借金がふくらんでパニックになると、人は不思議なことを考え始めます。「もう一度ギャンブルで勝てば全部解決する」という思考がその典型です。冷静に考えれば無理だとわかるはずですが、追い詰められると、この発想こそが唯一の希望に思えてくるのです。

実際には、これほど危険な罠はありません。なぜなら、たとえ一時的に勝ったとしても、借金返済に使わないからです。

むしろ「もっと増やせる」と考えて再び賭けに回してしまい、結局は負けて借金だけが残る、これが依存症に陥った人の典型的なパターンになります。

ギャンブル依存症に陥った脳の状態

「意志が弱いから借金してしまう」と思われがちですが、実は脳の働きが変化している病気なんです。厚生労働省の依存症対策ページによれば、ギャンブルを繰り返すうちに快楽物質のドーパミンに脳が慣れてしまい、より強い刺激を求めるようになっていきます。

その結果、自分ではコントロールできない状態に陥ってしまうのです。

依存症の特徴 具体的な症状
コントロール喪失 やめようと思ってもやめられない、減らそうとしても失敗する
否認の病 自分に問題があると認識できない、周囲の指摘を受け入れられない
借金への執着 「借金返済のためにギャンブルで勝たなければ」と考え、さらに深みにはまる

借金が増えると、普通なら「もうやめよう」となるはずです。でも依存症になると逆に「この借金を返すにはギャンブルしかない」と考えるようになってしまいます。

これが最も恐ろしい部分で、借金が新たなギャンブルの理由になってしまうんです。

勝ったとき、人はお金を返さない心理

仮に奇跡的に大金を手にしたとしましょう。その瞬間、あなたは本当に借金返済に使えますか? 残念ながら、多くの場合は使えません。

なぜなら、勝った興奮状態では「もっと増やせる」という強い衝動が生まれるからです。

さらに、一度勝つとその快感が脳に刻み込まれます。「またあの感覚を味わいたい」という欲求が生まれ、手元のお金をすぐに次の勝負に投じてしまうのです。こうして負けのループが始まります。

「勝ったら返す」が実現しない理由

  • 勝利の興奮が判断を狂わせる:冷静さを失い、「もっといける」と過信してしまう
  • 損失を取り戻したい心理:過去の負けを完全に取り返すまで続けようとする
  • 借金の重圧からの一時的解放:手元にお金があることで安心し、問題を先送りにする
  • ギャンブルの勝率構造:そもそも運営側が利益を出す仕組みになっており、長期的には必ず負ける

消費者庁の啓発ページでも指摘されているように、依存症は家族の生活費を使い込み、借金を重ねる場合が多い精神疾患です。

勝っても返さないのは、意志の問題ではなく病気のメカニズムそのものなのです。

借金問題は別の方法で解決する

ギャンブルで借金を返そうとする考えは、今すぐ捨てるべきです。借金には借金専門の解決方法があり、それは債務整理という法的な手続きです。

債務整理には任意整理、個人再生、自己破産などの選択肢があり、状況に応じて返済額を減らしたり、返済義務を免除してもらったりできます。ギャンブルで勝つよりも、はるかに確実で現実的な解決策なのです。

借金解決と依存症治療は同時進行で

重要なのは、借金の返済だけでなく、ギャンブル依存症の治療も並行して行うことです。借金だけ解決しても、依存症が治っていなければまた同じことを繰り返してしまいます。

相談先 対応内容
精神保健福祉センター ギャンブル依存症の相談、治療機関の紹介、家族支援
消費生活センター(188) 借金問題の相談、債務整理に関する情報提供
法テラス 無料法律相談、弁護士・司法書士の紹介
自助グループ(GA等) 同じ経験を持つ仲間との交流、回復プログラム

家族が借金を肩代わりすることは、本人の回復の機会を奪ってしまうため避けるべきです。むしろ、本人が自分の問題と向き合えるよう、専門機関につなげることが大切になります。

一人で抱え込まず、まずは相談してみることから始めてみてください。