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No.4363
朝日連峰 大朝日岳 1870.3m二等三角点峰
山行種別 積雪期一般
あさひれんぽう 地形図 朝日岳、羽前葉山

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山行期間 2010年5月1日(土)〜3日(月)
コースタイム 2日 朝日鉱泉(6:16)→中ツル尾根分岐(6:30)→金山沢出合(8:08)→鳥原小屋(9:30,9:42)→鳥原山(9:55)→小朝日岳(11:32,11:37)→銀玉水(12:35,12:56)→大朝日小屋(13:24)→大朝日岳(13:58,14:10)→大朝日小屋(14:24)→西朝日岳(15:40)→竜門山(16:39)→竜門小屋(16:50)
3日 竜門小屋(5:52)→竜門山(6:11)→西朝日岳(7:07,7:16)→大朝日小屋(8:25,8:00)→大朝日岳(9:01,9:10)→平岩岳(10:00,10:19)→御影森山(12:04,12:14)→上倉山(14:23)→吊り橋(15:30)→朝日鉱泉(15:55)        
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
朝日鉱泉は洒落た外観だ 吊り橋はスリル満点だ 雪の残る尾根を登る
鳥原山が見えてきた ブナ林の登りは気持ちがよい 前方に鳥原小屋が見えてくる
小朝日岳を振り返る 大朝日岳の上にぽっかりと雲がかかる つぼ足の直線をスキーのトレースが横切る
大朝日小屋までもう少しというところで曇り始めてきた 山頂から次々とドロップアウトして行く、何ともうらやましい 大朝日岳を後にして竜門へ向かう
西朝日から袖朝日への稜線 竜門のピークを過ぎ小屋が見えてきた ようやく竜門小屋へ到着した
翌朝竜門への登り 竜門山へ登ると大朝日岳への稜線が目の前に続く 西朝日岳の肩から見る大朝日岳
三角に目立つ山が祝瓶山。その後方に飯豊があるはずだが霞んで見えない すっかり雪が消えてしまった斜面 御影森山のコルを歩くYさん
ブナの疎林を歩く イワウチワが咲いていた 急坂を下る
急坂を下りきると朝日川 福寿草が咲いていた 昨日渡った吊り橋、朝日鉱泉はもうすぐ

行動記録
 1日の午後6時45分頃、Yさんに自宅まで迎えに来てもらい出発。寒河江のスマートICで高速を降り、大江町から県道27号経由で朝日鉱泉に向かう。この時期はまだ県道289号で朝日町から木川ダムを経由するルートは開通していない。途中で道を間違えたり、なぜか道路の中央に大きな切り株が立っていたり、雪崩で半分塞がっていたりといろいろありながらも、心細くなるほど長く山道を走ると、やっと朝日鉱泉の明かりが見えてきた。朝日鉱泉のすぐ先、雪で行き止まりの地点に登山者用らしき駐車スペースがあり車を停める。午後10時頃ようやく到着。素直に高速を月山ICまで走り県道27号に入り、大井沢経由で来た方が道もわかりやすく、かえって早かったかもしれないなどと思う。途中で買い込んだ食料で遅い夕食にし、山行の無事を祈念し乾杯する。午後11時半頃就寝。
5月2日
 朝は自然に目覚めた。今日は快晴で登山日和のようだ。パンで簡単に朝食を済ませザックのパッキングをする。朝日鉱泉の玄関脇にある登山者カード入れに登山届を投かんすれば準備完了だ。朝日鉱泉からはV字形の谷のはるか向こう真正面に、遠くしかしくっきりと大朝日岳が見える。見えるとかえってあんな所まで行くのかと、標高差と道のりの長さに今さらながら気が引き締まる思いだ。なにせ今日は、大朝日岳からさらに足を延ばして竜門小屋までの予定なのだから余計にそう思う。
