9日・10日の東北地方は、雨マークが多いパッとしない天気予報だが、その中でも宮城は比較的マシなようである。そんなわけで遠出を考えていた沢登り計画を変更し、山域をアプローチの良い二口山塊とした。遡行する沢は鳴虫沢と小松原沢を選んだが、自分以外は全員今回が初めて遡行する沢となる。そういう自分も前回の遡行は5年前の2011年と久しぶりである。
沢支度をして姉滝入口より遊歩道を二口沢本流に下降する。天然記念物の姉滝を見てから入渓。上流へ200mほどで鳴虫沢の出合だ。出合から覗くと先に4m滝が見える。これは登れないが、踏み跡のある右岸から容易に巻ける。柱状節理の4m滝では珍しくK樹さんがヌメる岩に足を取られてドボン。猿も木から落ちるとはこのことか。今回は自分はなるべく前に出ず、各々のラインで滝を登ってもらうことにした。同じ滝を観察しても各自の見えるラインは違うから面白い。沢登りではあえて難しいラインで登る時以外は、極力楽でより安全なラインを選ぶのが鉄則だ。結果的には登ることが出来たとしても、1日遡行しているとラインによるリスクと疲労が格段に違う。技術やセンスの部分も大きいが、やはり沢登りの本数を重ねて経験を積むことが大事だろう。そのためには先行者の後追いだけではなく、自分でラインを選ぶトップで登ることが必要になる。もちろん、そのパーティーのリーダーが承認した上でのことだが。
左へ屈曲する3m滝は左岸をへつる。高いところをへつる人、水際をへつる人様々であるが、可能な限り水際から攻めた方が良いだろう。2段10m滝は少し手前の右岸から巻くが踏み跡は明瞭。左岸の岩を伝う枝沢を見送ると、ナメ小滝が続くようになる。傾斜は緩いがヌメる岩がよく滑るので、注意するよう皆に声を掛けた。ふと振り返るとU井さんが顔を押さえていた。転んだ際に顔を打ってしまったようだ。駆け寄ると歯を折ってしまったという。見せてもらうと前歯が1本、見事に歯の根元近くで折れている。ちょっとしたキズなら処置して遡行を継続するが、女性でしかも歯が折れたのではそうもいかない。直ちに遡行を中止して戻ることにした。出発からほぼ1時間での出来事だった。
岩がかなり滑りやすいのは遡行し始めてすぐに分かっていた。秋なのでヌメるのは仕方ないとはいえ、メンバーにもっと慎重な遡行を呼びかけるべきだった。大きな怪我ではなかったが、事故を未然に防げなかったことがリーダーとして悔やまれる。遠方から来てくれたU井さんには悪いことをしてしまった。U井さんは休日当番の歯医者で応急処置をしてもらった。なお、今回よく滑ったのは、ヌメリに比較的弱いとされるラバーソールの沢靴である。フェルトの沢靴はそれほどでもなかった。(K.Ku)