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No6142 |
湯檜曽川大倉沢
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谷川連峰 利根川流域湯檜曽川支流 |
山行種別 無雪期沢登り |
ゆびそがわおおくらさわ |
地形図 |
行動記録 |
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8月第1週の山行を決めかねていたところ、鈴○さんから谷川連峰の沢登りの誘いが来た。こんな機会はそうはないのですぐ手を上げた。メンバーは他に最近成長著しい○島との3人だ。谷川山域が全くの初めては自分だけであるが、大倉沢は鈴○さんも初遡行とのこと。自分にとっては未知の沢だが、忙しかったこともあり事前に調べることはできなかった。いや、あえて調べなかったともいえる。たまには事前情報の無いまっさらな状態で沢と向き合うのも面白いだろう。いつもはリーダーなのでそうもいかないが、今回は純粋に沢登りを楽しみたいと思ったのだ。
2日仕事を終えてから出発。福島でリーダーと○島を乗せて高速に乗る。常磐道、北陸道、関越道と走り、みなかみ町の水紀行館でテントを張った。他にも車中泊やテントなど多数。4時に起床し移動。途中で土合駅に寄ってみたところ駅舎内で泊ったらしき登山者が何人もいた。次回あるとしたら土合駅も前泊候補になりそうだ。白毛門登山口駐車場に車を止めて沢支度をすると出発。駐車場から湯檜曽川沿いの登山道はすぐである。登山道に入りマチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢を渡り、JR見張小屋を過ぎると柴倉沢に出合う。さらに30分ほど歩くと武能沢に出合うので沢を少し下降して湯檜曽川に入る。
遡行を開始すると数分で6m魚留滝だ。右岸に古い残置シュリンゲがあったがフリーで越える。滝上はゴルジュとなり鈴○木さんは巻道に入ったが、右岸の岩棚を行けそうということで降りて進む。ゴルジュを過ぎると明るく開放的な渓相となる。右岸に残る雪渓を見ると廊下のような細長い淵となる。後から知ったがウナギ淵というそうだ。泳ぎを嫌って左岸の岩棚から越えたが、その後は胸まで浸かる個所もあったので結局濡れてしまう。正面に雪渓が見える個所で本流は滝で左へ折れる。崩れ落ちそうな雪渓をくぐることもあるまいと右岸から巻くが容易。やがて正面に大きなナメ滝が見えてきてなかなか見事な景観だ。あれを登るのかと思ったら正面は抱き返り沢の滝で、本流は左に直角に折れ、今日遡行する大倉沢は右から落ちる滝とのこと。ここが十字峡とのことでなるほど文字通りの場所である。大倉沢の8m滝は水流右を登るが容易。次の5m滝も見た目より容易。
2条の6m滝は左壁から越える。左岸から枝沢が落ちると正面に雪渓が現れるが、これも枝沢で大倉沢は左へ曲がる。3〜4mの滝をいくつか越えると沢の中に雪渓の残骸が現れてきて、上流部の雪渓が気になってくる。10m滝の直登は厳しそうなので右岸から小さく巻いた。3段20m滝は2人が水流右を自分は左を登る。やがて沢幅いっぱいの雪渓が現れてくる。巻くか潜るか検討したが潜ることにした。1人ずつ50m以上の雪渓トンネルを駆け抜けると目の前には大滝だ。40m滝だというがどこを登るか協議した結果、右壁をフリーで中段まで登り、そこから上は状況によってロープを出すことにした。中段まで登ると古いリングボルトがあった。ロープを出すことにして鈴○さんがリードする。後続は楽ちんだが高度感たっぷりだ。水量が少なければ上部は水流沿いを登る方法もあるだろう。大滝登攀には30分を要した。
大滝の上にはまた雪渓で再び潜り抜けるが、雪渓の上流側がナメ滝にかかっていてスタンスに乏しく、思ったより手こずりながら抜けてやれやれだ。と思う間もなくまたまた雪渓だが安定していると見て全員で突っ込む。2人は途中から左岸に出たが自分はそのまま雪渓トンネルを進んだ。100m以上のトンネルを抜け雪渓上で2人と合流する。左岸からの枝沢を確認して雪渓の穴から沢にクライムダウンする。雪渓を潜って出るなり滝に取りつくが、何mなのやらよく分からないまま登っていく。登り切って下を見れば結構高さがある。ゴルジュとなり4mCS(チョックストーン)滝が現れる。自分が右岸からヘツリ泳ぎで取り付くがどうにも上がれない。遡行図には右岸巻きとあるようで○島のリードで登り始めるが手こずっている。あらためて滝を観察するとチョックストーンの下まで行けば登れそうに思えた。トライしてチョックストーンの下を回り込むと流心突破で登ることができた。2人は既に右岸を登っていたがトラバースラインのバンドが外傾してかなり悪そうだ。リスキーなので懸垂下降で沢に降り自分と同じように登ってもらうことにする。右岸巻きに比べればこのほうが楽でリスクもない。答えが分かってしまえばなんだという感じだが、こんな具合に登り方を見つけるのも沢登りの面白さだ。結局このCS滝には40分を要した。
