稜線まで詰めるだけと思っていたところ、袋小路のような3m涸れ滝に突き当たる。ハーケンも効かない軟岩の垂直壁となで肩の落ち口で、Tさんがかなり苦労してやっと登った。自分は下げてもらったロープを引いたら、落石を誘発し20センチほどの石が2個右脚を直撃。かなり痛かったが、大した傷でもなくホッとした。ゴボウで登りながら、自分はとても登れないと感じた次第。最後まで気の抜けない沢である。やがて沢は草原の中に消え、掴んだ草が抜ければどこまでも転がり落ちそうなので、潅木の続くラインを探し登る。最後に笹をかき分けると稜線の登山道に出た。時刻は14時50分ほぼ予定どおり。登山道に出た位置は、火打岳の南にある小ピークの南側。想定していた位置は小ピークと山頂のコルだったので、200mほど南に出たことになる。
 火打岳は初めてなので、いちおう山頂を踏んでから下山することにした。山頂に向かいながら東面を観察すると、やはり三俣で右俣を選べば考えていた位置で稜線に出られたようだ。しかし、斜面はより斜度が強いようで、結果的には今回のルートで良かったのかもしれないと思えた。山頂からの神室連峰はなかなか魅力的だ。いつか長い稜線を縦走してみたいと思う。下山は計画では2時間半としていたが、まだ15時なので急げばヘッデンは使わずにすみそうだ。明るいうちに駆け下ろうかとTさんに話したら、本当に駆け下っていく。始めのうちこそ何とか付いていったが、やがて離されもういいやと諦めた。結局、山頂から親倉見登山口まで95分で下山。疲れたが暗くなる前に下山できたのは良かった。瀬見温泉の共同浴場(200円)で汗を流して帰宅。
 大横川は流倒木や崩壊岩が各所にあり、全体的に少し荒れた印象となった。これらは以前の記録や画像には見あたらないことから、比較的新しいのだろうと考えられる。推定でしかないが、特に崩壊岩は東日本大震災の時ではないだろうか。渓相が荒れてしまったのは残念だが、それもまた自然の一部であり仕方のないことだろう。滝は直登できるものはすればいいし、巻きもそれほど大高巻きにはならない。花崗岩で登りやすいとされている登山大系の記述と異なり、自分たちは岩がヌメって滑りやすい滝が多いと感じた。そのため滝の直登では緊張する場面が多かった。なお、この沢にはテン場になるようなところがほとんど無い。ちょっと手こずる滝もあるので、日帰り軽装が基本となる。2〜3人の足並み揃ったパーティーで一気に遡行したい沢だ。ロープは30mで間に合うが、パーティーで2本持てばより安心である。(K.Ku)

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