トップページ//岩・氷/山スキー/ハイキング/雪山/入山データ/会紹介/東北雪崩講習会
Fukushimatoukoukai HomePage
No.3805
安達太良山 1699.6m二等三角点峰
山行種別 山スキー
あだたらやま 地形図 安達太良山


■山行期間 2006年1月7日〜9日
■コースタイム 1月7日 あだたら高原スキー場(9:00)→勢至平(10:15)→峰の辻の下(12:15)テント設営、ビーコン捜索練習
1月8日 (悪天のため頂上アタック中止)テン場〜勢至平ルート確認・雪質観察・スノーマウントづくり
1月9日 テント場出発(7:35)→安達太良山頂(9:00)→振子沢滑降→テント場(10:35)テント撤収後下山開始(11:35)→勢至平→あだたら高原スキー場(12:55)
■写真
奥は鉄山の壁 テン場から見た篭山 安達太良本山
本山から見た峰の辻 山頂での記念撮影

■行動記録
<1月7日> 晴れ後雪
 1月第2週の連休に毎年行っている冬山訓練合宿に今年も行く。新入会員や初心者が冬山のスキー登高や生活技術などのいろはを学ぶことが主目的だ。場所は基本的に地元の安達太良山だ。この冬は日本海側を中心に尋常でない大雪になっていて、吾妻連峰なども例年になく雪が降っている。昨シーズンは積雪不足のため合宿を宮城蔵王で行ったが、今年は安達太良山にもスキーを履いて登るのに十分な雪が積もった。
 2泊3日の初日は荷物を揚げてテントを設営する。日帰り1名を含む11名があだたら高原スキー場に集まった。嬉しいことに天気予報は外れ、空は見事に晴れ上がった。冬季の安達太良山は雲が上部にかかることが多いが、今日は鮮やかな青地にくっきりと稜線が映えている。ゲレンデ北側の林道に入り、烏川を渡る。わずかな距離だがすぐに汗ばむ。登山道にそれて標高差200mほど登ると勢至平だ。林道(馬車道)がジグザグに同じ斜面を走っていて登山道と何箇所かで交差するが、登るときは登山道のほうが早い。
 雪で薮がまばらになった勢至平をゆっくりと歩く。今日は吹き下ろす風も弱い。正面に箕輪山、左前方に鉄山が望める。夏道通りに辿り小一時間で分岐点に着く。すぐ近くには何のためのものかわからないがソーラーパネルと4mくらいのアンテナを備えた機器があって目印になる。まっすぐ進むとくろがね小屋方面だが、私たちは左に曲がる。先行トレースをなぞっていたために途中でいつの間にか夏道から外れてしまった部分もあったが、視界良好で迷うことはない。ゴロゴロと岩が露出した篭山の北側を巻くように登っていくと前方にいくつかの道標が見えてくる。篭山の斜面は風で雪があまり積もらずクラスト気味なので、道標の少し先の北東向きの斜面をテン場とする。到着したころにはガスが稜線を隠すようになっていた。
 テン場は1.5m〜2mの積雪で締まったブロックを切り出すのも容易だった。テント2張と屋根付きのトイレも設営した。続いてビーコン捜索の練習を行う。一朝一夕では上達しないが、毎シーズンこうした機会を利用して機器の操作と一連の流れを身に着けていくしかないのだろう。ここまでで1日目に予定していたことはおしまい。テントの中に入って夕食の準備に取り掛かる。楽しく山の話をしながらも、先輩会員がテント生活上の技術や諸注意を教える。暗くなったテントの外では雪が着々と降り積もる。夜中にテントに積もった雪かきをするのも生活技術のひとつだ。

<1月8日> 曇り時々雪
 夜半過ぎから風が激しくテントに吹きつける音がするようになる。明けて外に出てみると強風が舞い、視界も良くない。この山の冬の稜線は条件が良くても風が強いので、この調子だと今日は立っていられないほどの状態になっているものと想像できる。計画では船明神と本山に登る予定だったが、上に行くことは取り止めにして勢至平に下りる。
 昨日の勢至平分岐点付近で積雪の断面の観察とザックを使ったスノーマウントの作り方の練習を行う。そこで今日から参加のメンバーと合流し再びテン場へ。早めにテントに入って暖を採りながらの停滞といきたいところだが、ガソリンの量に限りがあるので宿泊用にスノーマウントを構築するなど体を動かしながら過ごす。その甲斐あって2人で泊まるにはもったいないくらい立派なねぐらができた。実際に泊まってみると、自分たちで雪を盛るので締まっていないからだと思うが、スノーマウントは普通の横穴式の雪洞よりも天井の落ちてくるのが早い。特に斜面の下側で著しく、私たちが泊まったものでは、一晩で造設時の半分以下になっていた。

<1月9日> 晴れ
 昨晩書いた天気図から西高東低は緩まり北西風は弱くなるのではないかと話していたが、果たして期待通りに天気は回復した。テントはそのままに日帰り装備で頂上へ向かう。峰の辻に上がり西へ斜面をトラバース。沢状の部分では弱層が確認されたので雪崩に注意して進み、雪がほとんど着いていない場所を歩いて稜線に出る。降雪とガスがなく十分に視界はある。厳冬期としては弱いほうだろうが凍てつく風は優しくない。その冷酷さを物語るかのように地面や岩肌はよく発達した海老の尻尾に覆われている。冬山の厳しさを感じながら南にしばらく歩を進めると山頂が前方に現れる。他のシーズンよりも威容に映るのは気のせいだろうか。
 スキーを外して雪のよく着いた部分を選びキックステップで登る。頂上に立つと、そんなはずはないのだが、私たちを待っていたかのように雲が消えて陽光が注ぐ。ぐるりと眺め回すと船明神、和尚山、阿武隈山系、福島市内の信夫山などがはっきり見える。また近くでは10人近いものも含めて複数のパーティーが頂上を目指して動いている。くろがね小屋やあだたら高原スキー場のゴンドラなどが利用でき、また、頂上までが近くて登頂しやすいので、東北の山としては冬でも賑わいがある。
 稜線を引き返すときは風が左前方から吹くが、途中で気づくとメンバーの1人の鼻の左側が白くなっていた。軽度の凍傷だ。やはり冬の風は侮れない。幸いパーティーに2人も医師がいたので適切なアドバイスをもらって対処し、大事にならずにすんだ。矢筈森の東の振子沢源頭でシールを外す。弱層テストをして、雪崩の心配はなさそうなので、きれいに新雪が積もった斜面を自由に滑降。少し雪が重たかったが快適な斜面だ。テン場まで一気に下りる。
 テントを撤収。泊まり装備を再び担いで勢至平を滑る。トレースがしっかりしているためもあると思うが、ほとんど平らに見える緩斜面は意外にスムーズで気持ちがいい。最後は馬車道を通りスキー場に出た。(J.M)

 
■概念図


トップページ//岩・氷/山スキー/ハイキング/雪山/入山データ/会紹介/東北雪崩講習会