「SNSで素敵な生活を投稿したい」「周りと同じものを持っていないと恥ずかしい」。こうした気持ちから、本当は必要ないものにお金を使ってしまった経験はありませんか。実は、家計に負担をかける支出の多くは、自分の内面からの欲求というより、他人からの評価を意識した「見栄支出」だったりします。

日本銀行の生活意識調査によれば、多くの人が支出の増加を実感している一方で、将来的には抑制したいと考えています。この矛盾の背景には、必要性よりも外部からの圧力で購入してしまう消費行動があるのです。

見栄支出と必要支出の境界線

支出を「消費・浪費・投資」の3つに分類する考え方があります。消費は生活に必要な支出、投資は将来に価値をもたらす支出、そして浪費は無駄遣いです。見栄のための支出は、多くの場合この「浪費」に分類されます。

しかし、本人が「買って良かった」と心から思えるなら、それは投資かもしれません。大切なのは、自分の価値観に基づいて判断できているかどうかです。

支出の種類 内容 見栄支出との関係
消費 生活に必要な支出 必要性を装った見栄支出が混ざりやすい
浪費 無駄遣い・衝動買い 見栄支出の大部分がここに該当
投資 将来に価値をもたらす支出 見栄ではなく自分の成長につながる

他人の評価が購買を後押しする心理

人は社会的な生き物ですから、周囲との比較や評価は避けられません。問題は、その評価を得るために無理な出費をしてしまうことです。

消費者庁の調査では、安いと感じたときや広告の影響を受けて、計画外の購入をしてしまう人が多いことが示されています。こうした衝動的な購買行動の背後には、「これを持っていないと恥ずかしい」という見栄の心理が潜んでいます。

見栄支出を見抜く3つのチェックポイント

見栄のための支出かどうかを判断するには、自分の購買理由を客観的に見つめる必要があります。ここでは、見栄支出を見抜くための具体的なチェックポイントを紹介します。

「誰に見せるため?」と自問する

購入前に「これは誰のため?」と自分に問いかけてみましょう。もし答えが「SNSでいいねをもらうため」「友人に自慢するため」なら、それは見栄支出の可能性が高いです。

本当に自分が欲しいものなら、誰に見られなくても満足できるはずです。他人の視線を意識している時点で、その購入は見栄から来ているサインかもしれません。

購入後の使用頻度を想像する

買った後、実際にどれくらい使うかを想像してみてください。週に1回以上使うなら実用的ですが、月に1回も使わないようなら、それは見せびらかすためだけのものかもしれません。

  • 買ってから1週間後の自分の気持ちを想像する
  • 同じ商品を持っている人の使用実態を調べる
  • レンタルや借りるという選択肢を検討する

代替案を3つ考えてみる

その商品を買う以外の方法を3つ考えてみましょう。同じ目的を達成する別の手段があるなら、高額な商品を買う必要はありません。

欲しいもの 代替案1 代替案2 代替案3
高級ブランドバッグ 質の良い中価格帯バッグ レンタルサービス利用 今持っているバッグを活用
最新スマートフォン 1世代前のモデル 今の機種を修理して継続 必要な機能だけの格安機種

見栄支出を減らす実践的な方法

見栄支出を減らすには、日々の習慣を少しずつ変えていく必要があります。無理なく続けられる方法を選んで、自分のペースで実践してみましょう。

支出を記録して「見える化」する

金融庁の家計管理ツールなどを活用して、自分の支出を把握することから始めましょう。レシートに◯△×をつけて、必要な支出とそうでない支出を分ける方法も効果的です。

1ヶ月分の記録を見返すと、無意識に続けていた見栄支出のパターンが見えてきます。「いつも同じお店で無駄遣いしている」「週末になると衝動買いが増える」といった自分のクセを知ることが、改善の第一歩です。

「冷静期」を設けるルールを作る

欲しいと思ったものを、すぐには買わないルールを作りましょう。1週間待って、それでも欲しければ購入するという方法です。

  • 1万円以上のものは3日間考える
  • 欲しいものリストを作り、1ヶ月後に見直す
  • 衝動買いしそうになったら、その場を離れる
  • オンラインショッピングではカートに入れたまま24時間放置する

SNSとの付き合い方を見直す

SNSを見ていると、他人の華やかな生活が目に入り、「自分も同じように」という気持ちが湧いてきます。しかし、SNSに映っているのは人生のほんの一部分に過ぎません。

比較から解放されるためには、SNSを見る時間を減らすか、フォローする人を厳選することが有効です。自分の価値観と合わない情報は、思い切って遮断してしまいましょう。

見栄ではなく自分軸で選ぶ生活へ


見栄のための支出をやめると、驚くほど心が軽くなります。他人の評価を気にせず、本当に自分が大切にしたいことにお金を使えるようになるからです。

「価格」より「価値」を基準にする

高いものが良いとは限りません。自分にとって価値があるかどうかが重要です。1000円のものでも毎日使えば価値は高いですし、10万円のものでも使わなければ価値はゼロです。

購入の判断基準を「いくらか」から「自分の生活にどれだけ価値をもたらすか」に変えてみましょう。

「買わない選択」に自信を持つ

周りが持っているものを持たないことは、恥ずかしいことではありません。むしろ、自分の価値観をしっかり持っている証拠です。

「買わない」と決めたときに感じる不安は、最初だけです。時間が経てば、その選択が正しかったと実感できるはずです。見栄のために無理をするより、自分らしく生きることの方がずっと価値があります。

見栄軸の考え方 自分軸の考え方
人からどう見られるか 自分が満足できるか
みんなが持っているから 自分の生活に必要だから
高いものが良いもの 価値があるものが良いもの

小さな成功体験を積み重ねる

見栄支出をやめる習慣は、一度にすべて変えようとすると挫折しやすくなります。まずは月に1回、見栄で買いそうになったものを我慢してみましょう。

その我慢できた金額を貯金したり、本当に欲しいもののために取っておいたりすると、達成感が得られます。小さな成功体験が自信につながり、さらに見栄支出を減らすモチベーションになります。

見栄のための支出から解放されると、お金だけでなく心にも余裕が生まれます。他人の評価ではなく、自分の幸せを基準に選択できる生活を目指していきましょう。