ボーナスが出たら、税金の還付金が入ったら、副業で稼いだら…。借金の返済計画を立てるとき、多くの人が「臨時収入」を頼りにします。しかし、こうした計画は実際にはうまくいかないケースが非常に多いのです。

臨時収入を当てにした返済計画が失敗する3つの心理的要因

臨時収入による返済計画は、一見すると合理的に思えます。ところが実際には、人間の心理的な特性が大きく影響し、計画通りに進まないことがほとんどです。ここでは、計画が崩れる主な要因を見ていきましょう。

現在バイアスが計画を狂わせる

人間には「現在バイアス」という心理的な傾向があります。これは、将来の利益よりも目の前の快楽を優先してしまう性質のことを指します。

臨時収入が実際に入ったとき、当初は「これで返済しよう」と思っていたはずなのに、「ちょっとだけ自分へのご褒美に」「少しくらいなら使っても大丈夫」と考えが変わってしまうのです。

計画を立てている段階では冷静に判断できていても、実際にお金が手元に来ると、その瞬間の欲求が優先されます。結果として、返済に回すはずだった資金が別の用途に使われてしまい、返済計画は先送りされることになるでしょう。

臨時収入の過大評価

もう一つの落とし穴は、臨時収入の金額を実際よりも多く見積もってしまうことです。

「ボーナスが30万円出るから、それで一気に返済できる」と考えていても、税金や社会保険料が引かれた手取り額は想像より少なくなります。さらに、ボーナスの支給額自体が業績によって変動することも珍しくありません。

以下の表は、臨時収入を巡るよくある誤算をまとめたものです。

臨時収入の種類 よくある誤算 実際に起こること
ボーナス 額面通りの金額を想定 税金・保険料で2〜3割減少
副業収入 毎月確実に稼げると想定 時間確保が難しく収入が不安定
税金の還付 高額な還付を期待 想定より少額、またはゼロ

計画倒れを招く「例外扱い」の罠

臨時収入を返済原資にする計画には、もう一つ危険な側面があります。それは、日常的な返済を「臨時収入まで待てばいい」という意識で先延ばしにしてしまうことです。

毎月の家計から無理なく返済できる金額があったとしても、「どうせボーナスで返すから今は最低限でいい」と考えてしまいがちなのです。

このような「例外扱い」を続けると、通常の返済習慣が身につかず、結局は返済期間が長引くだけでなく、利息負担も増加します。臨時収入を当てにすることで、かえって完済が遠のいてしまうという皮肉な結果を招くのです。

こうした心理的な要因が重なり、臨時収入頼みの返済計画は高い確率で破綻します。計画を立てる段階では理性的に判断できていても、実際の行動は感情や環境に左右されやすいものです。

だからこそ、より確実な方法を取り入れる必要があります。

確実に返済を進めるための現実的な方法

では、どうすれば返済計画を確実に実行できるのでしょうか。

ポイントは、臨時収入を前提とせず、毎月の確実な収入だけで返済を組み立てることです。シンプルですが、これが最も効果的な方法になります。

現在の収入だけで完結する計画を立てる

まず基本となるのは、現在の給与など確実に入ってくる収入の範囲内で返済計画を立てることです。「毎月3万円なら確実に返済に回せる」という金額を設定し、それを愚直に続けていきます。

たとえ地味に感じても、この着実な積み重ねこそが完済への最短ルートです。

計画を立てる際のチェックリストを以下にまとめました。

  • 毎月の手取り収入を正確に把握する
  • 固定費(家賃・光熱費・通信費など)を差し引く
  • 変動費(食費・交際費など)の現実的な予算を確保する
  • 残った金額の中から返済額を決定する
  • 3〜6ヶ月分の緊急予備資金を別途確保する

重要なのは、無理のない金額設定です。生活を極端に切り詰めると、かえってストレスから衝動的な支出が増え、計画が崩れる原因になります。

臨時収入は「ボーナス」として扱う

もちろん、臨時収入を完全に無視する必要はありません。大切なのは、それを「期待して待つもの」ではなく、「入ったらラッキー」という位置づけにすることです。

臨時収入が実際に入ったときには、予定外の繰り上げ返済として活用すれば、返済期間を短縮できます。

ただし、臨時収入が入っても全額を返済に充てる必要はありません。一部を自分へのご褒美として使うことで、長期的なモチベーション維持にもつながります。

たとえば「臨時収入の7割は返済、3割は自由に使う」といったルールを設けるのも良いでしょう。このバランス感覚が、無理なく返済を続けるコツになります。

結局のところ、返済計画は「確実性」と「継続性」が命です。派手な一発逆転を狙うのではなく、地道に積み上げていく姿勢こそが、借金のない未来への確実な道筋となるのです。

臨時収入はあくまで計画の上乗せ要素として考え、毎月の着実な返済を最優先にしていきましょう。