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No.5400
大鷲倉沢 和賀山塊 和賀川支流
山行種別 無雪期沢登り
おおわしくらさわ 地形図

トップ沢登り>大鷲倉沢

山行期間 2016年9月18日(日)〜19日(月)
コースタイム 9月18日
高下登山口(11:19)→和賀川渡渉点(12:45,13:03)→テン場(13:45)
9月19日
テン場(5:36)→大鷲倉沢出合(6:36)→小鷲倉沢出合(6:43)→4mハング滝(7:03)→15m滝(8:11)→2段7m滝(8:50)→10mCS滝(9:52)→二俣・1085m(11:43)→和賀岳山頂(13:50,14:15)→高下登山口(16:33)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
高下登山口 和賀川渡渉点 川を下降する
狙い通りのテン場 身も心も温まる ゴルジュ
2段釜は飛び込んだ 大鷲倉沢出合 左から小鷲倉沢が出合う
最初の4m滝 4m斜滝 2段7m滝
4mハング滝はショルダー 大岩のゴーロ 15m滝
ナメの小滝 左岸枝沢の8m滝 2段7m滝
釜を右からへつって直上する 3段7m滝 10mCS滝
5m滝 稜線が見えてきた 5m滝
登れる滝ばかりが続 右岸のスラブと枝沢 右岸から枝沢(1,050m)
右俣が5m滝の二俣(1,085m) ダイレクトに山頂へ 急斜面を詰める
源頭の様相 和賀岳山頂 振り返り見る和賀岳南面

