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No4772
月山・肘折
月山 1979.5m一等三角点峰
山行種別 山スキー
がっさん 地形図

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山行期間 2013年4月29日(月)
コースタイム 肘折(4:45)=姥沢(7:05)=リフト上駅(8:32,8:41)→月山(10:35,10:48)→千本桜(11:10)→立谷沢川(11:42,12:01)→念仏ヶ原避難小屋(12:46,12:54)→小岳(13:52,13:58)→赤沢川二俣(14:17,14:24)→978m(14:33,14:55)→ネコマタ沢源頭(15:00)→大森山基部(15:46,15:54)→大森山頂(16:20,16:28)→林道(16:47)→朝日台(肘折)(17:20,17:33)=姥沢(19:50,20:02)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
肘折の車のデポ地点 リフト上駅より登高を開始する 大勢の登山者が斜面に取り付いている
急斜面は氷化しているところもあり注意が必要 月山の山頂でのAさん 気持ちよさそうに滑るOさん
気持ちよく沢を滑り降りる 千本桜にて 千本桜から見える肘折ルート
千本桜の急坂 雪が重くなってきたがそれでも楽しい 1221mピーク先
立谷沢川へと下る(右側が雪崩れた) まだ雪で埋まっている立谷沢川 シールを貼って130mの登り
念仏ヶ原から見る月山 避難小屋を目指して進む 2階建ての避難小屋もまだ雪の下
先行パーティーに続き小岳へと向かう 赤沢川の支流を滑る 978mピークでひと休み(正面に大森山が見える)
ネコマタ沢は結構な急斜面 Yさんの滑りは常に安定している 778mピーク下より左岸を登る
北斜面をトラバース 大森山の急斜面を登る 大森山に到着
大森山からの急斜面を下る 下に林道が見えてきた 林道を歩く
朝日台へと最後の斜面 車デポ地へ無事到着 女子2名お疲れ様

