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No4731. |
吾妻・若女平
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山行種別 |
山スキー |
あづま・わかめだいら |
地形図 |
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山行期間 |
2013年1月27日(日) |
コースタイム |
天元台湯元駅(8:35,9:00)=リフト終点(9:36,9:48)→コル(10:30)→天狗岩(11:24)→休憩(11:38,11:52)→ビンディング修理(13:07,13:22)→若女平(14:38,14:48)→細尾根(15:51)→小坂(16:20)→西吾妻スカイバレー(16:54) |
写真 |
写真は拡大して見ることが出来ます |
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天元台湯元駅 |
天元台スキー場しらかばゲレンデ |
中大巓を巻き登る |
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成長した樹氷 |
コルのツアー標識 |
梵天岩・天狗岩を目指す |
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吹雪いても視界はある |
天狗岩にて |
パウダーを楽しむKさん |
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沢筋を下る |
右板のビンディングを破損 |
ツアー標識 |
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平坦な若女平 |
崩落した雪庇 |
雪庇の発達した細尾根 |
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小坂の急斜面をトラバース |
藤右ェ門沢の橋を渡る |
暗くなる前に車道に到着 |
行動記録 |
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自分が山スキーに行くフィールドは、もちろん近場の山が多いわけで、その中でも吾妻山は蔵王と並んで訪れる回数が多いといえる。吾妻山とはいっても、吾妻山という山があるわけではなく、東吾妻山、中吾妻山、西吾妻山などを総称して吾妻山と言い、吾妻連峰と呼称している。吾妻山は温泉が豊富で、また古くから山スキーのツアーコースが数多く存在し、いわゆるそれらのクラシックルートは日帰りから山中泊を要するものまでと様々ある。クラシックルートに少なからず興味がある自分は、いつかすべてを歩いてみたいと思っているのだが、今回の若女(わかめ)平下りコースはまだ滑ったことがない。
このコースは天元台スキー場を利用することにより、登りにあまり労力をかけずに標高差1000m以上の下降ができる。条件が良ければすこぶる快適な滑降が楽しめるようだ。このコースを昨年1月に初めて滑ろうとしたのだが、あまりの深雪とシールトラブルにより、いくらも歩かないうちに敗退したという経験がある。そこでリトライすべく27日に若女下りを計画したのだが、日本海側は25日から大雪となり26日も降雪が続いていた。米沢市街地では50センチの積雪があったという情報もあり、天元台でもかなりの深雪が予想される。当然悩んで計画変更も考えたが、27日は天候が回復傾向であり、あえてこんな状況の時の吾妻山を確認したいということもあり、中途退却を覚悟で天元台に向かってみることにした。
4人乗り合わせて天元台へ。ロープウェイ駅下の駐車場に車を止める。8時40分発のロープウェイは間もなく出るとのことで間に合わず、次の便にして窓口に登山届けを提出する。天元台では13日から14日にかけ、スノーシューの2人の遭難騒ぎがあったばかりだ。無事救出されたものの、天元台周辺では毎年のように遭難が発生している。
ロープウェイを降り、リフトを乗り継いでいると寒くなってくる。つがもりゲレンデのリフトは、ちょうど動き始めたばかりでグッドタイミング。3本のリフトを乗り継いだゲレンデトップは、標高1820mになっている。機械の力で900mも標高を上げてもらえるのだからありがたいのだが、その代わり2100円の料金がかかる。
準備をして南方向の斜面へ踏み込み、中大巓を回り込むように登り始める。スキーでも脛まで潜るラッセルが続くが、雪が軽いので今のところそれほど苦にならない。