行動記録
 8月は台風が連続して襲来し雨が多かったが、9月に入っても天候が不安定でハッキリしない。山屋も沢屋も週末の天気が気がかりな日々が続いている。18日19日は飯豊二王子岳の頼母木川鴨沢の沢登りを計画していたが、台風の影響でコロコロ変わる予報に翻弄されっぱなしだ。ぎりぎりまで粘ったが天候回復が見込めない鴨沢を断念し、急きょ雨から逃れられそうな岩手・秋田方面で探すことにした。急いで情報を集めた結果、和賀山塊の和賀川支流大鷲倉沢を選び出した。和賀山塊はこれまで機会がなく、足を踏み入れたことのない山域だ。この沢へのアプローチは、他の記録を見ると秋田県側の薬師岳登山口からのものが多いが、最近の記録に林道が通行止めで岩手県側に回ったとあるのを見つけた。秋田在住の岳人に尋ねると復旧の見込みはまだないとの情報。ならばと、岩手県側の高下登山口からアプローチすることにした。なお、登山大系の記録でも高下登山口からのアプローチとなっている。
9月18日 曇り
 18日は行程が短いので、いつもの山行からすればかなり遅めの午前7時集合とした。高速道路を一路北上し、一般道から林道へ入って高下登山口には10時50分頃到着。登山口の100m先にある駐車場はほぼ埋まっていて、一番奥に車を滑り込ませる。登山口から登り始めるとやがて急登に汗を絞られる。高下岳への分岐を見送り、尾根のトラバースを過ぎて下降していくと和賀川の渡渉点だ。和賀川を渡った対岸の渡渉点には、テント数張り分のスペースがあり、ここをテン場とする登山者や釣り人がいるようだ。我々は和賀川を下降して川べりにテン場を求めることにしている。地形図からは渡渉点から600mほど下った屈曲部に当たりを付けていた。
 川原を歩いて行くと、喉のように両岸が狭まったあまり落差のない落ち込みがあった。流れに飛び込んで下ればなんと言うこともない。しかし、テン場を前にして今さらずぶ濡れになりたくないので、左岸から小さく巻いて4mの懸垂で越えた。なお、この落ち込みには流れの脇にロープが張ってあり、大きな浮き輪まで置いてあった。おそらく釣り師の仕掛けだろうと想像する。やがて想定どおりの場所にテン場が現れた。砂地で川面より一段高く、増水時のエスケープも容易な極上物件だ。設営作業をしていると、下流から2人の釣り師が歩いてきた。やはり先ほどの仕掛けは彼らとのこと。釣り師が入ってしまったのではと半分諦めたが、釣りに行ったK樹さんは案の定ボウズで戻ってきた。ちょっと残念だが、イワナはなくとも焚き火と酒があれば言うことはない。心配した雨も降らないようだ。焚き火を囲んでゆったりと贅沢な時間を過ごす。
9月19日 曇りのち時々晴れ
 午前4時起床。まだ真っ暗だが、焚き火を起こし朝食を済ませる。ほぼ予定どおり午前5時半過ぎに出発。今日の行程はちょっと長い。和賀川を下降していくと小滝のあるゴルジュが現れる。右岸岩壁の中段を伝って越えたが、岩が滑りやすいので要注意である。2段の釜のある小滝は釜に飛び込んで越えた。これらを高巻くとトラバースや懸垂下降となり時間がかかるだろう。以後は水線通しにどんどん流れに入って進んでいくが、平水ということもあり深くても胸辺りまでだ。やがて出発からちょうど1時間で大鷲倉沢の出合に到着。昨日の分と合わせると、渡渉点から出合までは所要時間1時間42分ということになる。他の記録ではかなり時間がかかっている場合もあり、いかに高巻きしないかで大きく左右されるようだ。なお、テン場は大鷲倉沢出合近くまでは見当たらなかった。
 大鷲倉沢に入るとほどなく左から小鷲倉沢が出合う。小鷲倉沢の方がより登攀的な沢だという。大鷲倉沢には4m滝がかかり、3m滝、4m斜滝、2段7m滝と、いずれも容易に越えていく。次の4mハング滝は取り付けないのでショルダーで越える。小滝2mを過ぎるとゴロゴロした大岩の区間がしばらく続き、その後は3〜4mの滝をいくつか越えて行く。天気はといえばガスっぽくて、気温も上がらず雨が降っていないだけマシという状況。K樹さんは少し寒いと言うが、F田さんと自分はそれほどでもないので体脂肪率の差かもしれない。やがて15m滝が現れる。この滝は右壁を直登の記録もあり、眺めてみると確かに登れそうではある。しかし、滑りやすそうな岩はロープを出す必要があるだろう。すぐ手前の草付きが登れそうなので取り付くと、直登して落ち口へトラバースとコンパクトに巻くことが出来た。
 15m滝上に出るとナメとなり、小滝を越えると左岸から枝沢が8m滝で落ちる。再び大岩のゴーロがしばらく続くと、釜のある2段7m滝に突き当たる。下の3m滝は右壁から容易だが、上の4m滝は壁に囲まれたような深い釜があり、越えるには作戦が必要。ロープを出してK樹さんに右からへつって右壁の凹溝沿いに登ってもらった。続くF田さんはちょっと苦労したが何とか登ってくれた。なお、この滝は左岸手前の小沢から大きく高巻いて懸垂下降の記録や、右岸を小さく巻いたとの記録もあり様々である。
 続く3段の7mナメ滝を容易に越えると、ほどなく沢は右へ曲がり10mCS滝が現れる。観察すると左壁を落ち口直下までは登ることが出来そうだが、果たしてチョックストーンを乗り越えられるかどうかだ。水量が少なければ登れそうに思える。しかし、今回は無理せずに右岸のルンゼから高巻くことにする。斜度のある滑る岩に注意して高巻き、灌木帯をトラバースして30分弱で沢に戻ると、左岸スラブを伝い落ちる枝沢のちょうど正面だった。次の5m滝は左壁が登れそうだが、右岸から容易に巻けそうなので取り付く。草付きでF田さんが2mほど落ちたが、下にいたK樹さんが止めてくれホッとする。沢は開けてナメとなり、明るく開放的な景観となる。そのうち空が明るくなり青空も見えてきた。3m、5m、3mとナメ滝が現れさらに小滝が続く。右岸を見上げるとスラブに幾多の枝沢が架かり、尾根のスカイラインと合わせてなかなかの景観を成している。3〜4mの滝をいくつか越えると沢幅が狭まってきた。
 1,050mで右岸から枝沢を合わせ、1,085mで右から5m滝で落ちる二俣となる。どちらに進んでも良いのだが、今回は和賀岳山頂に突き上げる右俣へ進むことにした。左から5m滝を登り、源頭の様相となってきた沢を詰めていく。やがて水が涸れると階段状となり高度を上げる。沢形が消えてガレ場を過ぎると草付きの急斜面となり、最後に軽くヤブを漕ぐと誰もいない山頂に到着。ひと息ついて初めて踏む山頂からの新鮮な眺めを楽しむ。以前より気になっていたマンダノ沢の谷も見え、来年あたりは遡行したいものだと思う。登山道を下りながら和賀岳の南面を振り返り見ると、先ほど登ってきたルートが手に取るように分かる。高下登山口にはほぼ予定通りの時刻に下山。駅に温泉が併設されている「ほっとゆだ」(300円)で2日間の汗を流し帰路についた。
 大鷲倉沢は滝の直登にこだわらなければ、高巻きは比較的容易でルートファインディングも難しくなく、遡行しやすい沢といえるだろう。中上流部のナメと明るい渓相のロケーションを楽しみたい沢である。初日のテン場を大鷲倉沢の中に求めれば、2日目はゆっくり遡行することができる。なお、今回雪渓はなかったが、例年であれば夏場でも上流部には残ると思われる。(K.Ku)

