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No5989
安達太良山・合宿報告
1699.7m三等三角点峰
山行種別    山スキー
あだたらやま 地形図

トップ山スキー>安達太良山・冬山訓練合宿報告

山行期間 2019年1月19日(土)〜20日(日)
コースタイム
1月19日
塩沢スキー場(8:36)→ゲレンデトップ・ツアーコース入口(9:43)→八丁林→テン場(12:30)テント設営・ビーコン操作訓練終了(15:00)
1月20日
テン場(7:45)→勢至平分岐(7:49)→峰ノ辻(8:51,8:53)→牛ノ背(9:15)→本山(9:38,9:55)→船明神分岐(10:12)→烏川右俣源頭(10:19)→積雪観察・CTテスト・滑降→振子沢源頭(11:28,11:37)→振子沢登山道出合・訓練(11:39,12:09)→振子沢馬車道出合(12:21,12:29)→勢至平(12:54,13:32)→休憩(13:50,14:02)→塩沢スキー場・ゲレンデトップ(15:06,15:21)→塩沢スキー場・登山口(15:32)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
強風の中を出発する バーンは硬く慎重にジグを切って登る ゲレンデトップから作業道へ入る
八丁林の開けたルート ツアー標識もしっかり残っている テン場も近くなりヤブが少なくなってきた
テン場に到着する 最後の仕上げスコップで整地する 風よけブロックもできあがり設営完了
ビーコン捜索訓練 夕食の準備 翌朝テン場を出発する
勢至平分岐から峰ノ辻へと向かう 峰ノ辻に到着 牛ノ背の稜線を目指す
船明神分岐から牛ノ背を行く 本山の手前にスキーをデポする 山頂から見る和尚山
集合写真 船明神分岐へ戻る 下を通る大勢の登山者
矢筈森避難小屋跡から烏川右俣源頭へ コンプレッションテストで雪崩判断 まずは烏川源頭をひと滑り
矢筈森基部の振子沢源頭に立つ 振子沢の滑降を開始する 振子沢のオープンバーンは気持ちが良い
ストックを使った滑落停止の練習 くろがね小屋へと向かう くろがね小屋が見えてきた
銀明水を抜け勢至平へ向かう テントを撤収し下山を開始する 八丁林への下り
まだまだ灌木がうるさい 上部は快適な下りとは言えなかった 八丁林から作業道へと入る
作業道で気を抜くと落ちてしまう ようやくゲレンデトップに戻った ゲレンデを滑り降り無事山行を終了する

行動記録
 東北に赴任して3年目、「山スキーをやってみたい」と、昨年から福島登高会にお世話になり2シーズン目となる。今回、会の年計画山行の一つである冬山合宿に参加した。山スキーどころか、夏山・冬山の全てにおいて初心者の私は、安全第一を心がけ皆さんの足を引っ張らないようにとの思いである。

