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No6158
松川
吾妻山  最上川源流
山行種別    無雪期沢登り
まつかわ 地形図

トップ沢登り>松川

山行期間 2019年8月18日(日)
コースタイム
林道駐車地点(7:00)→入渓(7:07)→ヒョウタン淵(8:45)→三俣(11:12)→40m滝(12:57)→二俣(15:02)→小屋跡(15:45)→難関ゴルジュ(16:09)→大平温泉(18:20)→自転車デポ地点(18:52)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
松川遡行開始 白い岩と青い水が美しい 左岸から矢沢が出合う
ナメが続く 釜や淵も多い ヒョウタン淵と15m滝
右岸から高巻く 左岸から水がしたたり落ちる 15m滝
枝沢を登って巻く 沢は変化に富んでいる 三俣本流の滝と支沢の滝
もうひとつの支沢 右岸をへつって越える ツルツルの8m滝は右岸を高巻く
15m滝は右岸から容易 暑いのでクールダウン しばらくゴーロが続く
滝と滝の間は穏やかな流れ 2段20m滝 左岸から高巻く
高巻き中の上段の滝 40m滝 登攀ライン
40m滝の落ち口 40m滝上の6m滝は左岸から 20m滝は左岸のルンゼ状を登る
ルンゼ状を登る羽○女史 10m滝は右岸から容易 明道沢が右から合わせる二俣
明道沢の岩は赤茶けているが水は透明 本流の水も透明 巻くこともできるが泳いだ釜
2人をロープで引き寄せた ミニゴルジュを下に見て巻き上がる 建物跡地の郵便受け
鎖とロープで崖を下る 温泉は健在 難関ゴルジュへの入口となる滝
かなりの急斜面を登って高巻く 上から難関ゴルジュ内を覗く 4m滝は右岸を巻き気味にへつる
吊り橋と大平温泉の建物が見えてきた 吊り橋を渡る デポしておいた自転車で車回収に下る