<大鷲倉沢を遡行して>
 9月18〜19日に大鷲倉沢を遡行しました。私には初めての本格的なゴルジュのある沢でした。それだけで一気に沢のグレードが上がり、私には試練と失敗の連続する沢登りになってしまいました。
 テン場から大鷲倉沢まで沢を下ります。途中で懸垂下降をしたのですが、下の釜が深いので壁を垂直に降りるのではなく、壁を蹴って右側へ体を移動させ、そこでホールドを掴んで、ゆっくり下降するということをしました。壁を蹴って何とか移動したのですが、3回目くらいでようやくホールドをつかんでもそこから体が動きません。最後は熊○さんに助けてもらいました。
 2段の深い釜のあるつるつるの滝では、K樹さんがロープを引いて右壁を回り込み、そこから高巻きました。いつもの高巻きは先輩方のルートの取り方を見て自分もそれに倣うのですが、K樹さんの姿は全く見えず、自分でルートを探して登らなければなりません。熊○さんに登高器つけてと言われ、フックスロープに装着しましたが、その後登高器の紐にスリングをかけてしまい、そんなとこに体重がかかったら落ちるだろう!と注意され、以前も同じことをして指摘されたのを思い出しました。登ることばかりで頭がいっぱいになってしまい、器具の正しい使い方ができなくなっていたのです。これは登るための道具ではなく、自分の命を守るための道具なのです。自分も何とか壁を回り込み、さて登ろうとしましたが今の失敗で頭の中が混乱し、周りを落ち着いて観察することができなくなっていました。目の前にあるロープの通りに登ろうとし、つるつるで登れずすぐに落ちてしまいました。再度挑戦しても今度は登高器を支点のカラビナの中を通さず注意されて初めて気がつく有様でした。どうしたら、ここを登れるんだろうとあたりを見まわしたら奥がくぼんでいたのでそこに取り付き、体をつっぱたりしながら何とか登り、上からもK樹さんに引っ張ってもらってやっと上がることができました。ここの重大な失敗で私の中に脅えが生じてしまいました。ここから先はナメの連続する明るい渓相となり、空も開けて明るくなってきたのですが、この先やり遂げる事ができるか大きな不安を抱えながらの行動となりました。
 次の泥付きの壁のトラバースでは最初の一歩に失敗して、滑り落ちてしまい下にいたK樹さんに危ういところで止めてもらいました。結局ここはお助けロープを出してもらいトラバースしました。
 そのあともなんでもないところですぐに転び、転びすぎだと熊○さんに注意を受けました。またスタンスが甘すぎると、ご指摘をいただきそのあとは自分で意識して、どんな足の置き方をしているのか観察しました。やはり中途半端でした。あと半歩つま先を進めて足を置いたら、自分でも驚くほど体が安定して筋肉にも負担がかかりませんでした。最後の詰めのころに腰が痛くなったのはこれが原因だと思います。
 私にとってはハードルの高い大鷲倉沢でした。失敗の連続でしたが、その中には今まで教えてもらったことをきちんと身につけておけば、防げたことも多くあります。終わってから数日が経ちましたが未だに、あの時はどう行動すればよかったのだろうと、頭の中で場面がぐるぐると渦を巻く有様です。終始リードして下さった熊○さんと、フォローして下さったK樹さんには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
 ただ、厄介なことに、もうこれでゴルジュには行かないという気持ちになれません。行動していた時はもうゴルジュはこりごりだと言ったりしたのですが、新しい世界を見てしまうと、今度はちゃんと楽しめるようになって来てみたいと思うのです。
 自分の課題は達成できるように頑張ります。その為にはまた、諸先輩方のお力をお借りしなければなりません。どうぞよろしくお願いいたします。(T.F)

ルート
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平28情複、 第162号)この画像をさらに複製する場合には国土地理院の長の承認が必要です。



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