1月19日(土)
 5時00分に起床、まず装備品を3回確認した。携行する装備については決められているのだが、ここ数日ザックの中身をどうしたら良いかいろいろと検討したが、結局絞り込めずに20kg近い重量になってしまった。さらに前日は子供の様に興奮して、まったく寝付けず気が付いたら朝という始末である。
 7時30分に集合し、泊まりの4名とサポート役の2名で出発地点である二本松塩沢スキー場を目指した。スキー場の駐車場に着くが猛烈な突風状態で、暫し車中で様子をみることになった。待つものの風が収まる気配はなく出発準備を始める。8時40分に出発するが、本来の計画ではリフト1本を利用して登る予定だったが、時間に余裕があるのでリフトを利用しないで下から登ることになった。
 リーダーの鈴○さんを先頭に行動開始した。過去の記録では、スキー場左側の作業道から入る場合もあるようだが、今回は第3ゲレンデのトップから八丁林ツアールートである作業道に入ることにした。
 この第3ゲレンデだが、スキー上級者向けのコースなので当然上部にいくほど斜度が増してくる。あわせて気温の低さと強い風によりコース中央部はアイスバーンになっていて、自分にとっては難易度の高い登攀を強いられた。9時40分、ゲレンデトップから八丁林のツアールートである作業道に入り勢至平を目指す。
 作業道は斜度はきつくないもののブル道の幅しかないので狭く、かつ右側はかなりの急斜面である。慎重に登攀を続ける。途中1箇所大きくうねりが酷く雪庇のようになっている場所があった。回り込むように通過しようと試みたが1mほどの厚みが簡単に崩壊し、急斜面を落ちていく。小規模な雪崩であるが初めて見る風景はすこぶる不気味であった。慣れない人はスキーを脱いでツボ足でラッセルして通過した。
 ほどなくして道は平らになり八丁林の作業道を抜け、幅の広い造林されていない空間に出る。樹間が直線に抜けているので右に折れて進むと二股分岐地点に到達する。左側がツアールートで途中にはツアーコースの標識もある。二股は左にルートを取り小沢に沿って本日のテン天場である勢至平へと向かう。このペースならば今日の山行は楽勝だなと思ったのが大間違い、ここからテン場まで延々と続くヤブに悩まされることになる。雪面から突き出した灌木にルートを阻まれ、細かな進路調整や屈伸運動、さらに20kgのザックの重み、じわじわと体力を奪われバランスを崩して立ち転けしそうになる。
 12時30分、予定していたテン場に到着した。まずは重い荷物から一旦開放され、軽い昼食をとる。本日のテン場を決定するが、今年は例年になく雪が少なく、風避けのブロックが構築できるかわからない状況である。いろいろ心配するが、まずはやってみるしかないという事でテント設営を開始した。
 テント設営は、まず基礎・土台作りからと、なんでも基本は同じだなと納得する。全員でスコップを持ち出し、テント設営のスペースを作る。ある程度場所ができた段階で、次は圧雪作業に移行。これが全員で横一列となり肩をくんで足踏み往復するのだが、最初は膝上まで潜る柔らかさで、大変きつい。ここまで重い荷を背負って来たこともあって、一往復しただけでゼイゼイ、足の筋肉プルプルだ。休み休みとなるが、30分もするとそれなりに雪が固まってくる。なにやらこの作業がテントの居住性を決めるらしく、メンバーそれぞれこだわりをもって作業しているのが面白い。最後はスキーで雪面をトリミングし、スコップで凹凸を整地して土台が完成だ。テントはジャンボエスパース、軽量で生地は薄くて心細いが冬山強風対応の頑丈品だ。みんなで協力して設営し最後にテント周りに風よけのブロックを積む。これを構築しておかないと、とんでもないことになることもあると言う。これで本日の寝床が完成だ。ここまで約2時間を要した。ここで、サポート役として荷揚げをしてくれた佐○さんと中井○さんは下山する事に、本当にありがとうございました。このころには仕事を終えてから登ってきた大○さんが合流した。