 状況によっては大朝日小屋で泊まることも考えていた。登山計画書にもそう書いていたが、もちろん目標は予定どおり踏破することだ。朝日鉱泉から70歳は過ぎているかと思われる男性が一人出てきた。声を交わすとこれから釣りに行くのだという。どのコースで登るのかと聞かれたので鳥原山コースなのだというと、それは良かったなぜなら中ツルコースをこの時期に歩こうとしても沢を跳べないので渡れないのだという。実は当初、往路か復路に中ツルコースを考えていたのだが、いろいろ考えて鳥原山コ−スに決めたのであった。その男性の言うとおりとして、もし中ツルコースを登っていれば途中で引き返すハメになり、計画が大幅に狂うところだった。こういった地元の生きた情報は有り難い。土地のことは土地の人に聞くに限る。
 案内板に従い朝日鉱泉の前の斜面を降りると、朝日川にかかる吊り橋がある。まだ歩み板が取り付けられていないので、ワイヤーと細い鉄材だけのスケルトン状態の吊り橋だ。落ちないように足下を確認しながら慎重に渡る。吊り橋を渡ったところで、出始めたばかりのふきのとうを夕食用に少々採取する。少し歩くと分岐があり、真っ直ぐ行けば旧朝日鉱泉があったところを経由して中ツルコースへ、斜め右に登れば鳥原山コースとなる。ここからいよいよ尾根に取り付いての本格的な登りだ。
 始めは意識的にゆっくり歩くようにする。今日は長丁場だけに、まだ100%目覚めていない体を徐々に登山モードに持っていくようにしないと途中でバテてしまいそうだからだ。急な登りをじっくり歩いていくと、登り始めはほとんど無かった残雪が徐々に増えてくるが、雪のないところではイワウチワが可愛らしいピンクの花を咲かせている。途切れ途切れだった尾根の雪も、標高が1000mを超えたあたりから連続するようになる。雪は腐れているが朝のうちはそれでもまだ締まっているので、気温が上がりツボ足で体力を消耗する前になるべく標高を上げたい。木々の間から大朝日岳が見え隠れしている。
 雪の上に新しい足跡があることに気づく。どうも今日は先行者が1人いるようだ。金山沢出合が近づいてきたが、その足跡はさらに先へと向かっている。沢はどこで渡るのかと思ったら、案の定その足跡は引き返して右側の斜面を金山沢へと降りていった。急な斜面を真っ直ぐに下り途中でシリセードでもしたような跡だが、我々は斜めに斜面を下ることにする。金山沢はあちこちで口を開けていたが、渡渉点となるところは雪で埋まっていたので難なく渡ることができ、対岸の尾根の取り付きで休憩とした。
 休憩後斜面を登り始めるが初めてでもありルートが不明確なので、先行者の足跡を追いかけるものの先行者も右へ左へとルートを探りながら登っているような足跡だ。その足跡は夏道があるであろう西斜面の中腹をトラバースしていくようだが、どうも尾根に上がってしまった方が歩きやすいと思えたので、そのまま尾根に登り上げることにする。登っている途中、その先行者の姿が左手前方に見えた。尾根の雪は適度に締まっており、ブナの疎林のなか快適に歩くことができた。だんだん木々がまばらになり視界が開けてくる。左手に見える大朝日岳はまだ遠い。
 辺りが雪原のようなところまで登ると鳥原小屋が見えてくる。先ほどの先行者は抜いてしまったようでまだ来ない。鳥原小屋で小休憩とする。小屋に入りノートを見てみると、この連休に朝日連峰を縦走する1パーティーの記載があるだけだった。今年のシーズンはまだ始まったばかりなのだ。朝日連峰の小屋はすべて避難小屋だがどれも比較的新しくしっかりした作りだ。特に鳥原小屋は清潔で整理されている感じがした。小屋の辺りがほぼ森林限界になる。