CS滝の上流も雪渓があるが慣れてきて最初の緊張感はなくなりスタスタ潜っていく。とはいえいつ崩れるか分からず危険であることには変わらない。次々と現れる滝を越えていくが難しい数か所には古い残置シュリンゲがあった。稜線が見えてきたが高度計では稜線まで標高差500m以上ある。1,450mを過ぎると岩質が変化し茶色となった。暑いので1,480m二俣の小さな釜でクールダウンして水量の多い左を登る。沢の傾斜が増してくると自然に○島が先行するようになる。おっさん2人は体力勝負の登りになると若い登りが応えるが○島についていくことができなくなる。1,570mの二俣は下山を考えれば右だが朝日岳を踏みたいので左の滝を登る。もはや滝なのかそうでないのか判別が難しくなってきた。暑くて登りが堪えるが○島に引っ張られるようにして高度を上げていく。
いよいよ源頭になってくるとニッコウキスゲやハクサンフウロなどの花に癒される。傾斜が緩くなると草原状になり池塘も現れる。○島に先行してもらうと、草原と低い灌木帯を歩き山頂の50mほど北側で登山道に出たが、ダイレクトに山頂を目指すよりヤブが薄かったようだ。山頂には我々だけだったが後からトレランの方が登ってきた。馬蹄形縦走なのだといい走り去っていった。ガスがかかってきたので遠望がないのがその分涼しいので助かる。靴を履き替えて後は下るのみと思ったが甘かった。コースタイム4時間と聞いていたので3時間もかからないだろうとタカをくくっていた。しかし、稜線をたどる登山道はしばらくアップダウンが続く。○島はスタスタと軽快だが、疲れているおっさん2人はまったくペースが上がらない。たまらず笠ヶ岳と白毛門の山頂で大休止する。大量に汗をかく自分は水も心細くなってきた。白毛門からは一気に下っていくが足にこたえる。ヨレヨレになって白毛門登山口駐車場に到着。結局ほぼコースタイムどおりだったがこんなにもかかるとは思わなかった。秋なら最後はヘッデン行動となったかもしれない。今日の泊りは土合山の家だが駐車場からはすぐ近い。遅れることは下山中に連絡しておいた。チェックインして町へ下りて食事を済ませ、買い出しをして戻りギリギリで入浴と何とも慌ただしい。軽く一杯やっていると今日の盛りだくさんの場面の数々が思い起こされる。リーダーは既に軽いイビキだ。明日もあるので午後10時近くには就寝。
大倉沢は明るくきれいな沢で登れる滝が多く詰めもすっきりしている。自分としてはあえて情報を入れていなかったことで久しぶり無心になって楽しめた沢だった。沢としてはそれほど悪いところもなく3級というのもうなずける。お勧めの沢といえるが標高差もあり遡行時間が長いので時期とパーティーを選ぶ。帰宅してから大倉沢の過去記録を探して読んだが、9時間未満のやたら速いパーティーもあれば、15時間以上要したり稜線でビバークのパーティーもありかなり差がある。時期的には雪渓の心配の少ない8月中旬以降が多いようで、今回ほど雪渓の多い記録はわずかしか見当たらなかった。どうりで我々パーティしか入っていなかったわけだ。いずれにしても日帰り沢としては十分覚悟して臨む必要があるだろう。今回リーダーの計画はガイド本を参考にして10時間としていたが、行程の長さと年齢からすれば短かったようだ。しかし、全員初めての沢で雪渓が多かったこと、暑さが厳しかったことを考えると今回はまずまずの遡行時間だったといえるだろう。とはいえ3人とも○島の足なら2時間以上は短縮できただろうと思われる。いずれにしても少人数のパーティーでスピーディーに遡行したい沢だ。(熊)
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.ルート図 |
往路=赤 復路=青 |
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この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 令元情複、 第435号)この画像をさらに複製する場合には国土地理院の長の承認が必要です。 |
トラック |
登り=赤 下り=青 |
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