行動記録
 吾妻または吾妻山は福島市の西部から山形市の南部にかけて連なる火山帯の総称で、その山域は広くなだらかな尾根が続く。福島登高会(以降は会とする)では吾妻の沢を70本以上遡行しているが、主に沢登りの対象となっている沢は10本未満である。その中でも松川は最上川の源流域であり水量も豊富で、吾妻の沢の中では比較的難度が高いとされている。会としては1976年 の記録があり、自分としては2012年 に大平温泉までを遡行している。2012年の遡行では少しやり残した感があり再遡行を考えていたが、あっという間に7年の歳月が過ぎてしまった。もはや来年とは言っていられない歳なので覚悟を決めて松川に向かうことにした。遡行時間が長くなるのでパーティーは足並みのそろう3人で組んだ。
 早朝4時30分に集合し大平温泉へと向かう。自宅からは80数キロとギリギリ日帰り可能なのだ。秘湯の大平温泉は大平集落から狭くて急な山道を7キロほど登り、道路脇の駐車場から15分歩いて松川に架かる吊り橋を渡りやっと到着する。その大平温泉駐車場手前の山道最高地点に自転車を1台デポした。山道を引き返して大平集落先の杉林の中に車を置くと7時にスタートする。林道を進むとすぐ右に分岐する踏み跡をたどり沢に降りたが、前回より約1キロ手前で入渓してしまったようだ。遡行を開始すると穏やかな流れが続く。松川は滝こそあるものの沢自体の斜度は緩い。白い岩と青い水が美しい。釜や淵をへつったり水に入ったりして越えていく。30分ほどで前回の入渓地点を過ぎると沢が狭まり左岸から矢沢が合わせる。またナメや釜が続き小滝や落ち込みがある程度なのでのんびりと歩いていく。8時20分頃だったろうか、トイ状の滑り台のような小滝でスリップして水流に落とされた。これまでも同様のことは何度かあったが今回は違った。いったん沈んで顔を出したが水流に引き戻されてまた沈んだのだ。自分のザックを西○さんが掴んでくれ上がれたが危なかった。見ると小滝の落ち込みには釜もなく狭い水路のような流れは泡立ち沸騰していた。緊張感が足りなかったというしかない。気を引き締め直して遡行を再開する。
 やがてヒョウタン淵と15m滝が現れる。直登できないので高巻きであるが、7年前はたまたま上手くいって約1時間だった。左右どちらからも高巻かれているが前回と同じく右岸とした。草付きの急斜面を灌木頼りに登っていく。右手の小尾根へのトラバースが結構厳しいので西○さんリードでロープを出す。小尾根を越えるとルンゼを下降して沢に戻る。3人でロープを出したこともあり高巻きに1時間半ほど要した。もう少し登ってから小尾根を越えればロープ無しで1時間かからなかっただろう。左岸の崖から水がしたたり落ちる個所を過ぎると、左に折り返すように沢が屈曲して15m滝が現れる。この滝も大きな釜があり取り付くことさえできない。ロープを出して左岸の枝沢を登り小さく巻いたが容易。
 小滝を2つ越えると記憶にある印象的な滝が現れた。左岸から2本の支沢が滝で合わせる三俣だ。松川遡行のハイライトとなる場所である。釜を滝が取り囲む別世界の景観をしばし楽しむ。支沢の滝は急斜面を標高差400m以上ある尾根へと駆け上っている。登るとすればひとつは登れそうだがもうひとつは下段は巻くしかないだろう。本流の7m滝は一見困難そうだが、右岸からへつってリッジを回り込み越えることができる。難しくはないが慎重にへつってクリアする。
 すぐツルツルの8m滝だが前回は2回トライして登れなかった。登っている人もいるようだが自分は登れる気がしない。ラバーソールなら可能なのかもしれないが今日の3人はフェルトソールだ。おとなしく右岸を高巻いた。15m滝は右岸の斜上するバンドから容易に登ることができる。しばらくナメとゴーロが続くと2段20m滝。前回はここの高巻きで上がりすぎてしまい、上の40m滝も一緒に巻くという大高巻きになってしまった。左岸から取り付いて登り落ち口方向を見ると、樹林の中に獣道か踏み跡かなんとなくラインが見える。回答がわかればなんだという感じだが容易に巻くことができた。やれやれと喜んでいる場合ではない。すぐ40m滝となる。
 今回の目標のひとつに40m滝の登攀がある。会の先輩が若い頃(1976年)に登った話を聞いたところ、右岸の灌木伝いに登ったのだと教えられた。観察すると自分にも何とか登れそうだ。中段まで登ってから50mロープを引いて壁に取り付く。灌木を頼りに中間支点を取りながら登ると灌木の切れる中間部のトラバースが嫌らしい。上部斜面はさらに立ってくるので右に回り込んで落ち口上にとも考えたが、自分には難しそうで踏んぎれない。ほぼ垂直斜面をモンキークライムで直上することにした。ひと登りしていったんピッチを切り2人に登ってもらう。つるべで伸ばしてもらうとほぼ水平移動で落ち口の上に出ることができた。やれやれ7年越しでの課題クリアだ。
 40m滝を登り終えてやれやれである。すぐ上にある6m滝を左岸から越えると、これで前回大高巻きして心残りだった部分を遡行できたことになる。次の20m滝は左岸のルンゼを登るが難しくはない。自分がトップでルンゼ上端の灌木に支点を求めた。おっさん60歳頑張る。しばし穏やかな流れを進むと堰堤状の10m滝。ここも直登できないので右岸を小さく巻く。沢は二俣になり右から合わせるのは明道沢である。二俣から上流は本流も明道沢も無色透明なのだが、出合で混じりあうとなぜか白く濁るのである。明道沢は鉄分が混じっているようで岩が赤くなっている。その辺も白く濁る原因となっているのかもしれない。