 この後、ビーコン操作の訓練を実施。埋めたビーコンを2名2班に分かれて捜し出す。これは重要な訓練だ。実際に捜索モードの時に、自分のビーコンがどのような表示・指示をするのかをキチント理解していないとイザという時に使えないだろう。今回は複数埋没ビーコンの捜索も練習した。私のビーコンは複数捜索が可能だが、他メンバーの高級品は最初の埋没者を発見後に、そのビーコンをマークし、次のビーコンの捜索に移ることの出来る機能があることを知った。やはり価格なりに探査機能が高いものがあるようだ。
 15時00分、ビーコン操作の訓練を完了し、テント内に入り込む。ここでも注意が必要。衣服や靴についた雪を丁寧に払っておかないとテントの中が濡れてしまい不快な思いをすることと、夜の温度低下でテント内が凍りつき、ひどい思いをする事になる。とにかく水濡れ厳禁という事で慎重に対応する。雪払い用のタワシ持参の意味をここでようやく理解することができた。
 テント内で荷物を各自整理する。ジャンボエスパースは6〜7名収容可能との事だが、今日は後発組も含めて全員で6名、皆さんの荷物をテントの中に入れると中央部の空間がかなり狭い感じがする。これで寝られるのだろうか?と思いつつ、夕食の準備を開始した。
 ここでも訓練のひとつであるMSRのガソリンバーナの練習である。ガソリンを使用するので当然揮発引火の危険性は高い。狭いテント内でそのような事になったら大惨事だ。このバーナは自己燃焼熱で燃料を揮発・ガス化させるため、最初の着火には別燃料(メタ)で予熱が必要で、下界では味わえない面倒くささだ。しかし無事点火したあとの炎のぬくもりは、例え様もない有難みを感じる。なお、ガソリンバーナの殆どが屋外で使用することが前提で、注意書きもそのようになっている。当然テント内での使用についてはバーナのメカニズムを理解し細心の注意を払って使用する必要がある。
 そうこうしているうちに後発の涌○さんが到着して、本日宿営のメンバーが全員そろった。テントはますます窮屈になったが、まずは乾杯。夕食は鳥鍋、食当の完璧な仕込みぶり(前処理品をしてジップロックで保存)と、テキパキとした準備ぶりに要領の悪い私は感心しきりである。さらに今日の行動でお腹がすいたことを差し引いても、これがテントでの食事とは思えぬ美味しさ。最後は定番のおじやでシメとなるが、そこに到達するまでにすでにほろ酔い気分である。昨日の寝不足もあり早々うとうとする私であった。
 途中、ハンディ機で福島の和○さんと交信し合宿の状況を報告。地図上の直線距離で20km離れているが、見通しなので0.5wのハンディ機でも明瞭に交信することが出来る。山スキーの場合、機動力の高い反面、パーティの距離が長くなり意志疎通・連携の難しさや場合によってははぐれる可能性もあると思う。携帯電話という手段もあるが、スイッチひとつでコミュニケーション可能なハンディ機の有用性は高いと感じた。
 21時、食事も終わり早々?と就寝する事とした。道具を整理し真ん中に就寝スペースをつくる、やはり6人ではかなりの狭さだ。互い違いにポジションをとるが、ほぼほぼ寝返りは不可能な状況。これでは夜間トイレにいくのもかなりの難しさだろうと事前に済ませておいたが、不安なまま眠りについた。案の定、あまりの窮屈さと暑さで爆睡とはいかなかったが、それでもよく寝られたほうだったのだろうか?いつしか明け方となっていた。ところで、昨年はこのテントで4人宿泊だったとの事、その時寝返りは出来たが、明け方寒くて大変だったらしい。なかなかバランスは難しいようだ。対策としては一方の出入り口である吹き流しに荷物を移動させたり、テント外に不必要な装備をツェルトに入れて出しておくなど工夫も必要になってくる。

