今回のミッションは、会の若手のW辺とO島に石転び沢を経験してもらうことだ。思い起こせば自分も山スキー初シーズンの7年前に、現会長の和〇さんに連れてきてもらったのが初飯豊だった。飯豊を自分で計画して滑るにはある程度の総合力が必要だが、若手に伝授したいという思いがある。他のパーティーメンバーはK藤さんとF井さんだが、F井さんも飯豊は今回が初めてとなる。
前日23時過ぎに倉手山登山口の先にあるゲート前に到着。いつもの梅花皮荘分岐前のゲートからすれば1.5キロほど先まで入れることになる。その分移動が楽になるのでありがたい。道路脇の駐車スペースには10台以上の車とテントが数張りあり、思いのほか登山者が多い感じがする。我々もテントを張ると軽く入山祝いをして就寝。21日は4時30分起床。スタートは5時00分のつもりだったが、なんだかんだで結局5:28。今回は足並みをそろえるため徒歩にしたが、自転車を持ち込めばその分時間短縮になる。路面に雪はまったく無い。テクテク歩いて温身平の先の堰堤までは約1時間半ほど。階段を上ると登山道となり、小沢に残雪に水たまりと長靴が役に立つ。登山道の崩壊箇所にはロープが張ってあり感謝。「うまい水」でひと息つき「婆マクレ」を慎重に通過すると登山道は沢へと降りる。沢は雪渓に覆われているので、長靴をデポしてスキーに切り替えることにする。いつもはもう少し先の地竹原から雪渓に乗るのだが、今年は雪が多いようだ。
左に滝沢、右に梶川を見て歩いていくと石転ビノ出合。これから登る石転び沢の全貌が見える。出合からは稜線までは約1,000mの標高差があり、日本でも有数の大雪渓だ。点々と小さく斜面に取り付いている登山者が見える。若手2人はここでスキーアイゼンを装着。ピッチを上げないよう意識してゆっくり登ってもらう。石転び沢はいつも土の混じったデブリが多いのだが、今日は比較的少ない印象で登りやすい。見上げると先行者達は大きくジグを切って登っているが、我々はほぼ真っすぐ登っていく。石転び沢は落石が多いので注意しながら登るようアドバイスするが、落ちてくる石はほとんど無かった。雪が安定しているからだと思うが、ちょっと拍子抜けではある。
先行者を何人か追い越し斜度が緩んだところ(標高1,500m付近)でひと息つく。この先は石転び沢でも一番の急斜面になり、シールでも登れないことはないのだがツボ足に切り替える。落ちる可能性もありツボ足の方が楽というのが自分の考えだが、我々に追いつき追い越していった単独スキーヤー(後で那須の山だよりのakiさんと判明)はシールで登っていった。斜面にブーツを蹴り込みキックステップで登っていく。なぜかこういう時は自分がトップになってしまう。セカンドのO島だけがアイゼンを付けている。一歩一歩ゆっくりと各自のペースで登るのでパーティーは縦に長く伸びる。やがて梅花皮小屋の屋根が見えてきた。ツボ足にしてから1時間弱でO島と自分が先に稜線に到達。石転ビノ出合からは3時間弱だった。
O島が北股岳を見ているので登ってきたらというとすぐ向かって行ったが、オジサン達はその若さが羨ましい。我々は昼飯を食べると寝転んで休憩だ。風もなく日差しが温かく心地よい。小屋前でゆっくりした後はいよいよ滑降。ダイナミックな景観の中、急斜面にドロップしていく爽快感が素晴らしい。初めてのメンバーも臆するどころか嬉々として飛び込んでいく。斜面の縦溝はわずかでザラメ雪の状態も良く快適に滑り降りる。石転ビノ出合から下はさすがに雪面がガタついてくるが、それでも近年のなかでは良い方だ。長靴デポ地点でスキーを担ぐと長い歩きが待っていた。
今回は条件も良く、石転び沢が初めての3人も無事問題なく滑ることが出来た。この日に我々以外で石転び沢を滑ったのは3人だけで、他に一般登山者が数名。門内沢には5人ほど入っていたようだ。我々がツボ足に切り替えた急斜面手前で、体力と時間切れから2人ほど登頂を断念した山スキーヤーがいた。石転び沢を登るにはある程度の体力があれば大丈夫だが、ペース配分には注意が必要だ。温身平までは自転車を利用するとしても、スキーを担いでの歩きは長くそこそこハードな行程となる。飯豊山荘まで町道が開通すればかなり楽になるので、開通を待つ(今年は23日に開通した)方法もある。さて、若手2人には次回の石転び沢を自ら計画してくれることを期待したい。その時は足手まといにならないよう注意して参加させてもらおう。(K.Ku)