中大巓のピークは踏まずに、直接西吾妻山とのコルを目指す。樹林帯の中は風も穏やかで、時々日が差すなど条件は悪くない。40分ほどでコルにあるツアー標識に到着。進路を右に振り、目指すべき天狗岩・梵天岩方向を見るがガスの中でおぼろげにしか見えない。しかし風は予想よりも強くなく、視界もある程度確保できているので贅沢は言えない。近くまで来てやっと天狗岩が確認できる。もう西吾妻小屋は近いし計画書にも入れておいたのだが、今日は下りに時間がかかりそうなので、小屋には寄らず手前から右へ90度進路を変えて若女平へ下ることにした。この辺りの地形は平坦でつかみ所が無く、視界が無いときは迷いやすいので、コンパスかGPSで方向を決めるしかない。以前はツアー標識を追えばルートを外れることもなかったのだろうが、長年のうちにツアー標識の多くは無くなってしまい、今はもうあてには出来ない。小屋には寄らないので吹きさらしで休憩し、スキーのシールを外す。
さあ滑降だと踏み出したが、樹間の雪面のうねりが激しく滑るどころではない。しばらく悪戦苦闘するが、沢筋ならもう少しましではないかと思い、下降ルートとして予定していた尾根の西側の沢(竜崎沢)にルートを変更することにした。少し下ると樹間が広がり、滑ることができるようになってきた。風もまったく無く穏やかで別世界のようだ。フカフカのパウダーを滑るのは楽しいが、あまりの深雪にメンバーも転倒続出だ。でもそれもまた楽しい。
しかし勾配が緩むとすぐ下りラッセルとなってしまい、滑るよりラッセルの時間が増えてくる。下っていると右足がビンディングから外れやすくなってきた。ブーツの底に雪が付いたのかと思ったがどうも違う。何とか誤魔化して滑っていたが、やがて限界になり休憩を兼ねて点検すると、なんとプラスチックの部品が破損していた。部品の修理は不可能だが、このままではこれ以上下ることは出来ない。ブーツに対してかなりキツ目にビンディングの前後間隔を調整してみると、無理をしなければ何とかなりそうだ。ラッセルを再開したが、とりあえず外れないので、このまま進むことにした。この雪にツボ足では腰までのラッセルとなり、今日中の下山は不可能になるので助かった。山スキーのビンディングは壊れないという、根拠のない思い込みもあったように思う。やはりパーティーにワカンは1組持参すべきだろう。
そのうち沢があちこち口を開けるようになってきた。まだ雪で埋まりきっていないのだ。やむなく右岸の斜面をトラバースするが、ここもほとんど滑ることができずに歩く。やっと若女平の上部に着いた時は、既に午後2時半を過ぎていた。若女平はほぼ平坦な緩斜面で、脛から膝までの深いラッセルが足にこたえる。ラッセルに気を取られていると、いつの間にかルートが逸れてしまい、余計にラッセルの距離が長くなってしまう。若女平の末端から急斜面を滑り降りると細尾根になる。特に右側は小和須知沢へと切れ落ちている急斜面で、雪庇も右側にかなり発達している。自分がトップで滑り始めた瞬間「ドフッ」と鈍い音がして、右のスキー板から雪庇の先端までが崖下へと落ちていくのが見えた。自分はそのまま滑り安全圏に逃げ込み、ギリギリで落ちるのは避けられた。後ろを振り返り見ると、落ちた雪庇は幅2m、長さ5mほどのように見える。スキーで表層が切られたのをきっかけにして、一気に雪庇の下まで切断したのだ。いやはや肝を冷やした。もし自分も落ちていれば、怪我をしなかったとしても、登り返すのは極めて困難な状況になっただろう。雪庇には注意していたつもりだったが、滑るラインがブッシュを避けた時に右側に寄ってしまったようだ。運良く助かったが、こんな幸運は2度目は無いかもしれない。もっと慎重に注意しなければいけない。その後も雪庇に穴が開くなどしたが、全員無事細尾根を通過した。
細尾根が終わると植林したらしいカラマツ林となり、やがてスギ林へと変わる。ほぼ夏道を追って小坂の急斜面を右に下ると、スギ林をトラバースして藤右ェ門沢に下りる。沢に架かる橋を渡り、ここでも膝までのラッセルをする。湯ノ入沢の橋を渡ると西吾妻スカイバレーの除雪終了点に出た。到着は16時54分で薄暗くなり始めていたが、何とかヘッデンを点ける前に下山できてホッとする。ラッセルし続けた太ももの筋肉が、久しぶりの酷使でプルプル痙攣していた。ロープウェイ駅に携帯で下山報告をし、車を取りに坂道を登る。帰り道すがらの白布温泉では、道路脇の雪壁に設けたろうそくの明かりが印象的だった。
今回はある程度想定していたとはいえ、やはり新雪の深雪は下りラッセルとなり、雪が軽かったとはいえかなり手こずった。アクシデントでもない限り、通常これ以上時間がかかることはないと思われる。条件の良いときなら、余裕を見ても3〜4時間で今回のルートは歩けるだろう。ただしそれは山に入ってみなければ分からない。いずれにしても条件、特に雪質に所要時間は大きく左右される。ビンディングトラブルに備えたワカンは、次回より共同装備のひとつに加えよう。いろいろと反省点が多い山行となったが、これを良い意味で今後の山行に活かしていきたいと思う。(K.K) |
概念図 |
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トラック |
登り=赤 下り=青 |
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