行動記録
 月山は山頂から四方にルートが延びているが、その中でも肘折ルートは屈指のロングルートだ。通常は姥沢から肘折までの縦走なのだが、車を利用するにしても公共交通機関を利用するにしても、かなり時間がかかるのが難点となる。縦走には丸1日かかるので、車を利用する場合は肘折温泉に1台デポしておき、もう1台で姥沢に移動してツアーに出発し、肘折に到着後に姥沢にデポ車で車回収に向かうということになる。肘折〜姥沢間はルートにもよるが100〜110kmほどあり、車での移動に2時間はかかる。このため、縦走は1日で終えても前後の移動があるので、全体で2〜3日間かかることとなる。あるいは、あえて縦走に2日間かけ、前後の移動時間を取るという方法もある。もしくは何らかの形で、車を回送するという手もある。いずれにしても時間と費用のどちらか、あるいは両方が必要となるのだ。 とにかく思いつきで簡単に実行できるルートではない。このため、肘折から月山山頂までの日帰りピストンを試みる方もいて、かなりの長距離と長時間行動ながら成功している事例がネットでも散見されるが、脚力と持久力に優れた人だけの領域だろう。自分も以前からやってみたいと思っていたこともあり、思い切って肘折ルートにチャレンジすることにした。肘折にあるアメダスの積雪深データを見ると1mほど。まだ十分な積雪量があるが、時間単位でどんどん減っていくのが分かる。やるなら今と思い決行することにした。
 午前4時に目を覚ます。前日は湯殿山をやった後に肘折温泉に2台で移動してきた。車をデポするのは肘折温泉から見ると、川をはさんで西側の高台になる朝日台である。登っていくとちょうど2台分の駐車スペースがあったので、ここをデポ地点と決め車中泊である。自分が作ってきた葉ワサビの醤油漬けをつまみに軽く呑み、腹ごしらえをしてから寝た。空には満天の星であった。今日はここに自分の車をデポし、Aさんの車で姥沢へ移動する。朝食を済ませ4時45分頃出発。7時過ぎには姥沢に到着し、今朝向かってきた他の3人と無事合流。この時期になると滑るところも限られてくるのか、駐車場では次々と知ってる人にばったり。今回はリフトを利用する。歩いて登っても15〜20分程度しか違わないのだが、270mを登る体力を温存したいがためだ。早朝から行動したい場合はリフトは当然使えないが、そうしているパーティーもある。準備をしてリフト上駅から歩き始めたのは8時41分だった。快晴で風もなく最高のツアー日和だ。今日1日この好天が続いてくれることを祈る。
 今年の月山は豊富な雪で、真っ白に輝き神々しいほどだ。見上げると多くの登山者が、砂糖の山に群がる蟻のように点々と続いている。この時期、山頂へ夏道ルートで登ろうとすると、上部でガチガチのアイスバーンに悩まされることがある。スキーアイゼンの無いOさんと慣れていないAさんに配慮し、右から大きく回り込むルートを取ることにしたが、調子よく登っているといつの間にか自分だけのひとり旅に。後続はさらに大きく回り込んだようで、稜線に出て後続を待ち合流する。山頂は賑わっていて、皆さん快晴の月山からの眺めを楽しんでいる様子。集合写真を1枚撮ると、先が長い我々は休憩もそこそこにシールを剥がした。これから滑り込む月見ヶ原の大斜面を眺めると、何人か滑り込むのが見える。肘折ツアーだろうか、それとも登り返すのだろうか。
 月見ヶ原の大斜面は最高の一言。広すぎてどこを滑って良いのか分からないほど。雪も思いのほか良く、広大な自然のゲレンデに飛び込むと、歓声が自然に出てくる。ひと滑りして振り返ると、上部にSさんがいるらしい。自分は気付かなかったがスライドしたようだ。後で分かったが、東斜面を滑って登り返していたらしい。こちらはこのまま沢に滑り込む。一気に滑るのがもったいなく、何度も立ち止まり振り返り画像を撮る。山頂から約2kmの滑降を楽しみ、右の尾根にトラバースすると千本桜の急斜面となる。滑り降りて緩斜面になると、雪が重く感じターンしにくくなる。山頂から700mほども標高を下げているのだから、この好天では雪も腐って当たり前だろう。
 1221mピークを右から巻くと、念仏ヶ原の雪原が近く見えてきた。右下に見える立谷沢川の沢床には、先行パーティーの姿も見える。急斜面を立谷沢川に下り始め、安定していない新雪をカットすると、ズルズルと表層が雪崩れていく。ラインを変えて雪崩れ斜面の脇を滑り、立谷沢川に降り立つ。事前に調べた記録では、沢が口を開け橋が現れている画像を目にするが、今年はもう5月になろうというのに、沢はすっかり埋まっていて橋がどこかも分からない。おそらく橋だろうと思われる辺りで昼食休憩とする。