1月20日(日)
 2日目の朝、この日は後発組があがってくることもあって、のんびりと6時頃に起床し朝食の準備を始める。メニューは暖かなウドンである。なんと溶き卵用の生タマゴまで持参いただくとは、食当に感謝である。その時である、早朝に塩沢スキー場を出発したサポート役の3名が到着した。実に1時間半でここまで来たことになる。大変申し訳なかったが、朝食完了まで外でしばし待っていただく事に(申し訳ありません)。そんな訳でウドンをお裾分けして若干なりとも暖をとっていただく。
 7時45分に全員でテン場出発し、安達太良山の本山を目指す。勢至平の分岐より峰ノ辻を通って山頂を目指す。天気予報通り風はかなり収まり、曇り空ではあるが見通しの利く快適な山行となる。見渡すと先行する他のパーティが遠くにいくつも見える。安達太良山が最も関東圏に近い冬山登山の人気スポットというのもうなずける。ちなみに山スキーのパーティは殆ど見受けられなかった。この雪の少なさを皆知っての事なのか?
 峰ノ辻から牛首を目指すが、高度をあげるにつれ雪面はガリガリとなり、船明神の分岐からはシュカブラとエビ尻尾だらけの景色になった。転んだら相当痛いだろうなとドキドキしながら頂上を目指す。山頂手前でスキーをデポし、そこからはつぼ足で頂上へ向かった。
 9時30分、安達太良山の本山山頂部にあがる。本山は乳首山とも呼ばれ、最後の最後に突起状に岩が突き出た形状をしている。夏山登山でもこの最後の部分を登らずに(気力が続かず)下山する人も多いらしい。もったいない事だ。頂上からは遠くには磐梯山や檜原湖が一望でき、絶景に思わず歓声がでてしまう。集合写真をみんなで撮ってから下山を開始し、次の目的地である烏川右俣源頭へと移動を開始する。
 本山から牛ノ背を戻り、矢筈森避難小屋跡から烏川右俣源頭に向かう。途中まではシュカブラで尾根はガリガリデコボコの雪面が続くのでシールをつけたままハイクモードで移動する。烏川右俣源頭は下面に広大なバーンが広がっていた。トップまで登り返すが、かなりの急登だ。このところ練習していたキックターンで何とか対応でき、上部までスキーで登ることが出来た。
 滑走前の弱層テストを実施する。とはいえ登るのがやっとで私は見学のみ。スノーピットを掘ってコンプレッションテストを行う。24回目のタップで約25cmのところで破断した。判定は行動に問題なし。各自シールはずし滑走準備にかかる。動きの早い慣れているメンバーは颯爽とドロップしていく。すべてがノロイ私はテマがかかり時間を要してしまう。今回、新たな道具として持ち込んだテックビンディングだが、慣れていないこともあって穴の位置合わせにひと苦労である。ようやく滑走に移るが、細目の板なのか?あれあれ・・・・という感じで安定感が悪く、いきなり転倒する。スキー滑降はこの新しい板に慣れずに、この後結構苦労する事になる。
 烏川右俣源頭のオープンバーンをひと滑りしてから振子沢源頭の矢筈森基部へと登り返す。ここも見事なオープンバーンだ。颯爽とドロップと言いたいところだが、安定しない(させられない)新板に四苦八苦で、まるで滑落のような滑降。情けない限りだ。振子沢下部に到着後、軽い昼食とする。その後は合宿の最後の課題である雪山歩行訓練と滑落停止の訓練を行った。雪山歩行の基礎であるキックステップによる登高・下降を練習し、次にトラーバース時のストックの持ち方など、普段は山スキー中心の活動をしているので冬山の基本的な行動を正しく理解するには大切な機会である。最後は滑落時の停止訓練だ。方法はいくつかあるが、今日はストックを使った停止の手順を勉強した。机上知識はある程度あるが、実戦訓練をやらないとイザという時は役に立たないだろうと積極的にやった結果、全身雪まみれである。今日はやらなかったが、その他にもピッケルでの滑落停止やザイルを使用したときのスタカットなど勉強することは多いようだ。
 練習が一巡したところで、テン場へ戻ることにする。雪が少なくヤブがひどいので、くろがね小屋を経由して馬車道を戻ることにした。夏道沿いに水道小屋へと向かうが滑ることのできる斜面は無く、一部には岩や石ころが露出していて新板をガリガリッ・・・・っと、大ショックであった(涙)。
 小屋の手前で振子沢沿いに馬車道に降り、金明水から塩沢分岐を経て湯樋の脇にある金明水を過ぎると勢至平の分岐に着く。13時、テン場に到着、みんなでテントを撤収する。ザックの荷物をまとめるのだが、ここで思わぬ誤算。背負って来た水や飲料を含め3kgは軽くなっているはずのザックがまったく軽く感じられない。実重量を測っているわけでもないので何ともいえないが、昨日からの行動で知らず知らずのうちに疲労が溜まってしまったのだろうか。このザックの重さは、新板の不慣れと合わせ、この後のスキーコントロールに影響を及ぼすことになる。
 下山を開始して早々立ちゴケし、またもや時間ロスと体力ロスという中でスタートする。ヤブのひどいコースがしばらく続く。作業道でもあるこのコースは、スキーがほぼほぼ左右に振れないスペースで、基本はボーゲンで滑ることになるが2日間の疲れが溜まった筋肉には例えようもなく応える。灌木にスキーを取られたり、無理やり停止しようとして何度か転倒する。ヘコまないレベルで気持ちは維持したが、30分程でこのうるさいヤブも完了。開けた林に出た。ここら辺りからはターンできるほどの幅になりスキー場まではそれほどの距離はないのだが、近づくにつれて雪面が先行者のトレースでズタズタで、まともに滑ることができない。この区間はひたすら横滑りで慎重に降りる事になる。スキー上級者のメンバーでさえも転倒してしまうほどの難路であった。
 15時に何とかスキー場トップに到着する。ようやく下界に到着という事でホッとする。最後まで慎重にとゲレンデを滑り降り、登山開始点の駐車場に戻った。最後のゲレンデ滑降になって慣れてきたのだろうか、新板に旨く乗れるようになった。次回の山行では「必ずや」と思った次第である。
 駐車場で簡単にミーティングを行って合宿を終了。帰りは近場の青木荘でひと風呂浴びて2日間の疲れを癒し帰路についた。初めての冬訓練合宿に参加し、テント泊や訓練など、さまざまな活動を通じて経験や知識を得ることが出来た。ザックの重量過多(余計な物を持ちすぎ)やペース配分、スキー技術や根本的体力強化など、ひとつひとつ山行を重ねる毎に新たな課題や反省点が出てくる。次回の山行まで少しでも課題を克服したいと思う。合宿を終えて振り返ってみると、景色や山頂にたった達成感、感動は何事にも代えがたい物だと感じた。(兒)

.概念図
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傾斜量区分図(雪崩)
.ルート図 登り=赤 下り=青.
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平30情複、 第400号)この画像をさらに複製する場合には国土地理院の長の承認が必要です。

トラック 登り=赤 下り=青

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