 ここまで2人だけで登ってきたのだがにわかに賑やかになった。古寺鉱泉から登ってきた人達のようで、まだ後続のパーティーがこちらに向かっているのが見える。朝日鉱泉からと言うと、皆さんは朝日鉱泉まで除雪が終わっていて車で入れることを知らないようだった。情報は朝日鉱泉のホームページを見るのが一番だ。大朝日岳から以東岳まで朝日連峰の稜線が見える。ほぼ1年ぶりに見る眺めだ。小休憩の後、いよいよ大朝日岳へと向かうことにする。
 熊越は南斜面が切れ落ちているが、ここに大きな雪庇が張り出している。この雪庇を避けるように北斜面側にトラバースする。熊越の先は銀玉水までは平坦な尾根道となるが、この辺りは7月ともなれば登山道の両側にヒメサユリが咲くところだ。
 銀玉水まで来ると、あと標高で100mほど登れば大朝日小屋だ。目の前の斜面を登り始めようとしたときに1人の山スキーヤーが滑り降りてきた。そういえば熊越のあたりでもスキーのトレースらしいものがあった。アプローチが長いし下りのルートが難しいのではないだろうか。でも機会があれば自分も滑ってみたいものだ。
 先ほどまでは快晴だったというのに。小屋についたときには雪まで降ってきてガスもかかってきた。これでは竜門小屋までは厳しいかと思ったが、小屋の管理人さんが「下の方までガスがかかっていないので、雪が降ってきたのは低い雲が流れてきただけだからまた晴れるよ」という。なんと30分もするとその通りになり、地元のベテランは違うなと感心することとなった。小屋の前では4人の山スキーパーティーが準備をしていた。なんと大朝日岳の山頂から滑るという。話には聞いたことがあるが、大朝日岳の東急斜面のY字雪渓を滑るのを見るのは初めてだ。
 リーダーらしき方がトレースつけるから後追いかけてくればルートがわかるよとしきりに誘うが、こちらはツボ足でこれから竜門小屋まで行く予定ではとても無理なこと。しかし自分には無理と思えた斜面も、実際にその場に立って見てみると斜度も何とか出来そう(帰宅してからカシミールで確認すると平均斜度35度)な気になってくる。それにしても気持ちが良さそうだ。来シーズンの課題としよう。大朝日岳からは360度の大パノラマだが、先を急がねばならないので眺めを堪能するのは明日にして足早に小屋まで下る。既に予定より80分ほど遅れている。しかし計画では竜門小屋着を15時と余裕を持たせていたので、これからの遅れも考え17時到着に変更する。大朝日小屋からは竜門小屋まで稜線を淡々と歩くことになる。
 風のため稜線の雪は飛ばされているので、歩くラインを登山道より東側に振り雪渓の上を歩く。凸凹のある登山道より平坦な雪渓のほうが歩きやすいのだ。それでも疲労を感じ始めた体に、中岳と西朝日岳の登りはきつかった。相方のYさんが立ち止まり腰を曲げて背筋を伸ばす仕草をするようになった。背筋が痛いのだという。久しぶりに担ぐ重いザックの影響だろう。竜門小屋は竜門山の陰になり見えない。竜門山のピークを過ぎると、やっと眼下に小屋が見えてきた。斜面を駆けるように下りようやく竜門小屋へ着いた。
5月3日
 午前4時過ぎに起床、予定より少し早く小屋を出る。大朝日岳までは昨日来たルートを逆にたどることとなる。昨日は眺めを楽しむ余裕もなかったが、今朝はたっぷりと眺めを楽しみながらの歩ける。朝のうちは気温が低く雪が締まっているので沈まず歩きやすい。反面場合によってはアイゼンが必要になるかもしれないが、まだそれほど必要も感じない。しかし昨日の足跡は登山者の多くがアイゼンを付けていたことを示している。風が少し強い。風速10〜15mくらいだろうか。吹き付ける風が冷たいのでカッパのフードを被る。
 雪面のあちこちにクラックが走っている。クラックは大きいものから小さいものまで様々だが、特に注意しなければならないのは雪庇のクラックと表面からはその存在が分からない隠れクラックだ。ヒドンクレバスのようだ。分かってはいても今回の山行では何度もハマってしまった。日本海からの強風が吹き付ける西斜面は雪が飛ばされ、雪庇は稜線から東に向けて発達している。