 立谷沢川からはシールを貼り、約150mの登り返しとなる。太陽に照りつけられながら、大汗をかいて登ると念仏ヶ原だ。先行する3人パーティーが、左前方に小さく見えてきた。月山に盛んに巡礼が行われていた頃、巡礼者は何を考え念仏ヶ原を歩いたのだろうか。今我々の頭にあるのは、まだまだ先は長いということと休憩はまだかということだ。振り返れば、神々しい月山がたたずんでいる。月山が我々を眺めているような、もしかすると見守ってくれているような気がしたのは自分だけだろうか。念仏ヶ原の避難小屋は2階建てなのだが、まだ屋根が1.2mほど出ているだけだった。この小屋辺りではまだ5〜6mの積雪があるのだろう。他の記録ではこの時期に、1階まですっかり現れた画像もあったが、まったく今年の雪の多さには驚くばかりだ。
 小屋での小休憩後にちょっと遠回りしてしまったが、尾根の夏道沿いに復帰する。ほどなくほぼ北へと進路を変え、少し下って1199mピークに登り返す。ここで3人パーティーに追いつく。次のピークの小岳(1,225.7m)は右から巻くように登り、立谷沢川から貼りっぱなしだったシールをようやく剥がすことができた。地形図を見ると、赤沢川の支流が滑りやすそうだったので沢に下りることにする。小岳から先は地形が複雑なので、しっかり地図を読むことが必要だ。先行者のトレースがあっても、それが効率的なルートかどうかは分からないのだ。沢ではスキーが走らず、ワックスを塗り忘れたことに気付く。赤沢川の二俣を回り込んだところで、978mピークに登るため本日3度目のシール装着となる。このピークは左から巻けば、シールでなくとも越せそうに見えるがどうだろうか。978mピークで小休憩し、Aさん持参の高いワックスを借りて塗る。もう先が見えてきたことで、どこまで続くのかと思っていたであろう女子2名も、ややホッとした表情になる。とにかく今回の女子は強い。男子と同等以上にやれる力量がある。
 978mピークのすぐ北に見えるピークのコルに下り、右から東尾根を乗っ越すとネコマタ沢だ。沢の源頭部斜面は露出しつつあったが、沢床はデブリに埋まることもなく安定していたので滑り込む。そのまま下り、沢が二俣になる778mピークの直下で左岸に取り付く。自分はスキーのまま強引に30mほど登ったが、他のメンバーはツボ足で登ったようだ。尾根の北斜面をしばらくトラバースすると、大森山の基部に到着する。ここまでずっと雪は繋がっていたのだが、ここにきて見上げる大森山の西側急斜面に雪は付いていない。南斜面には雪が付いている(おそらく北斜面にも)が、急斜面でツリーホールもかなり開いているので、残雪をキックステップで登ることにする。急斜面に取り付くまで歩いた夏道の両脇には、ピンクのイワウチワが咲いていた。
 大森山の山頂まで、120mの登りは疲れた足にこたえるが、これが最後の登りと思うと足が動いてくれる。男子3名は競うようにくっついて登るが、後続の女子はトークが賑やかで余裕にさえ感じる。大森山から急斜面を夏道沿いに滑り降りると、まだ雪に覆われた林道に合わせる。平坦な林道をしばらく歩き、ショートカットして最後の急斜面に出ると、デポしておいた車が小さく見えた。再び林道に合わせ、平坦な朝日台の雪原を歩いていくと、ほどなくデポ車に到着。長かった肘折ツアーもゴールだ。時刻は17時20分で、ほぼ計画どおりであった。お互いの健闘を讃え握手する。女子2名もよく頑張った。これまでの山行からあまり心配はしていなかったが、それにしてもよく頑張った。デポ車に5人分のスキーとザックを積み込むと、ちょうど向こうから3人パーティーが歩いてくるのが見えた。彼らに手を上げてエールを送り、姥沢へと車をスタートさせた。(K.Ku)

 今回はロングルートではあったが、ワンデイで距離・累積標高差ともに肘折ルート以上の山スキーは何度かやっていたので、大体の想定はできた。しかし、GPSがあるとはいえ、地形図に現れないような細かい地形の処理も含めたルートファインディングには、少々不安があった。その点では過去に1度肘折ルートを滑ったことがあり、ルートファインディングにも長けたYさんの存在は心強かった。ルート上にはある程度トレースが残っていたが、そのトレースばかりを追うのではなく、地形を見てその時点で最適と思えるラインを新しく引き直すことも必要だろう。いずれにしても今回は、好条件が揃い計画どおりのツアーとなった。同行者各氏に感謝したい。また今度肘折ルートをやるとしたら、途中で1泊してゆっくり歩いてみたいと思うと同時に、ワンデイでの肘折〜月山ピストンのチャレンジも捨てきれないなと思うのであった。残念だったのは、時間が合わず、せっかく訪れた肘折温泉の湯につかることができなかったこである。

概念図

トラック 登り=赤 下り=青


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