 二俣から本流を進むと3m滝。手前の釜を空身で泳いで取り付き、2人とザックを繋いだロープを一緒に手繰り寄せる。滝の岩が滑りそうなので右岸を巻いたが直登も可能のようだ。先行して降りるとミニゴルシュだ。後続の2人には降りずにそのまま水平移動するよう伝えて右岸のリッジを登り返す。少し上がった小さな平地が昔建物のあった跡地で、石積みがあり郵便受けや瓶などが落ちている。少し先に進み平地の端から少し上ると崖地に出た。見ると鎖とトラロープがあり沢までの20mほどを下降できそうである。誰がつけたものか知らないが少々危なっかしい鎖とトラロープを慎重に伝って降りる。考えてみると前回は平地から懸垂下降で沢に降りたのだった。その方が鎖とトラロープよりは安全だろう。沢に戻ると左岸に温泉が出ている。少しぬるめだが泥を掻き出して整備すれば使えそうだ。
 その先には突破困難なゴルジュがある。ゴルジュ出口は水面より一段高く岩の裂け目から滝で落ちている。ここを突破した人はいるのだが自分にはとても無理な話。さて高巻きとなるのだが、前回は急斜面を追い上げられてしまい大平温泉への道に出てしまった。今回もゴルジュから少し戻り右岸を登り始めたのは一緒だが、トラバース気味に右手の小尾根を越えることに注力する。かなりの急斜面を灌木頼りに登り、下降は50mロープの懸垂2回で沢に戻るとゴルジュ上流側口の少し上だった。なお会の記録では左岸を巻いている。とにかくこれで前回上手くいかなかった2か所の高巻きも、まずまずどうにかこうにかやり終えたことになる。遡行を再開するとすぐ大平温泉が見えてくる。こんなところによくぞと思う秘湯である。5m滝は右岸をへつって越えると左岸を大平温泉まで上がった。露天風呂に入りたいが時刻は既に18時半も近いので直ぐ帰り足だ。吊橋を渡り九十九折りの急登が足にこたえる。自転車デポ地点からは西○さんが自転車でヒルダウン。自分と羽○はヘッデンを点けてしばらく歩き,車を回収して登り返してきた西○さんに拾われたのは20時過ぎ。夕食を取り帰宅したのは各々22時過ぎ〜22時半と長い1日だった。
 松川は美しい水の色とナメに大釜のある堂々たる滝のある秀渓である。遡行距離はそれほど長くないので、大平集落の先から大平温泉までなら足並みのそろったパーティーでの日帰り遡行が可能だ。遠方から来る場合は2日間で上流部まで含めた遡行計画とするのが良いだろう。高巻きの踏み跡はほぼ無いのでルートファインディングが重要となる。パーティーの力量により所要時間はかなり変わる場合があるだろう。テン場は多くはないが見つかる。会の先輩からイワナは二俣より下流域はいないと聞いていた。しかし、近年釣った記録が出てきたが水質が良くなったのかたまたまなのかは不明だ。
 7年前に松川を遡行した時は沢登り4年目で経験も十分ではなかった。では現在はというとある程度の経験は積んだことにより、沢登りの総合力はアップしているが加齢によるマイナス分もあるだろう。結果として前回も今回も自分としては一杯一杯なのはあまり変わらないということだ。特に今回は水流に翻弄されて肝を冷やした。生きているから良い経験になったなどと言うこともできるが、場合によってはあっちの世界へ行ったかもしれない。沢登りの危険性は頭では理解しているが、本当のことは実際その場になってみないとわからないものだ。アクシデントを避けるにはその可能性のある所に近寄らないのが基本だが、すべてを避けることはできないので危険性を低減するリスク管理が重要ということになる。今回は落ち込みを甘く見て安易に近づいてしまいスリップに対する注意力も散漫だった。穏やかな渓相を甘く見て緊張感が欠けていたともいえる。今後は自分の教訓とするのみならずメンバーの安全にもより配慮することとしたい。さて松川上流部の遡行が残っている。火焔滝など大滝がありここを登らずして松川を遡行したとは言いたくない。今シーズンに日程がうまく取れるかだがなんとかしたいものだ。
 松川について少し調べてみた。西吾妻山の北斜面になる今は天元台と呼ばれている場所には西吾妻鉱山があり、昭和12年の採掘開始から昭和34年に閉山するまで硫黄を産出していた。操業当時も閉山後も強酸性水が明道沢や矢沢から松川に流れ込み、一時は生物のいない川になっていたという。その後は鉱毒水の地下浸透処理などにより改善されたが、松川は未だに酸性の状態が続いているようだ。これらのことから素人なりに想定すると、明道沢は今もかなり酸性が強い状態であり、温泉成分の含まれる松川本流の水と合流して反応し白く濁るのではないかと思われる。自分としてはこれで納得したいがあくまでも素人考えであり私見である。(熊)

.ルート図 往路=赤 復路=青
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 令元情複、 第435号)この画像をさらに複製する場合には国土地理院の長の承認が必要です。

トラック 登り=赤 下り=青

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