 大朝日小屋の方から山スキーの4人パーティーが歩いてきた。昨日大朝日岳の山頂から滑っていた面々だ。スライドするときに声をかけると西川山岳会の方々で、3月に湯殿山でも会った人達らしいことがわかった。これから狐穴小屋まで行くという。連休を利用しての会山行であったようだ。
 大朝日小屋で休憩ってから、昨日も登った大朝日岳に登る。今日は大パノラマを堪能する。あまりゆっくりも出来ないので、デジカメに風景を納めて御影森コースへと登山道を下り始める。こちら側の斜面は今までとは違い雪が付いていない。土の上を歩くとなると、プラスチックブーツのYさんは少々歩きにくそうだ。
 平石山の山頂で風を避けて休憩にする。この御影森コースは標高を下げて樹木が視界をさえぎるまで、ずっと大朝日岳と小朝日岳を眺めながらの歩きとなる。特にこの時期は残雪の雪模様が山肌に映える。眺めからいえば御影森コースはお勧めのコースといえるが、なぜか朝日鉱泉から大朝日岳への3つのコースの中では一番歩く人が少ないという。
 御影森への鞍部から標高差約100mを登り上げれば御影森山の山頂だ。ここで休憩にする。本格的な登りはこれで最後だ。ここからの眺めもまた素晴らしい。大朝日小朝日の眺めが素晴らしい。御影森山から先はまっしぐらにただひたすら下るのみだ。
 登りでは難儀する腐れ雪も、下りではほどよいクッションと滑りで、疲れを感じ始めた我々でも足の運びは軽快だ。しかしそこに落とし穴があった。明りょうな尾根を下ればいいのだと思い、コースを誤ることなど考えもしていなかった。下り足の速いYさんが先行するのにまかせ、後からついていくような形になっていた。気が付くと細尾根のヤブをかき分けるようになり、ようやくこれはおかしいと思った。あわててGPSを取り出し確認すると尾根を間違って下っていたことに気付いた。しまったと思い、先行していたYさんを呼び戻し登り返すこととなった。1361標高点の先にある尾根の分岐で右の支尾根を見落として、左の支尾根に進んでしまったようだ。
 下ったところを再度登るのはキツかった。油断していた自分が腹立たしい。気を取り直して登り返し、尾根の分岐で正しい尾根へと転進してやっとホッとする。GPSによればこのミスによる損失は往復距離1.2km、標高差177m、所用時間53分であった。
 少しでも挽回したくて上倉山の山頂をパスしようと、東斜面をトラバースし回り込んだ。しかしこれがまた失敗だった。小沢があり目論見どおりには歩けず、結局くたびれただけでほとんどメリットはなかったのだ。どうも疲れてくると良い判断が出来にくくなる。この後は素直に歩くのが一番と思い、余計なことは考えないことにした。
 尾根の雪もとぎれとぎれになってくる。やがて雪はなくなり登山道を歩くこととなった。この辺りは下りでも辛くなるほどの急坂で、木の根も出ているので転倒に注意が必要だ。急坂を下りきると朝日川を吊り橋で渡る。吊り橋を渡った対岸に旧朝日鉱泉はあったらしい。石垣などの痕跡が当時を物語っている。
 昨日最初に渡った吊り橋で対岸に渡り、15時55分に朝日鉱泉到着。予定より2時間半近く遅くなったが、明るいうちに帰れたのは幸いであった。この後、車のバッテリーが上がっていたというアクシデントが待っていた。いろいろ反省点もあるが、朝日連峰を残雪期にロングルートで縦走したということには達成感があった。とにかく無事に帰れたのでやれやれだった。(K.K)

概念図



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